引退発表のフィギュア高橋大輔が演じた音楽の軌跡 ヒップホップなど取り入れた革新性を振り返る

 そして高橋のプログラムの中でも非常に音の解釈が難解とされた作品が、2011-2012シーズンのフリープログラム。フランスのジャズミュージシャン、エディ・ルイスによる『ブルース・フォー・クルック』だ。この楽曲自体は過去にもフィギュアで使われたことのある楽曲ではあるが、一般的に体を乗せるのが難しいとされるブルースのリズムを演じ切った高橋は、このシーズンの国別対抗選手権で一位を獲得。日本チームを優勝へと導いた。

EDDY LOUISS/Blues for klook

 最後に触れておきたいのは、普遍的なポップスを演じた2013-2014シーズンのフリープログラム『ビートルズ・メドレー』。事実上引退試合となったソチオリンピックでの、演技終了後の高橋の笑顔が記憶に新しい方も多いだろう。“Yesterday”、“Come Together”、“Friends and Lovers”、“In My Life”、“The Long And Winding Road”というビートルズの代表曲をストリングスでメドレーにアレンジし、高橋のスケート人生を描くように構成された、美しく力強いプログラムだ。

Daisuke Takahashi [2013-2014 FS]

 長きにわたり、日本のエースとして男子フィギュアを背負ってきた高橋大輔選手。技術面のみならず、芸術性という面でも常に新しい挑戦を続け、彼にしか出来ないプログラムを演じてきた。どんなジャンルの音楽も自分のものとして表現し、世界中のスケートファンに愛された稀代のスケーターの引退が惜しまれるが、これからでもぜひ、音楽と融合した高橋のスケートの世界に触れてみて欲しい。

(文=岡野里衣子)

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