『ゼルダの伝説TotK』『スト6』『FF16』など傑作揃いだった2023年上半期 下半期も続く“ラッシュ”で注目作が目白押し

2023年上半期ベストゲーム

 日頃からゲームをプレイしている方ならご存知のとおり、2023年上半期は大作を中心に、ゲーム史に名を刻むであろう傑作が数多くリリースされた。

 筆頭は、やはり『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』(以下『ゼルダの伝説TotK』)だろう。前作『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(以下『ゼルダの伝説BotW』)をベースとしながらも、主人公・リンクが持つ能力の多くを一新。好奇心を強く刺激するオープンワールドは、プレイヤーの創意工夫がさらに活きる舞台となった。遊ぶほどに新たな発見が待っているゲームプレイ、それを極上のものへと導く物語は、かつて「最高のゲーム」とも謳われた前作と同等か、それ以上の驚きをプレイヤーにもたらした。

ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム 3rdトレーラー

 格闘ゲームをたしなむプレイヤーならば、同ジャンルへと大きな変革をもたらしたタイトルとして、『ストリートファイター6』に最大級の称賛を示す者は多いことと思う。オリジナルのアバターを成長させながら箱庭を自由に探索できるひとり用ゲームモード「ワールドツアー」や、コマンド入力不要の操作モード「モダンタイプ」などの導入が新規プレイヤーの参入障壁を取り払い、本作のコミュニティは言語の壁を超えて、かつてない賑わいを見せている。

『ストリートファイター6』 × 「恋しさと せつなさと 心強さと 2023」篠原涼子 with t.komuroプロモーション映像

 もともとゲーム史においても重要な位置を占める傑作を「これ以上に見事なリメイクを作ることは不可能ではないか?」と思えるほどの完成度で蘇らせた『バイオハザード RE:4』もまた、リメイクでありながら、アクションアドベンチャーゲームとして年間ベスト級の大傑作だ。

『BIOHAZARD RE:4』 3rd Trailer

 『スト6』と『バイオRE4』をリリースしたカプコンは、2023年に大きな躍進を遂げたゲームパブリッシャーと言ってよいだろう。『ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション』や『ゴーストトリック』といった名作のリマスター・移植版も好評で、もはや隙なしのラインナップだった。自社製ゲームエンジン「RE ENGINE」採用タイトルが登場し始めた2017年ごろから好調ではあったが、もはやゲーマーから国内随一の信頼を獲得したメーカーとなっている。

 ここまでに挙げたタイトルよりも比較的賛否は分かれているが、やはり『FINAL FANTASY XVI』もこの話題には欠かせない。重厚な世界観・ストーリーと本格的なアクション要素を「FF」シリーズにもたらした本作は、新たな挑戦が多いタイトルでありつつも、シリーズファンからおおむね好評だ。ゲームの進行で作品世界の情勢が変わるたびに更新されていき、物語への深い理解を促す「アクティブタイムロア」や、誰もが痛快なアクションを楽しめることを目指したゲームデザイン面でのさまざまな配慮などが実を結び、開発側が目指したものが齟齬なく多くのプレイヤーに届いたということだろう。

FINAL FANTASY XVI テーマソングトレーラー / 米津玄師『月を見ていた』

 完全新規タイトルで高く評価されたものを挙げるなら、「Xbox & Bethesda Developer Direct 2023」での発表直後に突如リリースされた『Hi-Fi RUSH』が真っ先に浮かぶ。『デビル メイ クライ』や『ベヨネッタ』から連綿と続くスラッシュアクションのジャンルに、音楽のリズムにあわせて戦う楽しさをミックス。その気持ち良さを最大限に活かすための各種要素のチューンナップで、異なるジャンルの融合らしからぬ、スマートな快作に仕上がっていた。

『Hi-Fi RUSH™(ハイファイ ラッシュ)』ローンチトレーラー

 もう少し小規模な完全新規タイトルならば『パラノマサイト FILE 23 本所七不思議』も話題になった。実在する怪談をベースとしたホラーアドベンチャーとして、ゲームならではのインタラクティブ性を存分に活かしながら、個性豊かな登場人物たちの「呪い合い」というキャッチーな要素も取り入れた本作。昭和レトロをスタイリッシュに再解釈したビジュアルも、多くのゲームファンを惹き付けた重要なポイントだ。

『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』トレーラー

 ここまでに挙げたタイトルは、ユーザー評価的にも、批評面においても、2023年を代表すると言えるタイトルだ。もう少し、ひとりひとりのユーザーにとってのベストゲームにフォーカスするならば、『ディアブロ IV』、『ホグワーツ・レガシー』、『ファイアーエムブレム エンゲージ』、『超探偵事件簿 レインコード』あたりの名前も挙げられるかもしれない。インディーゲームならば『メグとばけもの』、『デイヴ・ザ・ダイバー』などだろうか?

 コアなゲームファンが挙げているランキング形式の「2023年上半期ベストゲーム」を複数チェックしていて筆者が興味深いと感じたのが、『ゼルダの伝説TotK』を第1位ではなく、第2位に位置付けている人が少なくなかったということだ。そして、そうしたくなる気持ちは筆者もよく理解できる気がする。掘り下げて考えてみるに、『ゼルダの伝説TotK』はなんというか、あまりに規格外だったのだと思う。「ならば1位なのでは?」というのが普通の考え方だろう。ただ、ここからは筆者の勝手な推察だが、この順位付けには複雑なゲーマー心理が作用しているのかもしれない。そこに”おもしろさ”を感じたので、お節介かもしれないがもう少し掘り下げてみたい。

 前作『ゼルダの伝説BotW』もオープンワールドのゲームプレイを大きく更新する1作だったが、それは「今後発売されるタイトルへと大いに影響を与え得る」タイプのものだった。『ゼルダの伝説TotK』は、そんな前作のゲームデザインをベースとして新たに盛り込むのは本来ちょっと無茶な、少しバランスを間違えれば破綻しそうな、異質なゲームデザインをしている。『ゼルダの伝説BotW』のような「参考にされることでジャンル全体の進化をも促す」ものではなく、「下手に真似することなどほとんど不可能な、孤高の領域」に到達したゲームとなっているのが『ゼルダの伝説TotK』なのだ。

 その規格外の作りは、多くのゲームファンが好みであるかに関わらず称賛せざるを得ないものだろう。一方で、圧倒的なゲームをプレイして「それならば、もっと自分らしいゲームを、自分の感性だからこそ深々と刺さったと言えるゲームを声高にプッシュしたい」という気持ちが沸く――そういった感覚が“あえて”『ゼルダの伝説TotK』を2位に押し留めているのだとすれば、ある程度納得できるのではないだろうか?

 多くのゲームファンが「自分らしいベストゲーム」をプッシュしたくなるほどに、質と量だけでなく、発売されたゲームの多様さもまた充実していたのが、2023年上半期だったと言えるだろう。

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