『Shadowverse』にキャリアを捧げるeスポーツキャスター 友田一貴に聞く「カードゲーム実況の難しさ」

友田一貴に聞く、カードゲーム実況の難しさ

 友田一貴という人物をご存じだろうか。私がいま話を聞きたいeスポーツキャスターのひとりだ。

 彼はあまりにもユニークだ。一般的なeスポーツキャスターは、複数のゲームジャンルを兼任するが、彼は違う。対戦型オンラインTCG(トレーディングカードゲーム)のeスポーツタイトル『Shadowverse』の実況に専念しているのだ。

 また、彼の最大の特徴はそのハイテンションな実況スタイルだろう。少年漫画から飛び出してきたかのような、「必殺技の決めゼリフ」を彷彿とさせる大迫力の実況は「ゲームに無知な視聴者」ですらも画面に釘付けにするパワーがある。

 彼のような実況スタイルは珍しかったため、当初は賛否があったようだが、今となっては友田氏の実況を目当てに『Shadowverse』の大会を見る人もいる(わたしもそのひとりだ)。

 本記事では「その実況スタイルに辿りついた軌跡」「自分に憧れて実況を目指してくれたファンに対して放った意外な一言」など、濃すぎる内容を5000文字に凝縮した。(小川翔太)

(注:今回のインタビューは「Shadowverse Invitational 2023」(※1)の開催中に実施)

※1:「Shadowverse Invitational 2023」とは、2022年度の『Shadowverse』の競技シーンで活躍したプレイヤーが集い、いま国内で最も『Shadowverse』が強い選手を決める大会。

異例の実況者、デジタル版とリアル版の兼任

ーー本日はよろしくお願いします。『Shadowverse』専門の実況者として活動されて6年以上、今回の大会(インビテーショナル)では、デジタル版とリアル版の両方で実況を務められるとのことですが、かなり大変なのではないでしょうか。

友田一貴(以下、友田):そうですね。一般的には、デジタル版とリアル版は、それぞれについて専門知識を持った人が実況を担当するので、僕の知る限り、その両方を兼任する実況者は少ないです。

 僕の場合も例に漏れず、デジタル版の実況に専念したほうが良いのではないか、という話もあったのですが、僕自身が(リアル版の実況にも)挑戦したいという気持ちが強かったので、やらせていただきました。

ーーなぜ挑戦したいと考えたのでしょうか。

友田:(『Shadowverse』を)デジタル版で遊んでくれている層とリアルカードゲームで遊んでくれている層って、違うんです。なので、これはより多くの視聴者に『Shadowverse』のキャスターチームの凄さを伝えるチャンスだと感じ、その役割を「僕自身が担いたい」と思いました。また、僕が兼任することで、普段デジタル版しかプレイしていない人がリアル版にも興味を持ってくれる可能性がある。逆も然りですが、僕がそのキッカケになれればと思いました。

ーー実際、リアルカードゲーム版『Shadowverse』である『Shadowverse EVOLVE(以下、EVOLVE)』をプレイされている層には、ほかのリアルカードゲームを遊んできた方も多いですね。

友田:そうなんです。『マジック:ザ・ギャザリング』『デュエルマスターズ』『遊戯王』など、他のリアルカードゲームで実績を残されている方々が『EVOLVE』の大会でも上位に入っています。そういったリアルカードゲーム出身の方にも、デジタル版の実況もみてほしいと思っています。

ーーデジタル版とリアル版の実況だと、また違う難しさがあるのではないでしょうか。

友田:おっしゃるとおりで、デジタル版だと派手な演出がありますが、リアル版ではそういった演出はなく、試合が淡々と進みます。実際の大会ではアニメの登場人物みたいに「俺のターンドロー!」って叫びながら戦う人はいないので(笑)。演出が派手ではない分、盛り上げていくためには、より高い実況スキルが必要です。

ーー具体的にはどんなスキルでしょうか。

友田:ゲームに対する理解ですね。リアル版は特にそうかもしれませんが(盛り上げようとして)大声で叫ぶだけではダメで、ちゃんと中身のある発言をしなければなりません。そのためにも自分でそのゲームをやり込んで、ゲームに精通しておく必要がある。どんなにテンション高く実況をしても、中身のない発言をしていては(視聴者が)眠くなってくるんです。

 

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