『ゼルダの伝説 TotK』という“自由で面倒な遊び場”に、なぜ我々は没頭してしまうのか

“自由で面倒”な『ゼルダTotK』に没頭する理由

 5月12日にリリースされ、僅か3日で1000万本の売上を達成した『ゼルダの伝説ティアーズオブキングダム(TotK)』。発売から一か月が経過した現在でも至るところで話題になっており、その人気の高さが伺える。

 本作は広大なハイラルを自由に探索でき、プレイヤーごとに違った順序で攻略できるのが大きな魅力となっている。発売日からプレイして、すでにストーリーを一通りクリアしたという人もいれば、クエストそっちのけで気になった場所を探索し続けているという人もいるだろう。ちなみに筆者は一旦ストーリーをクリアし、まったくといっていいほど探索をしていなかった地下へ足を踏み入れている。

 そんな自由さの一方で、本作は何度も失敗しながら自分なりの攻略法を見つけるトライ&エラーのゲームとなっており、イラッとしてしまうようなストレスを感じることも少なくない。ヒントが少なく感じる謎解きや、同じ場所で繰り返される落下死、うまくいかないモノづくりなど、本作をプレイすれば一度はこうした経験はするはずだ。

 また、本作の自由さはプレイヤーがなにをしていいかわからない、目的を失ってしまうことに繋がりかねないポイントでもある。本作のプレイを渋っている人のなかには、こうした面倒くささや、自由すぎるゆえの懸念点を理由として挙げる人もいるだろう。

 それでも、本作はいざプレイしてみると時間を忘れて楽しんでしまうし、むしろ止めどころを見つけ辛いゲームとなっている。なぜ、一見すると面倒に見える本作が、ついついプレイし続けてしまう中毒性を持っているのか。それはマップに散りばめられた様々な要素と、移動すら楽しめてしまうゲーム性に起因するのではないだろうか。

空から見渡すことで寄り道先が無数に見つかる

 まず、本作は空から地上を見渡す事が多い。チュートリアルを終えたら空から落下し、これから冒険する地上を見渡すことになるし、冒険中もファストトラベルを解禁していない場所にいく際は、空・陸・地下に続く大穴、どこへ行くのにも鳥眺台を使用して空に上がって目的地を探すのが手っ取り早いからだ。

 いざ空に昇ってみると、目的地以外にも気になる場所が大量にある。空中に浮かぶ島に始まり、まだ行ったことのない馬宿や祠、洞窟の入口がありそうな場所、アイテムやイベントが隠されていそうな廃墟や敵の拠点など、目移りしてしまう場所が盛りだくさんとなっている。目的地そっちのけでまったく違う方向に落下することは日常茶飯事だ。

空から見渡すと行きたくなる場所が目に入る

 地上に降りても道中でルピー稼ぎにルミーを追いかけたり、歩いているNPCと出会ってイベントが発生したり、空中からでは見えなかった場所に道があったりと、当初の計画になかった要素をあちこちで発見することになる。空中から降ってくる遺跡の欠片にモドレコを使えば空中に浮かぶ島に行けたり、途中で大穴を見つけて地下へと潜ることだってあったりと、寄り道は地上の探索だけに留まらない作りとなっている。

 こんな風に本作では、マップ上で目につく「なにかありそうな場所」が至るところに散りばめられているため、メインストーリーを進めなければと思いながらも、ついつい寄り道をしてしまう。脇道での謎解きや戦闘をこなしつつも、その最中にまた次の気になるところを見つけ、また見つけと繰り返しているうちに、本来の目的をすっかり忘れてしまうなんてことも珍しくはない。筆者は本作に熱中している期間は毎晩「またストーリーが進まなかった。明日こそは進めよう」と思いながら床についていた程だ。

 冒頭に書いたとおり、こうした自由さはプレイヤーを「なにをしたらいいかわからない」状態に陥らせがちだ。しかし、本作ではストーリーにのっとったメインクエストが用意されており、リンクの冒険にはハイラルを救うという明確な目的が設定されている。なにをしたらいいか分からなければ、メインクエストをこなそうとすればいい。その道中で気になる場所が自然と見つかり、いつの間にか自由に探索をすることになる。寄り道にかける時間が多いゲームだが、それを支えているのは「ハイラルを救う旅」という物語であり、その点で本作は『Minecraft』のようなサンドボックスゲームとは異なっているといえるだろう。

 また、寄り道で得たものはメインクエストの攻略にも役立つ。祠でハートとがんばりゲージの最大値を上げられるほか、ボスがドロップした素材を武器にスクラビルドして強化することができる。RPGでザコ敵を倒し続けてレベリングをするように、本作では寄り道をすることでメインクエストの難所を楽にすることが可能となっている。無駄になる寄り道がないという点でも、本作はプレイヤーの自由な攻略をサポートしてくれているのだ。

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