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円堂都司昭の『鬱フェス 2014』レポ

合言葉は「泣け! 叫べ! 盛り下がれ!」 アーバンギャルド主催『鬱フェス』の批評性とは

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円堂都司昭
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 出演者の「盛り下がってますかー」というネガティヴな呼びかけに「イェーッ」と応じて会場が盛り上がる。そんな妙なイベントが、アーバンギャルド主催によりTSUTAYA O-EASTで9月23日に開かれた。夏フェスならぬ『鬱フェス』である。

 『アーバンギャルド Presents 鬱フェス 2014』のコンセプトは、夏フェスに呼ばれない、あるいは呼ばれてもアウェーになるアーティストと、インドアなリスナーを集め、新たなフェスの形を提案するというもの。早い話が、日焼けの似合わない人たちの集会である。合言葉は「泣け! 叫べ! 盛り下がれ!」。

 発案者であるアーバンギャルドの松永天馬と浜崎容子による、不健康と不健全を称揚する開会宣言からスタートした『鬱フェス』は、確かに空の下で繰り広げられる夏フェスとは異なる雰囲気があって面白かった。

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 会場では正面にメインステージ、その右わきにサブステージがあって、交互にライヴが行われた。1960年代のグループ・サウンズのパロディで、当時の流行語「失神」をキーワードにしたザ・キャプテンズ。クラブやディスコというよりはゴーゴーと昔風に表現したいダンスをしながら歌い、アニメ「魔女っ娘メグちゃん」主題歌もカヴァーした情熱マリ子。アコーディオンを使った姉妹ユニットで、PAブースに乱入しつつシャンソン“愛の讃歌”を歌い上げたチャラン・ポ・ランタン。「スーパーマリオ」、「ファミスタ」、「ドラクエ」などのファミコンサウンドを再現したサカモト教授。70年代グラム・ロックをベースにしたROLLY & GlimRockers。フォーク、歌謡曲的な失恋ソングを切々とピアノで弾き語る夜子。「鬱」の字を付けたカラフルな衣裳の革命的ブロードウェイ主義者・上坂すみれ。サブカルからの多数の引用という点で、アーバンギャルドの先輩といえる筋肉少女帯。

 以上のようにマニアックな芸風のメンツが、次々に登場した。多くに共通するのは、昭和的でレトロな要素が目立ち、同時代的ではないこと。過去を重視する後ろ向きな表現は、不健康さを讃えるこのイベントの主旨にふさわしい。

 また、ファミコンカセットを挿せるロボット的な頭部を装着したサカモト教授をはじめ、派手なファッションやメイク、キャラ設定など、どこか芝居っけのあるアーティストが多かった。音楽のライヴではあるけれど、小劇場やレヴュー(批評のことではなく、歌、踊り、寸劇などで構成するショーのほうね)に近い感覚なのである。

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 出演者のなかでは例外的に自然体であり、新人コンテストへの出場時からロック・イン・ジャパンに出演し続ける真空ホロウは、「本日一番普通の鬱バンド」と自己紹介していた。普通な彼らは、むしろ浮いていたくらいだ。とはいえ、彼らの「家に帰ったら現実ですよ」というMCは、上坂すみれの「吐き癖ある人っていますか?」と並んで『鬱フェス』の空気感をよく反映した言葉だったし、観客は楽しそうに笑っていた。
 メインステージ各30分程度、サブステージ各15分、トリのアーバンギャルドでも1時間弱しかない。様々な濃い世界が、短い持ち時間で数多く披露される。『鬱フェス』は、まんだらけをはじめ、レトロ趣味、コレクター向けの小さな店が並ぶ中野ブロードウェイの光景を思い出させるイベントだった。

     
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