流行するデジタルカードゲームの魅力と課題 手軽に始められる一方で”ガチ勢”優遇の傾向強し?
近ごろ、デジタル・カードゲーム(以下、DCG)が大流行している。スマホでいつでもどこでも遊べるという手軽さや、多くのタイトルが基本プレイ無料だったりと、これまでカードゲームが抱えていた「敷居が高い」というイメージを払拭できたのが、成功の要因の一つだろう。
筆者は過去、トレーディング・カードゲーム(以下、TCG)『Magic:The.Gathering』で遊んでいたカードゲームプレイヤーだ。紙のカードを収集し、デッキを構築して遊んでいた。そんな筆者からすると、DCGには利点も多いが、課題もあるように感じる。今回はアナログとデジタルいずれも遊んだ筆者の視点から、それぞれのメリットとデメリットについて解説していこうと思う。
まずは前段として、近年の日本国内におけるスマートフォン向けDCG市場の足跡を見ていこう。
現在のDCGブームの火付け役は、2013年にBlizzard Entertainmentがリリースした『HearthStone(ハースストーン)』だろう。
デイリーミッションをこなすことでゲーム内の通貨が得られ、それを消費してカードパックを開けられるほか、カードをリサイクルすることで、任意のカードに交換できるシステムなど、今日のDCGでは当たり前になったシステムを作った人気タイトルだが、特有の“洋ゲー”的な雰囲気からか、日本では一部のボードゲーム愛好家やTCGプレイヤーの間では話題になったものの、比較的マイナーなタイトルとして扱われていたように思う。
HearthStoneが作り上げた基礎を踏襲して、2016年にはCygamesが『Shadowverse(シャドウバース)』をリリースした。有名声優によるキャラクターボイスや美麗なイラストをふんだんに使った国産タイトルで、ゲーム内容もよく練られており、「スマホで本格的なTCGが遊べる」と大評判になった。
本タイトルはTCGのプレイヤーだけでなく、TCG未経験のプレイヤーからも爆発的な人気を獲得し、プロeスポーツ化が実現、賞金付きの大会が開かれるなど、DCGの市場規模拡大に大きな貢献を果たしたタイトルだといえる。
そうした『Shadowverse』のヒットを受けてか、TCGメーカーもその流れに乗ることになる。『Magic:The.Gathering』(以下、マジック)の開発元であるWizards of the Coastは2018年、スマートフォン向けのデジタル版マジック『MTG Arena』をリリースした。 また、直近では2022年1月19日に、KONAMIが『遊戯王 マスターデュエル』をリリース、1週間で400万ダウンロードを記録するなど、TCGの有名タイトルが相次いでスマートフォン向けにデジタル化され、好評を博している状況だ。
【お知らせ】
昨日1/27(木)より日本及び一部の国においてモバイル版のサービスを開始致しました。また、家庭用ゲーム機への配信開始から1週間で累計400万ダウンロードを突破致しました。
ありがとうございます!https://t.co/8qF2pD2w7v引き続き #遊戯王マスターデュエル をお楽しみください! pic.twitter.com/7ffG8ODnQG
— 【公式】遊戯王マスターデュエル (@YuGiOh_MD_INFO) January 27, 2022
筆者もTCGファンとして、『Shadowverse』や『MTG Arena』などがリリースされたときにはいち早くプレイしてきた。基本プレイ無料ということで、気軽に始められることはもちろん、TCGと比較してメリットの多さに驚いた記憶がある。
まず、時間を選ばず家でひとりで遊べるのだ。TCGは1人では遊べないので、カードショップで開かれる大会などに参加するか、友人と遊ぶのが一般的だ。しかし、DCGはPCやスマホでゲームを起動すれば、ランダムにマッチされる相手といつでも対戦することができる。
カードの持ち運びが不要なのも嬉しい。ひとたび大会に出るとなれば、デッキやサイコロ、メモ帳など、ゲームをするのに必要なツールをすべてカバンに詰め込んで一日持ち歩くことになるが、これは結構な重量になる。一方、DCGに必要なのはスマートフォンだけだ。
また、アナログだと遊ぶのに手間がかかるようなルールでも、デジタルならば気軽に遊べることもある。たとえばマジックの「リミテッド」と呼ばれるルールがそうだ。リミテッドはあらかじめ用意したデッキではなく、その場で購入したカードパックを使って即席デッキを作って遊ぶのが基本だ。なかには6〜8人程度の人数が揃わないと遊べないルールもあり、筆者にはなかなか遊ぶ機会が無かった。しかし、DCGでは人数もかんたんに揃うし、パックを開けてカードをソートする手間も一瞬だ。
カードが安価なのも大きな魅力だ。TCGの強いカードは高値で取引されていることが多いため、一つのデッキを組むだけでも金銭的な負担が大きい。一方、DCGのカードは基本的に価値が一定だ。カードをリサイクルするようなシステムを活用すれば、ぐっと安価にゲームを楽しめる。
ここまで述べたように、DCGにはデジタルならではの利点が数多くあり、ゲームを楽しむ最高の環境が揃っている。しかし一方で、TCGプレイヤーである筆者からすると、アナログゲームの持つ「ゲームプレイ以外の面白さ」が失われているようにも感じるのだ。