『アイドル楽曲大賞』アフタートーク(後編)
4人の論客が予測する、2015年のアイドル楽曲とシーン「作り手にはまだまだ頑張ってほしい」
「アイドル楽曲の1曲における情報量が飽和レベルまで行った」(宗像)
ーー楽曲面で「2015年はこういう曲が流行する」という予測は出来ますか。
宗像:2014年は、アイドル楽曲の1曲における情報量が飽和レベルまで行ったように思います。例えばBABYMETALの『ギミチョコ!!』が典型例で、Aメロが少しアブストラクトではっきりしたメロディラインがないところから、サビで一気にポップになる。この曲を書いたのは元THE MAD CAPSULE MARKETSの上田剛士(AA=)で、彼はBiSの「STUPiG」という曲も手掛けていますが、これもAメロはビートに乗せてサビでキャッチーになる、という構造です。ここからはもっとシンプルなサウンドで、もっとメロディアスなものが反動で出てきてもいいのではないかな、と思います。
岡島:2013年にインディーズ部門の3位に入った二木蒼生の「Dear my tiara」はシンプルで人気の曲でしたね。単に奇抜なことをやるだけでなく、同時に曲として良いものじゃないと評価されない、という方向で、それが清竜人25やライムベリーに表れている。逆に、BABYMETALやでんぱ組、ももクロのように突き抜けた人たちが上位に入らない、という状況が出てくるとすれば、新しい音楽的コンセプトを持ったアイドルが台頭してくる気がします。
ガリバー:ジャンルという形での聴き方は飽きられていると思うし、その中で東京オリンピックもあってかアイドルに限らず、東京回帰の流れがきているということが、いち関西人として僕は悔しいので(笑)、2015年は地方に流れを引き戻してもらいたいし、そこに目を向けてほしいな、と願っています。
宗像:日本は情報量が多い方が好きなんです。ピロスエさんと同じで、僕も皮茶パパのようなものが出てきてほしいです。何かがおかしいんだけれど、とりあえずアイドルというカテゴライズがされてしまうと、もう放っておくことはできないもの、という。
ピロスエ:アイドルという名目で、それを利用するにせよ逆手に取るにせよ、とにかく面白いことを色々やっているのが現在のシーンですからね。
宗像:情報量が限界になっても、作り手にはまだまだ頑張ってほしいです。気を抜くと、水が下に流れるように、シンプルな方向、わかりやすい方向に流れると思います。
ーー楽曲大賞の企画やイベントの、温度感や2015年の展望という意味ではいかがでしょう?
ピロスエ:流石に今はもう「戦国時代」と言う人はだいぶ減りました。すごく右肩上がりになる、ということはなくて落ち着いていくんでしょうね。面白い楽曲さえあれば、それでもいいと思います。
宗像:年間ベスト10で「アイドルデフレ時代」という言葉を使いました。そういう時代になっていくと思いますけれど、でもそれもまた楽しいだろうと思います。00年代はもっとひどかったですからね。そういう時代に比べれば、2015年もまだアゲアゲでしょう。
ピロスエ:ノミネートリストには「E-girlsやきゃりーぱみゅぱみゅがなぜ入っているのか?」という声も少しありました。要するに、アイドルというカテゴリーから少し外れる存在、ということでしょう。そういうものは外れているから厳密に定義して入れない、というよりは、誰かが投票する可能性がある以上入れた方がいいと思っているし、その方がシーンの広がりに対応していけるのでノミネートしています。あと、TIFに出場した人たちは全部入れてます。
ガリバー:でもWake Up, Girls!が排除されていましたよね?
ピロスエ:それはまた別の話で(笑)。仮に「声優楽曲大賞」を誰かがやるとして、そちらにノミネートされるであろう人たちは一律で外しています。
岡島:花澤香菜などの、声優、アニメ系ですね。二次元とアイドルの対立については、深い溝のような歴史があります。ただ、生まれた時からアニメやアイドルが当たり前の世代が育つにつれ、この問題は少しずつ解決しています。最近の売れる曲はアニメタイアップが多いことからも、時間が経てば自然にそうなっていくだろうと思います。「声優アイドル楽曲大賞」はやらないんですか?
ピロスエ:ちょっとやりたいところはありますけど、流石に体がもたないですね。本当は「筒井康隆小説大賞」や「押井守アニメ大賞」なんかもやりたいんですけどね……(笑)。
(構成=中村拓海)