ワンピースやモンストとコラボで話題 「menu」がデリバリー×エンタメを掲げる理由とは
コロナ禍で盛り上がりを見せるフードデリバリー市場。
業界を牽引するUber Eatsや出前館を筆頭に、最近では海外発のプレイヤーがこぞって国内に進出し、熾烈なシェア争いを繰り広げている。
まさに、群雄割拠とも呼べる状況となっているわけだが、日本発のデリバリー&テイクアウトアプリとして知られるのが「menu(メニュー)」だ。
2019年4月にテイクアウト、2020年4月にデリバリーを開始して以降、2年間で加盟店店舗数が約76,000店舗(2021年10月時点)に達する国内最大級のサービスとして急成長を遂げている。
特にmenuのブランド認知を高めるのに寄与しているのが「デリバリー × エンタメ」のプロモーションだ。
人気アニメ作品やゲームタイトルとのタイアップを通じ、単なる「食の宅配」のみならず、エンタメ要素を加えた付加価値を提供しているのが大きな強みとなっている。
今回はmenuを運営するmenu株式会社コミュニケーション本部 本部長の山敷真氏に、menuのコミュニケーション戦略や今後の展望について話を聞いた。(古田島大介)
コロナ禍でデリバリー参入を考える飲食店の下支えになった
まず、menuのローンチからわずか2年で、国内デリバリー・テイクアウト加盟店増加数No.1にまで拡大できた理由を山敷氏へ伺った。
「2019年4月からテイクアウトのサービスを提供した際は、数千店舗の規模感でした。それが、2020年4月にデリバリーのサービスを開始した時は、時を同じくして世の中が緊急事態宣言下に突入したことと重なったため加盟店が急激に増加しました」
時短営業や席数に縛られず、デリバリーの注文さえ入れば売り上げに繋がる。
飲食店にとっても、新たな活路を見出すためにデリバリーへ参入する動きが活発化した。
「menuに加盟するときの初期費用はいただいておらず、テイクアウト時の手数料もかかりません。デリバリー利用の場合は配達料を料金に上乗せして販売できる。このようにデリバリーへの参入障壁を下げたことも加盟店が増えた理由だと思います」
UberEatsや出前館、Wolt、foodpandaなどフードデリバリー市場には競合他社がひしめているが、menuは2021年4月にいち早く、47都道府県全てに提供エリアを広げることに成功したのだ。
デリバリーを1年で全国へ拡大させたのは「県単位というよりも、エリアごとに同心円状で広げていくことを意識した」と山敷氏は言う。
「飲食店、配達員、ユーザーそれぞれのバランスを大切にしていました。エリアごとにサービスが成立する基準を設け、クリアした段階で着実に広げてきたのです。また、プロモーションの観点ではデジタル広告のほか飲食店や配達員に訴求するためにCMを実施していました。ユーザー拡大に対しては、エリアごとに最適化したポスティング戦略を図り、注文数を伸ばすために工夫を凝らしました」
人気アニメ作品やゲームタイトルとの積極的タイアップでブランド認知を高める
さらには人気アニメ作品やゲームタイトルとのタイアップを通じ、ブランドの裾野を広げていくコミュニケーション戦略も昨年から取り組んでいる。
映画やアニメ、ゲームなど多くの作品の中から、『アイドルマスター シャイニーカラーズ』(バンダイナムコ)、『彼女、お借りします』(週刊少年マガジン)や『劇場版Fate/Grand Order ‐神聖円卓領域キャメロット‐』など、人気作品とのタイアップキャンペーンを続々と行い、menuのブランド認知を高めていった。
店舗で配布するサンクスカード(従来は店員さんが手書きでお弁当に「ご注文ありがとうございます!」など封入したり、袋にマジックでメッセージを書いたりするもの)をアニメキャラクターが紹介する形にしたり、主要キャラクターのオリジナルボイス「かのかりのメッセージサンプル挿入」やライブ演出で用いた羽根を封入した特製サイン色紙、映画館に飾られる等身大スタンディなど、作品ごとの個性を生かしたオリジナリティあるプレゼントグッズなども展開した。
ファンがいかに楽しめるかが重要
そして、今年4月にデリバリーの提供エリアを全国へ広げた段階で大規模なプロモーションを敢行。
大人気アニメである『ワンピース』とコラボし、「行くぞ、大配達時代!」と銘打ったTVCMを基幹7都市で放映し、大々的なマスマーケティングを行なった。
「ワンピースといえば、まさにNO.1のアニメとしての地位を持ち、数多くのファンに愛されるアニメタイトルです。menuがワンピースとタイアップしたことで、ユーザーからは『ワンピースと組むくらい、本気でデリバリーをやろうとしているんだね』と言っていただく機会が増えました。menuのブランドバリューが高まったのももちろんですが、何よりmenuの本気度や信頼感が多くの方に伝わったのが大きいと思っています」
今回のキャンペーン企画の目玉に、自転車で渋谷のスクランブル交差点を配達する自転車のシーンや、各キャラクターの幼少時代の描き下ろしイラストを冠する店舗販促用のポスターや配達員向けのワッペン、クリアファイルやトートバッグなどのグッズを展開した。
「できるだけ限定感を出すため、出来合いのものではなく描き下ろしにこだわった」と語る山敷氏は、ワンピースと組むスタンスについて次のように説明する。
「有名なアニメ作品とコラボして、ブランド自体を広めたいというよりも、『ワンピースのファンが喜ぶようなものを一緒に創りたい』という想いが根底にあります。TVCMやグッズを作るにしても、どうすればファンに寄り添ったものができるかを念頭に置いて企画するようにしています。また、もともとmenuの親会社がゲームを運営していて、アニメやゲームなど先とのコミュニケーション経験がある分、交渉や折衝の仕方をある程度理解していたのも、ワンピースとのコラボ実現に至った所以であり、お互いが歩み寄っていいものを世に出そうと合致できた理由だと考えています」