『プロセカ』の進化と軌跡、そして音楽の“圧倒的熱量”が生んだポジティブな思い――『COLORFUL LIVE 4th - Unison -』レポート

『COLORFUL LIVE 4th - Unison -』レポート

 幕張メッセの会場は、驚くほどの数の観客でぎっしりと埋まっている。2020年9月30日にサービスが開始され、昨年で4周年を迎えたスマホ向けリズム&アドベンチャー『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』(以下、プロセカ)。年明けには大型アップデートとしてコンテンツ「マイセカイ」が実装されるなど、話題性は尽きないが、2024年12月13日~15日にインテックス大阪で、2025年1月24日~26日に千葉・幕張メッセで開催された4回目のリアルライブ『プロジェクトセカイ COLORFUL LIVE 4th - Unison -』は、まさに進化と軌跡から、終わらない未来をも目の当たりにすることができる機会となった。

※本稿では1月24日(幕張メッセ)夜公演をレポート

 センターの巨大モニターに、ゲーム内の5つのユニット「Leo/need」「MORE MORE JUMP!」「Vivid BAD SQUAD」「ワンダーランズ×ショウタイム」「25時、ナイトコードで。」の紹介動画が音楽とともに映し出される。一人ひとりの名前の読み上げに応じ、客席から名前が打ち上がっていく様子は、キャラクターたちがいかに愛されているかの証拠になっていた。テーマパークの盛大なショーがいまから始まる――そんな雰囲気。

 最初にキラキラと光る音の飛沫のなか現れたのは、バーチャル・シンガーの初音ミク・鏡音リン・鏡音レン・巡音ルカ・MEIKO・KAITO。3rdのセカライから導入されたAR/VRカメラ使用の3DCGライブの延長線上、ステージ上のキャラクターたちが前後に動き回り、“そこにいる感覚”が強く生まれる。1曲目「アイムマイン」(作詞・作曲:halyosy)から、生バンドの演奏に疾風迅雷の勢いで巻き起こるコール&レスポンスと熱気。アイドルユニット・MORE MORE JUMP!が初音ミクとともに「MOTTO!!!」(作詞・作曲:Junky)で軽快なジャンプを決めると、目の前には目には見えない不確かな未来へと続く道が現れた。初音ミクから鏡音リンへとバトンを渡し、拳を振り上げた花里みのり・桐谷遥・桃井愛莉・日野森雫・鏡音リンに客席が盛り上がった「ポッピンキャンディ☆フィーバー!」(作詞・作曲:キノシタ)へ。

 左右のモニターに映し出されたキャラクターたちの瞳の輝きや、瞬きをするその一瞬までもが細かく映ることも印象的で、心を揺さぶる動線があらゆる場所に巧みに散りばめられていることにも驚いた。ユニットごとのトークパートも充実しており、とりわけ記憶に残ったのは、曲名を歌う声が一体感を生み出した「チュルリラ・チュルリラ・ダッダッダ!」(作詞・作曲:和田たけあき(くらげP))を歌い終えた後のワンダーランズ×ショウタイムのトークだ。特殊な手法で左右のモニターに登場できることがわかった鳳えむが、ひとりでかくれんぼを始め、「どっちに現れるか?」というゲームで楽しませてくれた。その後、草薙寧々も右のモニターに現れ、鳳えむが草薙寧々と触れ合うなどのリアルなやり取りで会場が一層の親近感に包まれていくのを感じた。

 天馬司・鳳えむ・草薙寧々・神代類と初音ミクによる、華やかなショースタイルのユニット曲「世界を照らすテトラッド」(作詞・作曲:OSTER project)で笑顔の種を撒き、異空間に染め上げたワンダーランズ×ショウタイムのパフォーマンスと対称的だったのは、動から一瞬で静へと流れを変えた宵崎奏・朝比奈まふゆ・東雲絵名・暁山瑞希から成る25時、ナイトコードで。の「フォニイ」(作詞・作曲:ツミキ)のミステリアスなオーラが放たれるパフォーマンス。個性も作風も全く異なる5つのユニットが集結するプロセカは、彼らのライブパフォーマンスを目にすると、音楽ジャンルそのものが具現化されているように思えるのも興味深い。月明かりに浮かぶ湖に響く歌声を彷彿とさせたバラードソング「トワイライトライト」(作詞・作曲:とあ)も25時、ナイトコードで。だからこそ演じられる1曲といえる。

 ガールズバンドのLeo/needの星乃一歌・天馬咲希・望月穂波・日野森志歩と初音ミクによる「インテグラル」(作詞・作曲:*Luna)で、それぞれがギターやキーボードを手に演奏し始める。MCでは星乃一歌と初音ミクのギターソロバトルが繰り広げられたのも見どころで、そのままギターサウンドとエモーショナルな歌声が引き立つ「ヒバナ -Reloaded-」(作詞・作曲:DECO*27)へ流れたのも美しかった。小豆沢こはね・白石杏・東雲彰人・青柳冬弥とMEIKOによる「酔いどれ知らず」(作詞・作曲:Kanaria)、初音ミクを迎えた「Beyond the way」(作詞:q*Left、作曲:Giga)を歌ったVivid BAD SQUADのビートとラップが融合するストリート感満載のパフォーマンスには、5つの個性に統一感をもたらすような痺れるものがあった。

 「イッツ・ショウ・タイム」と一斉に声を上げ、大迫力のスパークラーから火花が飛び出した鏡音リンとワンダーランズ×ショウタイムの「ショウタイム・ルーラー」(作詞・作曲:烏屋茶房)からライブも中盤。Leo/needとKAITOのギターサウンドが飛び出した「レグルス」(作詞・作曲:ゆうゆ)の後のMORE MORE JUMP!と巡音ルカとのコラボ「ももいろの鍵」では〈泣いてるの?怒ってるの?〉でモニターに映るメンバーが客席を気遣う手ぶりを見せているように見えたのも心にぐっと来たポイント。少しずつ筆者の心の感動パラメーターが高まっていっていることに気づいたのは、スケールの壮大な命のシンガロングが響いたVivid BAD SQUADとMEIKOとの「仮死化」(作詞・作曲:遼遼)、25時、ナイトコードで。と鏡音リンとの感情に沿うダンスが印象的だった「ノマド」(作詞・作曲:バルーン)あたり。Leo/needとKAITOによる「Peaky Peaky」(作詞・作曲:みきとP)で太いベース音を聴かせた日野森志歩。カメラに向かって手を振るなどファンサービス旺盛だった、25時、ナイトコードで。と鏡音レンによる「キティ」(作詞・作曲:ツミキ)。

〈どこまでもまだ まだ高い壁
それって どこまでもただ ただ怖がっていない?
あの空はこんなにも こんなにも 青く澄んでいるのに
まだこんなにも こんなにも迷う必要は無い無い〉

 力を振り絞り歌う姿が映った、Vivid BAD SQUADと鏡音レンによる「Flyer!」(作詞・作曲:Chinozo)のキャッチーで突き抜けるメロディーラインに直球な歌詞が胸に刺さる。まっすぐに心に刺さるその響きは、これまでプロセカを彩ってきた数々の楽曲の中でもとくにカラフルで、前へ進みたい気持ちをさらに掻き立てる一曲。終わりが近いと思われたその瞬間、楽曲のメッセージどおりにその予想は吹き飛ばされることになった。

 3周年アニバーサリーソング「NEO」(作詞・作曲:じん)とアンコールのラストの4周年アニバーサリーソング「熱風」(作詞・作曲:kemu)が、これまでのセカライと同じく各ユニットの代表者1名と初音ミクによる歌唱で届けられた。青春時代をボカロカルチャーと共に歩んできた人たちには特別な意味を持っている、じん、kemuといったレジェンドたちによる楽曲には圧倒的な説得力がある。この日披露された一つひとの楽曲が無数の障壁となる扉を開いていった中で、彼らの楽曲が最後の扉を開き放つための確かな一歩を導いてくれる強力な存在と言えば伝わるだろうか。〈どうしても 行きたいんだろう どうしても 行きたかったんだ 行くんだよ〉と、大きなフラッグを振っている臨場感あふれるキャラクターたちだけではなく、筆者を含めたここに集まったすべての人たちの思いから生まれた強大な風が巻き起こる。不確かな迷いや曇りは吹き飛ばされ、見えるのは広大な青空。諦めるという選択肢はこの風の中で途切れた。音楽の圧倒的なエネルギーが胸に残したのは、純粋にポジティブな思いだけ。さあ、いま飛び立つのだ――そんな気持ちで満たされた瞬間、大きな音を立てて噴射した銀テープが再び背中を押した。

セットリスト
1.アイムマイン
2.MOTTO!!!
3.ポッピンキャンディ☆フィーバー!
4.チュルリラ・チュルリラ・ダッダッダ!
5.世界を照らすテトラッド
6.フォニイ
7.トワイライトライト
8.インテグラル
9.ヒバナ -Reloaded-
10.酔いどれ知らず
11.Beyond the way
12.ショウタイム・ルーラー
13.レグルス
14.ももいろの鍵
15.仮死化
16.ノマド
17.成敗いたAAAAAす!
18.パラソルサイダー
19.Peaky Peaky
20.キティ
21.Flyer!
22.NEO
23.Be The MUSIC!
24.熱風

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