Anita Bakerの記事・ニュース・画像一覧

ご存知、“クワイエット・ストームの女王”アニタ・ベイカー。デジタルの無機的なサウンドが氾濫していた80年代に、生演奏主体の温もりあるサウンド（今聴くとネオ・ソウル風情）でミュージック・シーンに揺り戻しを行なった彼女の功績は大きい。ここ日本では一種の“お洒落ミュージック”と把握され、都市部を中心に恋人たちの夜を演出するナンバーとして持て囃されたようだが（それもどうだかねえ）。
そんなアニタの魅力をタップリと堪能できるのが、２ndにしてメジャー・デビュー作の『ラプチャー』（86年）である。ジャジーでムーディ、シルクのような肌触りのサウンドに包まれたそのアルト・ヴォイスは琥珀色に輝くものだ。また表面的には“使える”音楽だが、その深層からは往年のソウル〜R＆Bが持つ熱気のようなモノを感じることができる。しかし94年作『リズム・オブ・ラヴ』以降、家庭人の彼女はアーティスト活動を休止し子育てに専念。彼女がシーンにカムバックしたのはそれから10年後の04年、傑作『マイ・エヴリシング』を小脇に抱えてのことである。