『ゼルダの伝説TotK』が向き合った前作の“問題点” 自由度とストーリーはどのように両立したのか

『ゼルダTotK』が向き合った“問題点”

 近年のビデオゲームにおいて完全に定着したといえる「オープンワールド」。いわゆる「一本道」と呼ばれるリニアな進行を強いられるゲームデザインとは異なり、基本的にはプレイヤーが行きたいところへ行き、やりたいことができるという自由度の高さが魅力であり、広大で密度のあるマップはプレイヤーに対して「この世界を旅している」というリアルな没入感を与えてくれるのが大きな魅力だ。

 一方で、このオープンワールドというシステムは基本的にストーリーテリングと相性が良くない。それもそのはず、基本的には物語というのは前に進むものであり、自由に旅をしている状態というのは、すなわち話が動いていないことを意味するからである。

ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム TVCM アクション篇

 『サイバーパンク2077』のVは刻々と迫る「レリック」のタイムリミットを目の前にして、なぜ知り合ったばかりの刑事の甥っ子探しに協力するのか? 『Fallout 4』において、なぜ主人公は最愛の息子を探すことよりも昔のヒーローになりきって街の平和を守ることを優先しているのか? 『Horizon Forbidden West』のアーロイは急速に進行する環境崩壊を止めるために西部アメリカに来たのに、なぜ集落の内輪揉めに介入しているのか?

 「やりたかったから」と言えばそれまでだが、ふと冷静になると「そんなことしてる場合なのか?」という疑問がどうしても湧いてしまうことがある。かといって、目標達成を最優先にメインクエストだけを進めていると、マップがどれだけ広大であろうが「一つのマーカーだけを追いかける」ことへの虚しさを感じてしまう。

 世界中で高い評価を獲得した『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(以下、『ゼルダの伝説BotW』)もまた、「最初からラスボスの場所まで直行できる」、「主要な目的地を4箇所同時に提示することでプレイヤーに自由に攻略順序を決めてもらう」といった工夫はあったものの、やはりじっくりと遊んでいる中で「ゼルダに呼ばれているのだから、早くハイラル城に行った方が良いのでは?」という疑問がよぎる瞬間は多い。ゼルダは100年におよぶ厄災ガノンとの戦いによって限界を迎えつつあり、一方でリンクはといえば出会ったばかりの大工の村づくりを手伝っているのだ。

 同作の続編となる『ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム』(以下、『ゼルダの伝説TotK』)は、もちろん物語としての「続編」であることは前提として、こうした前作の問題点と向き合った作品でもある。本作が示した解答はシンプルだが大胆なものだ。「広大なマップの探索」という概念そのものをゲームの大目的としたのである。

 『ゼルダの伝説TotK』では、とある出来事をきっかけに(前作ラストで救出した)ゼルダが行方不明となり、それと同時に世界に「天変地異」と呼ばれる様々な異変が起こることから物語が動き出す。主人公であるリンクの目的は「ゼルダを探す」ことであり、世界各地で報告される「ゼルダの目撃情報」と、そこから推察される「天変地異との関係性」を元にして、広大な世界を舞台に捜索を繰り広げる。

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