『あさが来た』丸メガネの「のぶちゃん」役で注目! 吉岡里帆の骨太な“女優魂”
すでに全撮影が終了したことが報じられ、4月2日(土)の最終回に向けて、いよいよクライマックスへと突入しようとしているNHK連続テレビ小説『あさが来た』。このドラマの出演によって一気にブレイクした感のある「五代さん」ことディーン・フジオカの退場により、一時は騒然とした本作だが、その後、瀬戸康史演じる「成澤泉」(主人公“あさ”と女子大設立に奔走する教育者)、小芝風花演じる“あさ”の娘「千代」、森下大地演じる「眉山藍之助」(“あさ”の姉“はつ”の長男)、西畑大吾(関西ジャニーズJr.)演じる「眉山養之助」(“はつ”の次男)など、若手俳優たちが演じる新キャラクターを次々と投入。今月末には、「平塚明(のちの“平塚らいてう”)」役として、元AKB48の大島優子(!)の登場が予定されているなど、波瑠や玉木宏といったメインキャストはもとより、これまで以上にフレッシュな座組みのもと、「炭鉱経営」、「銀行設立」から、実業家=白岡あさ(波瑠)にとって最後の目標となる「女子大設立」に向けて、いよいよ盛り上がりを迎えている……というのが、『あさが来た』の現在の状況である。
ここで注目したいのは、そんな新キャラクターのひとりである「田村宜」……あさの娘「千代」が通う女学校で同部屋となり、今やあさの秘書見習いとして、ほぼレギュラー出演を果たすようになった、丸メガネの「のぶちゃん」こと吉岡里帆の存在だ。2月上旬に登場して以来、その素っ頓狂なキャラクターと、腹の据わった声、さらには「ボク」という一人称によって、お茶の間の注目を集めてきた彼女。何の気なしにその名前を検索して出現したグラビア画像に、思わず前のめった方々も、きっと多いのではないだろうか。ちなみに筆者がそうである。
1993年、京都出身の23歳。東映や松竹の撮影所がある太秦にほど近い場所で育ったため、幼少期より映画や演劇に親しみ、高校時代からは自らも女優の道を志し、さまざまな自主映画の撮影に参加。大学進学後、女優としての活動を本格化させた彼女は、『マンゴーと赤い車椅子』(2015年)で商業映画デビューを果たす。
とはいえ、彼女の存在が多くの人の目に留まったのは、2014年の10月にリリースされた、チャットモンチーのシングル「いたちごっこ」のミュージックビデオだったのではないだろうか。というか、記憶を辿るに、まさに筆者がそうだった。晴れやかな朝の目覚めから、軽やかにステップを踏んでにこやかに街を歩く吉岡。しかし、ふとした瞬間に起こす大胆な行動と、歌詞の世界に合わせて覗かせる神妙な面持ちが、ちょっと気になるミュージックビデオだった。というか、恥ずかしながら、この子が丸メガネの「のぶちゃん」であることに気づいたのは、かなり最近のことである。それを言ったら、ももいろクローバーZの面々が出演したことで話題となった、本広克行監督の映画『幕が上がる』(2015年)にも彼女は出演していた。ももクロの面々が所属する、高校演劇部の後輩のひとりとして。改めて観返してみたところ、結構な数のシーンに登場していたので、今さら驚いてしまった。台詞は少ないけれど。
楚々とした面持ちでありながら、時折見せる表情に、何か複雑な内面を感じさせる女の子。それが彼女の第一印象だった。しかし、彼女の内面にある「女優魂」は、『勇者ヨシヒコ』でお馴染み福田雄一監督の映画『明烏 あけがらす』(2015年)で爆発する。古典落語に着想を得た、ある種のシチュエイション・コメディである本作。品川のホストクラブを舞台に、主演の菅田将暉をはじめ、ムロツヨシなど芸達者な役者たちが当意即妙な会話劇を繰り広げる本作で、ほぼ唯一の女性キャストでありヒロインでもある吉岡が見せたのは、三戸なつめもビックリの前髪パッツンのおかっぱ頭で躍動する、はっちゃけたコメディエンヌぶりだった。ほとんどドタバタ喜劇の主人公。そんな、ほぼ“体当たり”と言っていい役柄も、全力で演じてみせる女優、吉岡里帆。とにもかくにも、出番が増えれば増えるほど、その見た目とのギャップというか、意外と骨太な「女優魂」を感じさせるのが、彼女なのであった。