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集中連載「新作『葡萄』を語る、桑田佳祐の言葉」第2回

サザン桑田佳祐は歌謡曲をどう吸収してきたか セルフライナーノーツ『葡萄白書』でルーツ明かす

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「ワイングラスに消えた恋」

 サザンのアルバムの名物ともいえる原由子のボーカル曲。彼女は今回、管楽器・弦楽器を交えたビッグバンド的演奏と見事に呼吸を合わせ、ミステリアスな恋模様を歌い上げている。楽曲が生まれた背景について、桑田はライナーノーツで詳細に記している。

「やっぱりサザンのアルバムには原坊がヴォーカルを取る曲が絶対に欠かせない。いつもなら彼女は「鎌倉物語」や「私はピアノ」などを、キーボードを弾きながら歌うのだが、今回はもしライブで演奏するのなら、是非ともハンドマイクで歌ってもらうぐらいの、ちょっと大仕掛けのレビューみたいな世界観の曲を提供してみようと考えた。
 ついつい歌謡曲の話題になってしまうが、かつては金井克子さんやいしだあゆみさん、欧陽菲菲さんといった歌謡曲の女性歌手が、壮大なビッグバンドを従えてテレビで歌っていた時代があった。そこには歌の文句だけではなく、ひとりの女性の人生模様が映し出されていた。」

 桑田によると、この曲の主人公は「かつては全盛期にあった歌手」。その彼女が妖艶な大人の魅力を携えて第二幕を迎える場面をイメージしたといい、かつての弘田三枝子の復活劇にも言及している。原由子のイメージとは一見かけ離れているが、桑田は彼女の“楽曲に寄り添う”力に賞賛を惜しまない。

「原さんはキーボードプレイヤーとして広い守備範囲を誇る。ロック、ブルース、歌謡曲、ポップスと、どんなジャンルでも器用にこなせる多彩さの要因は、音楽的に恵まれた時代を生きてきたからこその豊富な経験と、それに裏打ちされた彼女特有の“歌心”に他ならない。そして、無論この歌心は歌唱そのものに対しても同様だ。彼女はヴォーカリストとしても、曲との“寄り添い方”が素晴らしい。アルバム中1曲のリードヴォーカルという、絶好のチャンスで回ってきた代打の1打席みたいな見せ場で、楽しく切なく歌ってもらいたかったのだ。」

 かくして同曲は、紆余曲折を経てステージへと帰還した歌姫の“嘆きの歌”として、妖しい魅力を放っている。(続く)

(文=神谷弘一)

      

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