ギャルHIPHOPユニット“半熟卵っち”が拡張するカルチャー 大門弥生&Xanseiが明かす「SHIBUYA!」制作背景

大門弥生&Xanseiが語る半熟卵っちの面白さ

 令和に復活を果たしたギャルメディア『egg』。その専属モデルのなかでもラップに定評のあるMomoa、Erikaのふたりによる半熟卵っちが、3月に新曲「SHIBUYA!」をリリースした。

半熟卵っち
半熟卵っち

 今作は、2021年にリリースされ、日本のみならず海外でもヒットした「GAL is MIND」のプロデューサーである大門弥生、そしてXG「SHOOTING STAR」を手がけたXanseiがプロデュース。HIPHOPとユーロビートを掛け合わせた最先端ナンバーの「SHIBUYA!」がどのようにして作られたのか、インタビューで明かしてくれた。そのなかでは、MomoaとErikaのギャルなエピソードやふたりの目に映る成長も。ヒットメイカーの大門とXanseiから見た半熟卵っちについて、そしてグローバルでの広がり方について、語り合ってもらった。(編集部)

HIPHOPに乗せて世界へ拡張する日本のギャル文化

――まずは、大門弥生さんに半熟卵っちのプロジェクトについて伺わせてください。すでに何年間か、このプロジェクトに携わっていますよね。

大門弥生(以下、大門):そうですね。2021年に「GAL is MIND」が出たので、3年くらいです。

――最初はどういうきっかけで関わることに?

大門:半熟卵っちは、もともとギャル雑誌『egg』のモデルたちに集まってもらってできたユニットだったんです。「ギャルの歌詞書ける人おらん?」ってことで、楽曲プロデューサーのGeGさんに『egg』を繋いでもらって。そこで半熟卵っちのために初めて書いたのが「GAL is MIND」だったんです。

――そうだったんですね。弥生さんも、世代的に『egg』にはリアルタイムで触れていました?

大門:触れてました! でも、自分が青春時代だった時はBガールのほうが流行っていたので、私がメインに触れてきたのはBガール系の雑誌だったんですけど、やっぱり『egg』世代ですね。小学校の時からルーズソックスもめっちゃ履いてたし。

大門弥生
大門弥生

――Xanseiはどうですか? 半熟卵っちのバックグラウンドというか、平成の東京のギャル文化は前から知っていた?

Xansei:僕はもともと福岡出身なんですけど、中学生あたりの頃を振り返ってもギャルみたいな子はいなかったですね。パラパラはちょっと覚えてるかな。

――今回、「SHIBUYA!」のビートを手がけるにあたって、ギャル文化に関する勉強みたいなことはした?

Xansei:勉強というか、僕がこのビートを作った時はめちゃくちゃHIPHOPな感じのビートばかり作っていたんですよね。でも、それは他の人でもできちゃうなと思って、何か新しいビートはないか、と探していったんです。「そういえばパラパラってどんなビートやったっけ?」と思って。そうしたら、ユーロビートに行き着いたので、ユーロビートの作り方をYouTubeで調べたりはしました。そこにHIPHOPの感じをキープするためにトラップのパートをつけたりして工夫したのが、完成した「SHIBUYA!」のビートです。

Xansei
Xansei

――ユーロビートの構造や作り方って、やっぱりXanseiが普段作ってるトラップ系のビートとは全然違うんですか?

Xansei:意外とシンプルなので、特徴としてはキックが4つ打ちで「ブンブンブン」みたいな。でも、いちばん難しかったのはシンセのコードですね。

――ああ、ユーロビートって派手だし、独特なコード感がありますよね。

Xansei:シンセはサンプルじゃなくて、全部MIDIを使って作ったんです。いろんなコードプログレッションを試していったら、いろんなパターンがいい感じにつながってきて。「SHIBUYA!」は、ヴァースとプリコーラス、フックでコード進行がそれぞれ違うんです。それはそれで面白く仕上がったかなと思いますね。途中、「なんかめっちゃアホやな」と思って笑いながら作ってました(笑)。

――新鮮な感じがありました?

Xansei:なんか「頭文字D」とか思い出しましたね。「ゲーセンで流れそう」みたいな。

半熟卵っち / SHIBUYA!【Official Music Video】/ softboiledegg

――個人的にも、ユーロビートって、90年代後半から独特な形で日本国内で流行った印象が強くて。私もavexから出ていたユーロビートのコンピアルバムを買っていた記憶があります。Xanseiは普段、LAやアトランタを拠点にしていますが、現地でユーロビートを耳にする機会はあります?

Xansei:まったくないですね。だから、今回のビートは新境地でした。パラパラに使われたユーロビートのクラシックとかを集めたプレイリストをいろいろ聴いて、シンセのリフとか歌い方とかは「独特だな〜」と思ってましたね。

――今思い出したんですけど、私も高校生時代、友達と昼休みにパラパラのVHSテープを見ながら「NIGHT ON FIRE」の練習をしていましたね……。

大門:私もやってた(笑)!

Xansei:ヤバい(笑)。

――(笑)。リリックの話についても伺いたいんですけど、弥生さんは最初に「GAL is MIND」の作詞を担当された際に、ギャルの生体調査じゃないですけど、リリックを書くために研究したことなどあったんですか?

大門:私は逆に、通ってた高校がギャル女子校だったですよ、大阪の。だからちょっと原点を振り返るような感じで。

――じゃあ、リリックもすんなり書けた?

大門:すんなり書けました(笑)。「GAL is MIND」を書いた時は、参加してくれた4名それぞれのメンバーに合わせて書いたんで、そのメンバーの研究をしましたね。そもそも『egg』さんには、各モデルに対する愛がちゃんとあるんですよ。一人ひとりのことをちゃんとわかっている。なので、みんなの個性や状況を『egg』さんに聞いて、(歌詞を)起こしていった感じです。

半熟卵っち / GALisMIND【Official Music Video】/ softboiledegg

――そうだったんですね。「GAL is MIND」のMVは現時点で760万回以上も再生されて、めちゃめちゃ大ヒット曲になりましたよね。楽曲に対するリアクションや反応は、弥生さんのところにはどういうふうに届いてましたか。

大門:私は最初、どんなふうに聴かれているか全然知らなくて。友達に教えてもらって反響を見たら、結構海外にも届いていてびっくりしました。日本のギャル文化がHIPHOPの音に乗って、彼女たちのメイクとかアティテュードを見て、面白がってくれてるのがすごく嬉しかったです。

――今回の「SHIBUYA!」に関しても、割とナチュラルに、普段の弥生さん自身のギャルバイブスを出しながらリリックを書き進めていった感じですか?

大門:そうですね。でも、基本『egg』のプロジェクトはメンバーに合わせて書いているので、自分の個人的な思いというよりも、みんなのことを知っていくうちに歌詞を固めていったというか。「SHIBUYA!」でラップしているMomoaとErikaとはレコーディング後に一緒にご飯行くこともあって。そうやって、ちょっとずつみんなのことを知っていきながら書いた感じです。

――活動当初は4名で活動していた半熟卵っちも、今回からMomoaさんとErikaさんのふたり体制になりましたよね。素顔というか、弥生さんから見ておふたりはどんなギャルなのでしょうか。

大門:MomoaとErikaは、『egg』のモデルのなかでも特にヤンキー気質というか。ふたりだけちょっと後ろにはみ出て座ってたりとか、ギャル中のギャルっていう感じのふたりなんです。なので、より研ぎ澄まされた半熟卵っちになったのかなと思います。ふたりとも芯も強いし、自分がなりたいビジョンも持ってる。Momoaはヤンキー上がりだけど、めっちゃピュアなんですよ。日本語の曲もいろいろ聴いていて、しかもすごく歌詞に重きを置いて聴いてるらしくて。

 ErikaはめっちゃHIPHOPが好き。歌詞の最後のほうにも出てくるんですけど、〈ハーレム ハシゴする ファイトクラブ〉っていうのは、実際にErikaが成人したら行きたいって言ってるクラブで(笑)。

――そうなんだ! 今の渋谷のギャルたちもHARLEMに行きたがってるのは何だか嬉しくなりました(笑)。

大門:今の子たちもめっちゃ行ってると思います! ほかにはMADAM WOOとかかな。

――レコーディングはどのように進んでいったのでしょうか。ラップや歌唱の指導とかをすることも?

大門:そうですね。レコーディングはメンバーと一緒に入りました。ErikaもMomoaも、最初は『egg』のモデルをやっているなかで、事務所に選ばれて半熟卵っちの活動を始めることになったんですけど、今はふたりとも「自分たちの世界でもっと世界に行くぞ」って思いがすごく強くなってきてるんです。なので今、これまでに私を含め、いろんなラッパーの方を育てたボーカルの先生にも入ってもらって、歌を練習しています。

――「GAL is MIND」からスタートして、この3年間でMomoaさんとErikaさんがアーティストとして成長したなって感じる部分はありましたか。

大門:めっちゃあります! 最初出会った頃はふたりとも16、17歳で、モデルの仕事も始めたばかりだったんですけど、今は垢抜けたなって思いますね。半熟卵っちはプロデュースチームもしっかりしているんですけど、MomoaもErikaも自分の意見をしっかり言うタイプ。「うちらはこう思ってないから、こっちのほうがいいです」と発言してくれたりとかして。年齢も関係なく、制作サイドとアーティストが分かれることもなく、対等に話しながらやっています。

半熟卵っち / GALisMIND REMIX ft. Ramengvrl, YAYOI DAIMON【Official Music Video】/ softboiledegg

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