小野島大の「この洋楽を聴け!」第9回:ローリング・ストーンズ
祝日本公演! 小野島大が選ぶ、ローリング・ストーンズのジャンル別ベスト55曲
今回はいよいよ待望の日本公演が間近に迫ってきたローリング・ストーンズを取り上げます。来日に向けさまざまなメディアが話題にしているわけですが、『rockin'on』誌でも3月号でストーンズ特集をやっています。
その中に「ロックンロール」「ブルース」「バラード」「ファンク/ディスコ」「カントリー」「ポップス」「サイケ」「カヴァー」というジャンル別に、ベストと思われる55曲を選ぶ「究極のストーンズ・トラック55」というコーナーがあり、私も一部執筆しています。選出は編集部で行っているので、私は一切タッチしていません。なかなか楽しい記事なんですが、誌面を眺めるうち、自分でも選んでみたくなり、勝手に55曲をセレクトしてみました。こういうのはお祭り企画なので、バランスなど考えず、個人の好み丸出しでいきます。ロック・ファンなら誰でも一言あるのがストーンズ。「なんでコレが入ってるのにアレは入ってないんだ」「こんなもの入れるなんてバカじゃねえのか」等、ガンガン突っ込みを入れながらお読みください。今回のツアーで演奏されるかどうかは一切考慮していません。90年代以降が入っていないのは仕様なのでご容赦を(苦笑)。ジャンル分けはかなりいい加減です。楽曲は順不同。なおこの記事は以前私のフェイスブックにあげたセレクションを元に楽曲を追加し、解説部分を加筆したものです。
ロックンロールの25曲
いまさら説明するまでもない定番中の定番曲。その後のストーンズ・サウンドのひな形となった名曲です。これは比較的珍しい当時のプロモ・フィルムで、演奏はスタジオ・ヴァージョンと同じようですが、エンディングのフェイドアウトが少し長いですね。ミック・ジャガーのヴォーカルはレコードと別テイクです。ライヴではイントロのギターが省かれてしまうので、私自身はスタジオ・ヴァージョンのほうが好みです。
印象的なギターリフや歌詞も含めストーンズの本質を見事に象徴する代表曲中の代表曲。パンク期のディーヴォのカヴァー・ヴァージョンが話題になりましたが、その「反則的」とも言えるアレンジの奇抜さは、逆説的にこの曲の偉大さを示しています。
中期の大傑作。元々はレゲエ調だったという説あり。PVはMTV初期らしい、ただレコードの音に当て振りする彼らを撮っただけのお手軽かつ無造作なものですが、それだけで様になっているのはさすがです。実にカッコイイ。ミック・ジャガーの体操みたいなアクションは、酔っ払うとよく真似したものです(笑)
ベトナム反戦や公民運動など世界中に反政府・反権力運動が吹き荒れた政治の季節を直截に反映した60年代の代表曲です。歪んだアコギでリフを奏で、ぐいぐいとグルーヴが加速していくのがスリリング。さり気なくインド楽器もフィーチュアされています。「オレみたいな貧乏なクソガキはロックンロール・バンドで歌うしかない。こんな眠たいロンドンの街にストリート・ファイティング・マンに居場所なんかありゃしない」という歌詞はストーンズの根本姿勢を端的に表しています。
ミック・テイラー加入後初のシングルとなった全米NO.1ヒット。ストーンズの南部サウンド傾倒の端緒をつけた曲でもあります。元はのんびりしたカントリー調の曲で、そのヴァージョンは「カントリー・ホンク」というタイトルでアルバム『レット・イット・ブリード』に収められています。
自らの「ローリング・ストーンズ・レコード」を設立しての第一弾シングル。これも当時のTVショウでのパフォーマンスです。クリエイティヴィティのピークに向かいつつあったストーンズの凄さが横溢した圧倒的名曲。今なら人種差別、女性差別と叩かれそうな歌詞も際どい。
ロックンロール・バンドとしての底知れぬポテンシャルと可能性をまざまざと示した傑作。ライヴ・ヴァージョンも数多く聴くことができますが、スタジオ・ヴァージョンが、このバンドの音楽的な豊穣さをよくあらわしています。こんなゆったりしたテンポでこんなグルーヴを作り出せるのは、この時代のストーンズならでは。
ラリー・ウイリアムスのR&B曲のカヴァーですが、ノヴェルティ色の強かった原曲を徹底的にアグレッシヴなロックンロールに仕立て、いわば初期ストーンズのパンキッシュなイメージを決定づけた名演として、個人的に忘れがたいトラックです。
邦題は「ひとりぼっちの世界」。「サティスファクション」に続いて全米1位を記録した大ヒットですが、当時のストーンズの勢いを見せつけるような曲です。シンプルこのうえない構成、メロディの起伏もなく、ただリフだけで成り立っているような曲ですが、歌詞ともども、青年期の苛立ちや憤りがよく表されています。