>  >  > 姫乃たま3rdワンマン公演レポート

姫乃たま3rdワンマンライブ『アイドルになりたい』

姫乃たまが背負う“地下アイドル”の肩書きは伊達じゃないーー3rdワンマンで見せたアングラ的感性

関連タグ
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 地下アイドル【ちかーあいどる】ゼロ年代後半に発生した、特異なアイドル文化/現象

 上記は、姫乃たまによる初の単著『潜行〜地下アイドルの人に言えない生活』の冒頭に記された、自身による地下アイドルの定義だ。この定義の中にある“特異な”部分を、姫乃たまは2月7日に行われた3rdワンマンライブ『アイドルになりたい』のパフォーマンスで、実にユニークに表現してみせた。地下アイドルという言葉に潜む、どこかネガティブな印象を、その自主性、音楽性、カルチャー性、ファンとの双方向性によって払拭し、見事に人々の心を踊らせる新たな表現者像として確立したといっても過言ではないだろう。その活動スタンスを表すには、表現の質も含めて、単に“サブカル系アイドル”と一括りにするだけでは不十分である。むしろ寺山修司の時代から続いていた“地下=アンダーグラウンド”文化の文脈で捉える方がより近しいイメージだ。彼女が背負う“地下アイドル”の肩書きは伊達じゃない。

 渋谷WWWの階段を降りると、会場はすでに多くの人々で賑わっていた。一個人が自主的な表現活動によって、渋谷WWWを満員にすることなど、そうあることではない。年齢層は若者から大人まで、とても幅広く、女性ファンも多い。誰もが幸せそうな表情で、この日を待ちわびてきたことが伝わり、それだけで彼女が様々なフィールドで信頼を勝ち得てきたことがわかる。物販商品のバリエーションの豊かさも、その証だ。CD、DVD、写真集、書籍、Tシャツーーすべてに彼女特有の世界観が反映されている。多くのクリエイターが、彼女と共に仕事をすることに喜びを見出し、そのイメージを形にしてきたのだ。ライブに限らず幅広いイベントに出演し、さらにはライターとしても多くの連載を持つなど、マルチな活動を続けてきた彼女の集大成が、その地下空間には広がっていた。

「16歳だった私も、今週末(2月12日)には24歳になり、人生の三分の一を、『自分は地下アイドルだ』と言い続けてきたことになります。嘘つきです」

 入り口で手渡しされた彼女からのメッセージカードには、そう記されていた。ソロアルバム『First Order』と、僕とジョルジュの新譜リリースを記念して開催された今回のライブだが、そのイベント名が「アイドルになりたい」というのも彼女らしい。友人に誘われるがまま、なんとなくステージに上がって約8年、“地下アイドル”が何なのかよくわからないまま、今日まで活動してきた。だが、わからないことを誰よりも自覚している彼女だからこそ、どこか俯瞰してシーンを見つめ、独自の活動を行うことができたのも確かだろう。実際、彼女のステージや作品群を見ればすぐにわかるが、そこにはアイドルシーンの悲喜こもごもに対する温かな愛情がありながら、かつてのアンダーグラウンドカルチャーに通じる一貫した美意識のようなものも感じられる。姫乃たまにしかできない表現があり、ファンはそれを求め、彼女もまた応えてきたのだ。

 中村保夫(和ラダイスガラージ)によるDJが止むと、青くライトアップされたステージに僕とジョルジュの面々が登場する。僕とジョルジュは姫乃たまのセルフプロデュースによるユニットで、サウンドプロデュースをカメラ=万年筆の佐藤優介が、副プロデュースを金子麻友美が担当し、スカートの澤部渡が楽曲提供するほか、山崎春美、佐久間裕太、シマダボーイ、清水瑶志郎といったゲストメンバーが加わる。ポップだが実験的ともいえる不思議な音楽性となった1stアルバム『僕とジョルジュ』は、音楽評論家の宗像明将氏を以ってして「底なし沼のような怪作」と言わしめた。その期待に応えるように、繰り返される奇妙なシンセのアルペジオから徐々にノイジーな演奏となり、一転して1曲目「恋のすゝめ」がスタート。髪を巻き、いつもより少しドレスアップした姫乃たまが登場すると、会場が大きく湧き上がる。“奇妙な”とは書いたが、登場のサウンドこそ尖っていたものの、「恋のすゝめ」は渋谷系の流れを汲んだ口ずさみたくなるようなポップソングで、姫乃たまの飄々としたボーカルの魅力を引き出した一曲だ。小振りな振り付けも相まって、とてもキュートである。厚みのある編成によるバンドサウンドも素晴らしく、音楽マニアも唸らせるライブだ。

 その後、「悲しくていいね」「巨大な遊園地」と続き、いわゆる“アイドルソング”の枠にとらわれないユニークな楽曲で、会場を盛り上げていく。そして、4曲目にはスペシャルゲストとして有賀幼子さんが登場。見覚えのない婦人に会場が「?」となっているのも構わず、幼子さんはシンセのアルペジエーターを起動させ、再び会場を奇妙なサウンドで満たす。そして、「恋のジュジュカ」が始まるとそのまま退場。聞けば彼女は、姫乃たまのおばあちゃんで、今回のライブのために出演オファーをしたところ、難交渉の末にようやくステージに上がってくれたのだとか。姫乃たまが、ミュージシャンの父を持つことは知っていたが、まさか祖母を連れてくるとは、誰も予想だにしなかっただろう。さらに、同曲からはロックバンド・TACOなどで活躍してきたアンダーグラウンドシーンの伝説的人物、山崎春美もゲスト参加し、奇声と躁病的なダンスで盛り上げていく。想像を超えてくるのが、僕とジュルジュの最大の魅力である。

20170217-ht2.jpg(写真=沼田学)

「姫乃たまが背負う“地下アイドル”の肩書きは伊達じゃないーー3rdワンマンで見せたアングラ的感性」のページです。>の最新ニュースで音楽シーンをもっと楽しく!「リアルサウンド」は、音楽とホンネで向き合う人たちのための、音楽・アーティスト情報、作品レビューの総合サイトです。

表示切替:スマートフォン版 | パソコン版