『プロセカ』の“これまで”と“これから”を描くひと時に──『コネクトライブ 4th ANNIVERSARY Brilliant Stage』レポート

プロセカ4周年『コネクトライブ』レポート

 今年9月で、サービス開始から4周年を迎えたアプリゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』(以下、『プロセカ』)。VOCALOIDシーンの再興を大きく後押しするのみならず、リアルとバーチャルを繋ぐ“コネクトライブ”という新時代のライブスタイルを確立。長いようで短い4年という歳月で、本タイトルはシーンの未来を果敢に切り開いてきた。

 今回、そんな『プロセカ』4周年を記念するコネクトライブ『4th ANNIVERSARY Brilliant Stage』が10月6日にゲーム内にて開催。本稿ではその模様をレポートする。

 物語のなかでもそれぞれ新たなフェーズへと突入し、次なる夢を掴もうとする各ユニットの面々。そんな彼らの現在地点を如実に表すかのように、本公演は従来のコネクトライブにはなかった新たな事象も満載のライブとなった。彼らの奮闘を見守るバーチャル・シンガーたちも勢揃いの、総勢26名(各セカイのバーチャル・シンガー全30人を含めると総勢56名)による祝祭感あふれたその様子をぜひ見届けてほしい。

 幕開けを飾ったのは、バーチャル・シンガー6人による「Journey」(作詞・作曲:DECO*27)。歌唱後には聴衆の“音楽を楽しみに待つ思いの強さ”によって、すべてのセカイが繋がる特殊な環境下になったと教えてくれる初音ミクたち。その言葉に呼応するようにバーチャル・シンガーと入れ替わる形で、星乃一歌、花里みのり、小豆沢こはね、天馬司、宵崎奏がステージに現れる。ミクの先導のもと、まず披露されたのは3周年アニバーサリーソング「NEO」(作詞・作曲:じん)。当時実装された衣装で6人が歌唱を行った後、再度舞台が暗転。ここからいよいよ、本公演のメインアクトが始まる形となる。

 先陣を切ったのは作中随一のエンターテインメント集団である「ワンダーランズ×ショウタイム」(以下、ワンダショ)。「世界を照らすテトラッド」(作詞・作曲:OSTER project)「フィラメントフィーバー」(作詞・作曲:栗山夕璃)ほか5曲のメドレーで、聴衆をあっという間に特別なひと時へと導いてくれる。彼らの楽曲は構成豊かで展開の目まぐるしい作品も多く、曲数の少なさを感じさせない密度の濃さもその醍醐味だ。

 本公演における特徴のひとつとして、各ユニットによるトークタイムが比較的長めに取られていた印象だ。なかでもワンダショのMCは、彼らの持ち味とも呼ぶべきアドリブ感満載。涼しい顔で無茶振りをする神代類、彼に翻弄される天馬司。それを天真爛漫に盛り上げる鳳えむ、そして最後は消極的な草薙寧々を全員で前に引っ張り出すという、ユニットの関係性や空気感がダイレクトに伝わるやりとりが展開される。

 そんな束の間のじゃれ合いを経て、赤い照明と共に突如鳴り響く警報音を受けて披露されたのは、彼らの最新曲かつラストナンバー「成敗いたAAAAAす!」(作詞・作曲:じーざす)。ステージではいつしか全員が和を基調とした新衣装へ装いを新たにしており、さらに曲中ではなんとユニットとも縁深い存在・ネネロボが舞台に登場。ステージ上を自在に飛び回るという予想外の演出も。まるで本物のミュージカルへと招かれたような没入感と満足感を残しつつ、無事トップバッターのステージは華々しく幕を下ろした。

 暗転したステージにエレキギターのストローク音が鳴り響き、続いて現れたのは「Leo/need」(以下、レオニ)。「インテグラル」「流星のパルス」(作詞・作曲:*Luna)ほか、彼女たちのこれまでの物語を紡いできた曲を新旧織り交ぜつつ、まずは5曲のメドレーを演奏する。バンドの魅力である煌びやかな純粋さを残しつつも、どこか自信に満ちた表情も垣間見える気がするのは、やはりメジャーの世界へ羽ばたいたがゆえだろうか。

 MCでは“教室のセカイ”の鏡音レンや巡音ルカ、KAITOを交えつつ、そんな変化がギターボーカル・星乃一歌の流暢になったトークにも表れている、といった話題も。バンドの歩み自体は、ここからが本当のスタートだ。今後への気概を滲ませる言葉から、ラストナンバー「それでもぼくらは歌うことをやめない」(作詞・作曲:葵木ゴウ)へと展開する流れの美しさには、きっと大勢の聴衆が胸を打たれたことだろう。

 ステージ最大の山場となったのは楽曲終盤。サウンドの展開に合わせ、舞台背景がバンドの原点となる公園とジャングルジムの景色、そして満天の星空へと一転する。上空を流れる数多の流星群が彼女たちの絆を、そしてこれからの未来をも祝福するような、感動に満ちた一幕ともなった。

 会場の煌めくムードをそのまま引き継ぎ、三番手には「MORE MORE JUMP!」(以下、モモジャン)が登場。“ステージのセカイ”の初音ミクや鏡音リン・レンらと共に、「MOTTO!!!」(作詞・作曲:Junky)、「天使のクローバー」(作詞・作曲:DIVELA)ほか5曲を披露していく。メドレー形式のユニット楽曲であらためて感じるのは、やはりその曲調の幅広さだろう。時にはポップに、ダイナミックに、そしてスタイリッシュに。“かわいい”一辺倒ではないアイドルの奥深さを、実に多彩な表情の使い分けでモモジャンは我々に教えてくれる。

 コネクトライブの魅力のひとつに、聴衆のコメントをステージ上の面々とリアルタイムに分かち合える点がある。それをフル活用し、観客とコミュニケーションを積極的に図るMCタイムも彼女たちの“アイドル力”が発揮される瞬間だ。そのなかで一番の後輩である花里みのりを他の3人が先輩として可愛がるワンシーンには、客席からたくさんの“尊い“うちわが贈られる場面も。

 「最後の曲にはサプライズもある」という旨のセリフの後に始まったのは「JUMPIN’ OVER !」(作詞・作曲:r-906)。おそらく本公演全体のハイライトともなる瞬間はこの時だろう。新衣装へのチェンジを経た彼女たちの前には、どこからともなく2台のトロッコが出現。2手に分かれて乗り込んだモモジャンの面々を乗せ、なんとトロッコは客席の中を大きく円を描くように走り始めたのである。

 元より次元の壁を越えてのライブ体験提供を肝に、プロセカでは従来さまざまな演出が届けられてきた。本公演では物語を彩る面々が、ついに舞台を降りて観客の目の前へと登場。三次元の存在に勝るとも劣らない、とっておきのサプライズを我々に見せてくれたモモジャン。そのアイドルとしての存在感はますます輝きを増す一方だ。

 ここまでの3ステージを経て気づいた観客も多かったが、今ライブでは全ユニットのラスト曲で、従来の公演にはないさまざまな新しい演出が仕込まれている。残りのステージでは一体どんな驚きが待ち受けているのか。大勢の期待が膨らむなか、四番手となる「25時、ナイトコードで。」(以下、ニーゴ)の舞台が幕を開けた。

 メドレーは「トワイライトライト」(作詞・作曲:とあ)ほか3曲のミドルテンポなムードで展開されるかと思いきや、「Iなんです」(作詞・作曲:れるりり)で一気にギアチェンジし、そのまま駆け抜ける形に。パフォーマンスやMC含め、ムードメイクは主にユニットのいわば“動”となる東雲絵名・暁山瑞希が牽引。“静”である宵崎奏・朝比奈まふゆも追随しつつ独特なテンポを織り交ぜながら、ニーゴならではの独自性の高い舞台が繰り広げられていく。

 他ユニットが夢や目標に到達し困難を乗り越えるなか、いまだ各々が深い霧の中を歩むような状況とも取れるニーゴ。しかしだからこそ彼女たちは、きっとつらく困難な現実を生きる人々にとって“救い”の象徴でもあり続けるのだ。人生における雨が上がる気配はいまだないが、その冷ややかな静謐さもどこか心地良い。そんな心持ちをもたらすラストナンバー「私は雨」(作詞・作曲:稲葉曇)を、クラシカルな衣装に身を包み披露する彼女たち。文字通りしとしとと舞台上へ降り注ぐ糸雨が、いつか恵みの雨となるように。その道程を祈るような気持ちで眺める、そんなステージングともなった。

 そしてユニットパフォーマンスのトリを飾ったのは「Vivid BAD SQUAD」(以下、ビビバス)。作中ストーリーで当初から目標としていた“RAD WEEKEND超え”をついに成し遂げて以降初のライブということもあり、本公演での彼らはまさに最高到達点と呼ぶに相応しいパフォーマンスだったことだろう。

 メドレーでは「Beyond the way」(作詞:q*Left、作曲:Giga)や「シネマ」(作詞・作曲:Ayase)といったユニットアンセムを新旧織り交ぜつつ展開。ようやく掴んだ夢の景色、その軌跡を辿るような選曲に、きっと多くの観衆が胸を熱くしたに違いない。

 圧倒的熱量のパフォーマンスの後も、MCでは打って変わって日常を思わせる温度感の応酬を繰り広げるビビバスの面々。東雲彰人のヒューマンビートボックスにあわせ残りのメンバーが客席を煽る流れを経て、彼らの打ち立てた金字塔を象徴するナンバー「ULTRA C」(作詞:Reol、作曲:Giga & TeddyLoid)で公演もいよいよクライマックスへ。“ストリートのセカイ”の初音ミクと共に、大胆なヘアアレンジも含めた楽曲MVの新衣装に揃って身を包む彼ら。曲の途中では暗転を挟んだかと思えば、次の瞬間にはなんと舞台を降り客席最前列で大迫力のパフォーマンスを披露。会場のボルテージを最高潮まで引き上げたその姿には、まさに世界を照準に入れ始めた王者の風格が漂っていたように思う。

 余韻冷めやらぬまま湧き続けるアンコールの声に応え、ここからはバーチャル・シンガーたちによるステージが展開。MEIKO&KAITOによる「番凩」(作詞・作曲:hinayukki@仕事してP)から初音ミク「メルト」(作詞・作曲:ryo)まで、怒涛のアンセムメドレーに客席からも喜びの声があがる。

 その後ミクのセリフに導かれるように、再び星乃一歌、花里みのり、小豆沢こはね、天馬司、宵崎奏が舞台上に集結。観客からのコメントを拾いながら各々のステージを振り返りつつ、4周年を記念する本公演を締め括るナンバーとして「熱風」(作詞・作曲:kemu)を歌唱した。

 黒と白、そして赤と青の4色を基調としたモードな衣装に身を包む6人の立つ場所は、いつしか楽曲MVに描かれた青空と一面の花畑に。華やかな祝祭感で幕を下ろした今回のアニバーサリーライブ。これまでの歩みを振り返ると同時に、あるいはそれ以上にこれからの未来にも思いを馳せるような。希望に満ちあふれた、特別な空間となったのではないだろうか。

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