BUCK-TICKの歌詞はなぜ古びない? 様式美をすり抜ける「ふざけ」感覚を分析

 80年代にデビューしたB-Tは、同郷のBOOWY直系、失礼を承知でいえばヤンキーに少し耽美趣味が入ったビートロックという感じのバンドだった。恋は〈刹那〉で〈儚い〉もの、セックスは〈狂おしく〉〈爪を立てる〉もの。こういったコトバ選びも、その後のV系によく使われる様式美にぴったりハマるものだ。あらためて書き出していくとけっこう気恥ずかしいが、それはおそらく本人たちも同じだろう。刹那はヤンキーの合言葉であり、若き自己愛の爆発のようなもの。それだけで続くバンドはそうそういないわけだから。

 しかし90年に入ってB-Tはヤンキー的刹那主義から決別する。今から15年前に発売されたアルバムの一曲目、今井による歌詞が興味深い。

〈超人は千年まで夢を見る 赤すぎる不眠症の月の下で OH キミニ告グ ユメハオワラナイ〉
〈新しいChaosのBoy 時計を焼き尽くせ 不老不死の夢さ〉(「NATIONAL MEDIA BOYS」)

 俺とお前の世界を俯瞰する「超人」の視点が「永遠の夢」を宣告する。アナキズムはすでにあり、常識に対して舌を出してやろうとする「ふざけ」の感覚も少々。他の曲では以前の様式を踏襲するような歌詞も見受けられるし、性愛をテーマにエロスとタナトスを追求していくような曲は今でもB-Tの重要な根幹になっているのだが、やはり、この一曲目のコトバはバンドにとって非常に重要だったのだと思う。本人たちがどこまで自覚的だったかはわからないが、ここから25年の歳月をかけて、B-Tは本当にそういうバンドになった。今の彼らは、まさしく存在そのものが「終わらない夢」のようである。

 「NATIONAL MEDIA BOYS」から始まるアルバム『惡の華』が、このたび新たなリミックスを施された高音質プラチナSHMディスクとなってリイシューされるという。オリコン1位、ダブルプラチナ・ディスクを獲得した名作なので、あぁ懐かしいと手に取る人間は多いだろうし、サウンドや歌いっぷりに多少の気恥ずかしさを感じる箇所もあるだろう。ただ、この作品はどう聴いても今現在のBUCK-TICKにはっきり通じている。古びていないし、若すぎもしない。文字通り永遠化していったコトバたち。1990年のロックバンドの歌詞として、これは驚異的なものだと思う。

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

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