怒髪天×ひめキュンフルーツ缶、コラボの意図を読み解く
怒髪天とひめキュンフルーツ缶はなぜ共鳴?「“受け渡さなければならない”という使命感がある」
ひめキュンフルーツ缶と怒髪天ーー。愛媛が誇る“最強のご当地アイドル”と北海道が生んだ“ジャパニーズ中年隊”。アイドルとロックバンドのコラボは珍しくない昨今であるが、こんなにも濃厚な組み合わせがあっただろうか。GARLIC BOYS、ガガガSP、ザ50回転ズ、ねごと……、これまでも多くの無差別ジャンルのロックバンドと異色の共演&コラボを果たし、作品を増すごと、よりハードで、よりラウドへと、異端のアイドル道をひた走るひめキュンに、今度は怒髪天だなんて、「その手があったか!」と膝を打った次第。2016年9月に怒髪天が楽曲提供した「伊予魂乙女節」(作詞・増子直純/作曲・上原子友康)は、変化球なしの直球勝負、まさに女伊達ら男勝りと言うなかれ、熱き魂燃え滾る楽曲だった。
その後、増子の舞台出演を受けて、残るメンバー(上原子 Gt./清水泰次 Ba./坂詰克彦 Dr.)と、ひめキュンフルーツ缶は新バンド、ひめキュン蝦夷乃無頼缶を結成。昨年11月から12月にかけて全国ツアーを行った。父娘ほどに離れた年齢差はあれど、そこで生まれた両グループの絆とお互いに得た手応えは、さらなる可能性を呼び起こし、この度、怒髪天のシングル『赤ら月』にコラボした新曲「恋ノ猛毒果実」が収録される、という形で結実することと相成った。(冬将軍)
「ただベテランのすごい人たちをバックバンドにつけてる、とは思われたくなかった」(谷尾)
ーーひめキュン蝦夷乃無頼缶として、全国ツアーを回ってみていかがでしたか?
上原子友康(以下、上原子):楽しい日々でしたね。もっとやりたかった。いろいろ学ばせてもらったし。最初、一緒にやることになったとき、どういう風になるのか、まったく想像できなかったんです。曲調も違うし、正直「演奏できるのかな?」とも思ったし。はじめは、演者5人とバックバンド、という感じに考えていたんですけど、やっていくうちに、一つのバンドのようなグルーヴが生まれていった。ライブを重ねるごとにどんどん面白くなっていったし、ツアーの終盤になると、「このまま終わるのはもったいない」という気持ちが出てきました。やる前はこんな気持ちになるなんて想像していなかったことですね。
谷尾桜子(以下、谷尾):最近はいろんなアイドルがバックバンドをつけてライブをやっていますけど、私たちはライブハウスでバンドを手がけている事務所だということもあり、昔から生バンドでライブをやらせていただく機会は多かったんです。そういうプライドもあるので、ただベテランのすごい人たちをバックバンドにつけてる、とは思われたくなかった。だから、実際一緒にやったメンバーさんにそう感じていただけたのは嬉しいです。自分たちも一回一回のライブで「成長してるな」ということを実感できました。それは怒髪天のみなさんが30年のキャリアがあって、人間としての余裕や寛大さがあるからこそのものだと思いますし、そんな人たちと、一つのバンドとしてできたことが本当に幸せでした。
岡本真依(以下、岡本):今まで、生バンドで歌うことは「声を張らなきゃ、声を前に出さなきゃ」と意識する、自分との戦いだと思ってたんです。でも、怒髪天のみなさんは「ここ、大丈夫?」「ここはこうしようか?」と親身になって訊いてきてくれたり、細かい調整もしてくれて。「バンドって、こんなに歌いやすいんだ」ということに気づけましたし、こちらからもいろいろ相談していいんだとも思いました。
増子直純(以下、増子):本来、生バンドで歌う自体、難しいことなんだけど、それをちゃんとできてるのは素晴らしいよね。
上原子:ウチらはクセが強いからねぇ。とくにあの……。
増子:後ろのね、“丸坊主さん”がね。
ひめキュン一同:坂さんっ!!(笑)。
河野穂乃花(以下、河野):安定して叩いてくださるので、すごく歌いやすかったです。
増子:それが、だんだん慣れてきて自分が気持ち良くなってくるとね、リズムが溜まってくるんだよ。
上原子:“揺れ”がね(笑)。ただ、その“揺れ”も一緒になるとこれ以上気持ちの良いものはない。無頼缶でもそうなりつつあったから。ここまでバンド感が出るとは正直思ってなかった。それに、いろいろ言ってくれたのも嬉しかったな。やっぱり、言いづらかっただろうし。
菊原結里亜(以下、菊原):ふ、震えながら言いましたもん……。
(一同笑)
増子:坂さんもシミ(清水)も「すごく勉強になった」と喜んでたよ。坂さんなんて、自分が間違えたことをひめキュンに指摘されて、「責任が今まで以上に重大であることに気づかされ……」なんて言ってたけど、今までもずっと重大だったんだけどな(笑)。俺がいなくともちゃんと厳しいことを言ってくれて、嬉しい。
ーーバンドメンバーとしてのコミュニケーションも円滑だったんですね。
谷尾:王子(上原子)に「この音が好きなんです!」って言ったら、次からそれでやってくれたり。でも、それはたまたまミスしたものだったんですよ。でも、「そのミスした音がカッコイイんです!」って言って。
上原子:普通は聴き流しちゃって気がつかないような、本当に細かいところなんですよ。「そこまで聴いてくれてるんだ」と嬉しくなりました。
ーー上原子さんのギターは、これまでのひめキュン楽曲で鳴っているギターとは異なるプレイスタイルとサウンドだと思いますが、何か影響はありましたか?
谷尾:ギターソロも王子流になったので、振り付けも王子に寄せました。ひめキュンの振りって、ギターのフレーズに合わせて作ってたりすることが多いんです。
菊原:最初のリハのとき「この音がないっ!」とか、ちょっとざわざわしてましたけど(笑)。
上原子:そうだったのか(笑)。
岡本:「ストロベリーKISS」とか、いつもはジャンプして煽ってたんですけど、音も変わって大人な雰囲気になったから、「ちょっと飛ぶのは抑えよう」と思ったり。同じ曲でも新たな発見もあって楽しかったです。
上原子:ギターのフレーズが変わるとダンスが変わるなんて、普通のロックバンドでは経験できないことなので、面白かったですね。