MIXI×コロプラの完全新作『フェスティバトル』から考える、“IP再利用”の可能性と乗り越えるべき課題

『フェスティバトル』から考える“IP再利用”の可能性

 MIXIとコロプラは5月17日、スマートフォン向けの完全新作ゲーム『フェスティバトル』をリリース予定であると発表した。

 モバイルゲームの領域の2つの人気作から生まれる新たな派生作品は、対戦ジャンルの定番となれるか。IPの再利用が持つ可能性と、ヒットに向けての課題を考える。

『モンスト』『白猫』から派生した6対6の対戦アクション『フェスティバトル』

【フェスティバトル】ゲーム紹介

 『フェスティバトル』は、MIXIの開発するひっぱりハンティングRPG『モンスターストライク』や、コロプラの開発するアクションRPG『白猫プロジェクト NEW WORLD’S』(以下、『白猫プロジェクト』)といったタイトルに登場するキャラクターたちが一堂に会し、6人1組となって相手チームとバトルを繰り広げるスマートフォン向けのアクションゲームだ。どちらかが全滅するまで戦う「チームサバイバル」や、フィールドに散らばったクリスタルを集める「クリスタルハンター」など、さまざまなルールが用意されており、プレイヤーは自分好みの遊び方で対戦バトルを満喫できる。

 また、ゲーム内には配信から視聴までを一貫して楽しめる機能「フェスCh」が搭載されており、スマートフォン向けのタイトルながら、ゲームプレイをワンボタンで手軽に配信できるとのこと。視聴を通じて、配信者の順位を予想したり、応援するプレイヤーに支援アイテムを送ったり、さらには自身のゲームデータに存在するヒーローを成長させたりすることも可能であるため、このようなジャンルが苦手な層も、これまでにはない「観る」という遊び方をアプリを通じて体験できるという。

 基本プレイ無料・アイテム課金型で、リリース日は現時点で未定。2024年6月中にクローズドβテストの開催を予定しており、発表と同日の5月17日には、テスターの募集も公式サイトでスタートした。

『フェスティバトル』はモバイルゲーム領域の「スマブラ」となれるか

 先にも述べたとおり、『フェスティバトル』の特徴は、MIXI・コロプラが開発・発売する人気作の登場キャラクターが一堂に会する点にある。詳細は明らかとなっていないが、プレスリリースによると、紹介した『モンスターストライク』『白猫プロジェクト』のほかにも、さまざまなタイトルからバラエティに富んだ面々が参戦するようだ。

 ゲームの分野ではこれまでにも、販売促進キャンペーンの一環として、関連性の有無にかかわらず、特定のタイトル間でキャラクターなどのコラボレーションが行われるケースが珍しくなかった。特にモバイルゲームなど、基本プレイ無料・アイテム課金型のビジネスモデルで展開されるタイトルでこうした動きは顕著で、さまざまなタイトルが開発元が所有するIPの再利用、あるいは社をまたいでのIPの貸し借りといった形でユーザーへの訴求を繰り返している。直近では、2024年1月にスタートしたエレクトロニック・アーツの人気FPS『Apex Legends』と、スクウェア・エニックスの新作RPG『FINAL FANTASY VII REBIRTH』とのコラボレーションも話題を呼んだ。このケースでは前者において、後者の世界観/キャラクターを連想させるキャラクタースキンなどが展開された。

 今回の『フェスティバトル』の例もまた、これらと同様のアプローチと言えるのではないか。各開発元が所有するIPを再利用することで、醸成してきたファンコミュニティの注目を集め、話題性/ユーザーを獲得するねらいがあると考えられる。ソーシャルゲーム/モバイルゲームの領域で長く実績を重ねてきた両社だからこそ実現できるタイトルが『フェスティバトル』というわけだ。「祭典」を意味する英単語である「フェスティバル(festival)」と、同タイトルのゲーム性を表す「バトル(battle)」を組み合わせたネーミングからも、その意図を汲み取ることができる。

【フェスティバトル】キャラクター紹介 赤髪のヒーロー編

 そのような観点に立つと、ある人気作品との共通点も見えてくる。その作品とは、「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズだ。同作は、開発・発売を手掛ける任天堂の数多の人気作品に登場するキャラクターが一堂に会する2Dアクション。プレイヤーは格闘ゲームの要領で対峙する敵を画面外へ吹き飛ばし、最後の1人として生き残ることを目指す。第1作『ニンテンドウオールスター!大乱闘スマッシュブラザーズ』が発売された1999年からこれまでの約25年のあいだに、さまざまなプラットフォームをまたぎ、6つのタイトルが展開されてきた。全世界におけるシリーズ累計販売本数は7,500万本超。ファンでなくても誰もが認める対戦アクションゲームの金字塔である。

 同シリーズが任天堂のさまざまな人気作品に慣れ親しんできたフリークたちを夢中にしたように、『フェスティバトル』もまた、モバイル向け作品をゲームカルチャーとの接点にしてきた層に広く支持されるタイトルとなる可能性を秘めている。『モンスターストライク』は2013年10月に、『白猫プロジェクト』は2014年7月にサービスが開始されており、ともにリリースからは10年前後の期間が経過している。モバイルゲームの領域では言わずと知れた人気タイトルである。前者は2022年下半期以降、2023年上半期、2023年下半期と、3半期連続で収益ランキングトップの座に君臨し続けている。リリースから10年が経過するタイトルがいまだに存在感を示していること自体が特別であり、そうした実績がまた、同タイトルのヒットの可能性をより確かに感じさせる要素となっている。

 公式は同タイトルの開発におけるキーワードを「新時代のマルチプレイゲーム」としているそう。ゲームに対する柔軟なアプローチでモバイル領域を代表する作品を生んできた両社だけに、『フェスティバトル』でも、新たな時代を切り拓く体験を届けてくれるに違いない。

【フェスティバトル】ファーストトレーラー

 一方で、懸念点があるとすれば、『モンスターストライク』『白猫プロジェクト』における既存ユーザーがなかば習慣的に各タイトルをプレイしており、熱中できる新たなステージを求めてはいない可能性がある点だ。6人で1チームを構成するというルール上、一定数のプレイヤーが確保できなければ存続は難しくなる。興味を持ち、手に取ったプレイヤーをいかに囲い込めるかが、『フェスティバトル』成功の分岐点となっていくのではないだろうか。無論、両タイトルに触れてこなかった新規層の取り込みも重要となるのは間違いないだろう。

 また、対戦を主軸に据えるのならば、Pay to Winとならない仕組みづくりも課題となる。Pay to Winとは、課金の有無、課金額の多寡が試合結果につながる性質を指して使われる言葉。影響力が強ければ強いほど、対戦タイトルとしての公平性は保ちづらくなり、新規ユーザーの参入障壁が高くなる。基本プレイ無料・アイテム課金型のビジネスモデルを持つ対戦タイトルでは、売上を追求するあまり、本来はマネタイズポイントとするべきではない箇所に課金要素が盛り込まれるケースも少なくない。同分野の定番となるためには、こうした悪習を避けながら、一定の売上/ユーザーを確保することが求められていくのではないだろうか。

 とはいえ、『フェスティバトル』はまだ発表されたばかり。6月のβテストなどを経て、詳細なインプレッションなども明らかとなっていくのだろう。同タイトルはモバイルゲーム領域の「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズとなれるか。今後の動向に注目したい。

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