AKB48はそもそも何が画期的だったのか? 第5回じゃんけん大会への疑問

 つまり、400名以上もの選択肢との相対的な比較によって、センターも神セブンも選抜メンバーも成立している。つまりグループのメンバー――総標本数が多ければ多いほど競争の説得力は増し、単にAKB48でイチバンのはずが日本の全女子アイドルのイチバンと、世間に勘違いさせたのだから偉い。あまりのブームに日本中がうっかりしちゃってたのだが、先の卒業生たちだって<同窓会で3年ぶりに逢ったらまあまあ綺麗になってた、元・クラスで4~5番目にかわいかった子>に過ぎなかったのである。

 そんな「多人数だからこその説得力」が拠りどころのAKB48でソロ・デビューとは、最大の武器をみすみす放棄するようなもので、なんともせつない。まだ間に合う。じゃんけん大会の優勝特典を変更してやってくれよ、ただの女子なんだから。

「かわいい」は新たなモードへ

 それにしてもこのAKB48最高にして最強コンセプト、<クラスで4~5番目にかわいい子>の恩恵を最も受けたのは誰だろう。

 モー娘。が全盛期を迎えた2000年前後、30代後半だった私には彼女たちがなぜかわいいのかわからなかった。揃いも揃って目が離れた魚類系の顔だったからだ。しかしいつしかそれが世間のモードとなって「かわいい」と見なされるカテゴリーが拡大した分だけ、「かわいい女子」人口は増えた。

 そしてここ数年のAKB48景気によっていよいよそのハードルが下がり、一般女子の最低80%が「自分はかわいい」と自己申告しても許される世の中となった。世間はかわいい女子だらけなのに、あまり嬉しくないのはなぜかしら。わははは。

 とにかくAKB48とは、実は<社会貢献アイドル>でもあったのだ――。

■市川哲史(音楽評論家)
1961年岡山生まれ。大学在学中より現在まで「ロッキング・オン」「ロッキング・オンJAPAN」「音楽と人」「オリコンスタイル」「日経エンタテインメント」などの雑誌を主戦場に文筆活動を展開。最新刊は『誰も教えてくれなかった本当のポップ・ミュージック論』(シンコーミュージック刊)

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