『テラスハウス』卒業メンバーの新作が同時リリース chayと住岡梨奈の音楽性はどう変化した?

シングルでは勝負に出た住岡梨奈、アルバム曲で新境地へ

 わが道を邁進し続けるchayと比べ、住岡のアルバム『watchword』は、「言葉にしたいんだ」や「マイフレンド」など、『テラスハウス』と結びつきの強いシングル表題曲があるものの、どちらかといえば自身の苦悩や葛藤を盤石の制作陣の手助けを借りて表現した一作といえる。

 1stフルアルバム『ツムギウタ』でプロデューサー・アレンジャーとして活躍した堂島孝平を引き続き制作陣の軸に据えつつ、名越由貴夫や上田健司、Ex.BEAT CRUSADERSのクボタマサヒコ、カトウタロウ、マシータや、100sの玉田豊夢&山口寛雄コンビなど、気心の知れた腕利きが揃う。さらに藤井敬之(音速ライン)、末光篤、たむらぱん(田村歩美名義で参加)、津野米咲(赤い公園)、ハマ・オカモト(OKAMOTO'S)といったミュージシャン勢の楽曲提供やプロデュースも加わり、同作が“住岡梨奈”という一人のシンガーを彩る実験作のように思えてくる。

 しかし、そこを実験作で終わらせないのが住岡の地力といったところか。アルバム全11曲中の5曲に自身が作詞・作曲の両方を務めた楽曲があり、そのなかでも「moyamoya」と「カラフル・モノクローム」が作品の核となっているように思える。上田健司をプロデューサーに据え、名越由貴夫・高野勲・小関純匡といったベテランを迎えた「moyamoya」には、<もっときっとでっかくなって この声で歌えるように>といった自身の苦悩や葛藤を吐き出した素の住岡が垣間見えた。それと対比させるかのように、アルバムのラストを飾る「カラフル・モノクローム」は、ハマ・オカモト(OKAMOTO'S)がプロデューサーとして参加。津野米咲(赤い公園)、神谷洵平(赤い靴)、長岡亮介(ペトロールズ)をレコーディングに迎えるなど、若手~中堅どころの実力者を集めている(どちらもベーシストがプロデューサーである)。住岡もマイペースな進行で、一聴すると優しいバラードに聴こえる同曲に<どこにも行く宛なんかない>や<そのうち捨てられるんでしょう>と独白のような一節を込めつつ、曲の最後では<叶えてよ>と呟くような歌声でアルバムを締めくくり、。

 ベテランに支えられて“過去と今”を振り返る「moyamoya」と、若手ミュージシャンたちと“これから”を歌う「カラフル・モノクローム」の2曲で締めくくった住岡渾身の一作。これらをキュートな“りなてぃ”が好きなファンがどう受け止めるのか楽しみだ。

 番組も終了し、これからはいわゆる“テラハファン”以外の層へ広く届けることが求められる2人。住岡とchay、路線や系統は違うが、同番組から輩出された同世代のシンガーとして、これからもJ-POPシーンの中で切磋琢磨し続けるだろう。

(文=中村拓海)

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