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たった１曲で、ソウル〜R&B史にその名を刻んでしまったシンガー。その１曲とは「Be Thankful For What You've Got」（74年）である。シグマ・スタジオでM.S.F.B.をバックに録音されたこのナンバーは、数あるフィリー・ソウルのなかでも特に異彩を放つ。アル・グリーンの「Let's Stay Together」にも似た、＜ハイ＞サウンド風のトラックと、カーティス・メイフィールドからの影響が感じられるデヴォーンの浮遊感タップリな歌声が、薄墨を和紙に流し込んだかのように、モノトーンに溶け合い混ざり合う。フィリー・サウンド特有のきらびやかさはないものの、聴けば聴くほど味わい深くなるスルメイカのような作品だ。
90年代に入るとこの曲は、英国のクラブ・シーンで再評価されクラシック化、さまざまなアーティストにカヴァーされた。特に原曲をアンビエンタブルに解釈したマッシヴ・アタック・ヴァージョンは必聴だ。