『芸人マジ歌選手権』で再注目――ドリフターズからマキタスポーツに至る“芸人と音楽”の歴史

 2000年代に入ると、お笑い業界では「お笑い第五世代」のムーブメントが押し寄せ、世代交代が進んでいく。Re:Japanの『あしたがあるさ』は90年代のムーブメントを残しながら大ヒットした稀有な例であるが、その他はロンドンブーツ1号2号、藤井隆、くずなどがヒットチャートに名を連ねるなど次世代の台頭が目立ち、90年代に活躍した先述のグループは、モーニング娘。以外すべて解散している。そして2000年代後半には「バンドブーム」と「お笑い第五世代」が同時にブームの収束を迎えたことにより、その勢いを失っていく。芸人がリリースする楽曲に大物ミュージシャンが名を連ねることは少なくなり、はっぱ隊や一発屋芸人たちなど、よりコミカルな方向のノベルティソングに戻っていく傾向が見られた。

 しかし10年代に入ると、そうして収束を迎えたと見えた芸人と音楽の結びつきに、新たな変化が生まれてくる。音楽界ではアイドルブームによる本格派JPOP路線の再興がある一方、芸人側のアクションは沈静化していた。その均衡を破るきっかけになったのが、テレビ東京系で放送中の『ゴッドタン』内で放送されているコーナー「芸人マジ歌選手権」だ。この企画は、「芸人が作詞作曲した歌をパフォーマンス込みで面白がる」というスタイルで始まったが、楽曲のクオリティが高いことや、業界関係者からの評価が高く、過去2回にわたって日比谷公会堂で行われたイベントは大盛況。直近の放送では、遂に作曲クレジットに前山田健一が入るなど、プロのミュージシャンも巻き込みつつある。かねてよりミュージシャンとしても活躍していた、テツandトモの楽曲に改めて注目が集まっているのも、こうした流れを汲んでのことだろう。

 今のところ、『ゴッドタン』内から楽曲のリリースが決定しているのは今回のマキタスポーツのみだが、今後さらなる展開や、大物ミュージシャンを巻き込んでいくことが予想される。また、プロデューサーの佐久間宣行氏が音楽好きで、たびたび自身のTwitterではインディーミュージシャンを取り上げていることからも、今後、芸人とミュージシャンがより深くコミットしていく可能性は高い。新たな形で関わりを持ち始めた芸人と音楽は、今後どのようなコンテンツを生み出していくのか。

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