『Shadowverse』にキャリアを捧げるeスポーツキャスター 友田一貴に聞く「カードゲーム実況の難しさ」

友田一貴に聞く、カードゲーム実況の難しさ

「友田さんみたいな実況者になりたいです!」

ーー実況中に意識していることを1つ挙げるとしたら何でしょうか。ここ最近の友田さんは「選手が“運ゲー”で勝ったような見え方」にならないように、丁寧に言葉でフォローされているように思えます。

友田:目の付け所がすごいですね! これは他ではあまり話していないことなのですが。イベントでサイン会をしたときとかに「自分も友田さんに憧れて実況者を目指してるんです!何かアドバイスください!」って声をかけてくれる人がいるんです。

 その時、僕が必ず答えるのは「選手が凄く見えるような実況をすることだよ」です。僕のなかで意識しているのは「いま戦っている選手のすごさをいかに表現するか」です。最近は「実況者がすごく見えるにはどうすれば良いか」みたいな方向性のアドバイスを求められることが増えてきました。それは良くないことで、自分をすごく見せようとすると、事前に調べてきた情報ばかりを喋ったり、考えてきたカッコイイ台詞を使おうとしたり、「自分はこのゲームについて、こんなに知識があるんですよ!」みたいな実況になってしまう。

 なので、実況者を目指している子たちには「実況の仕事として、何を大事にしないといけないか、そこを履き違えちゃいけないよ?」という話はするようにしています。「運で勝ったような見え方」にさせないのもそうですが「選手がすごいことをやったんだ」ということが見る側に伝わることを心掛けています。

ーー実況者はあくまで黒子であると。

友田:そうですね。目立とうとしないこと。(自然な実況ができるよう)台詞を考えてくるようなことはせず、その場で思いついたことを話すようにしていますね。「MAXヘクター!!!」とかは若干、視聴者から求められているセリフでもあるので、それは意図的に使うこともありますが(笑)。絶対に多用しないようにしてますね。

「空気が読めない人」は実況者に向いていない

ーー実況者に向いている人と向いていない人をあげるとしたらいかがでしょうか。

友田:あまり「向いている」or「向いていない」の話はしたくないですが、空気を読めない人は(実況者として)難しいと思います。

 視聴者が求めていること、運営が求めていること、解説やゲストの方が求めていること、そして何より、戦っている選手が言ってほしい言葉。これらを全て満たしながら進行するのは空気を読む力がないとできません。

 具体的には、「この発言は運営側は嫌がりそうだけど視聴者から求められている。ではギリギリを攻めた発言をしよう」とか「この選手は今のプレイについて、ここを触れてほしいだろうな、逆にここは触れないでほしいだろうな」「ゲストの人が退屈そうだから、何か喋れそうな話を振ってみよう」「解説はいまこういうパスをほしがっているな」など、演者さんの表情や現場の空気を察して判断します。

ーーそこまで突き詰めると、実況者というかファシリテーターの域ですね。現場を預かる実況者にはそのレベルが求められているということなのでしょうか。

友田:はい。そこまでやることが良い実況に繋がると思っています。あとは運営側が求めていることも、なるべく声に出すようにしています。例えば、番組中に視聴者に向けて「この配信を拡散してほしい」といったメッセージを積極的に呼びかける。(そういったメッセージは)運営側がテロップで表示させにくい情報なのですが、僕の判断で発言するのであれば何のリスクもないです。本当に細かい気遣いですが、一言添えるだけで運営さんに大きく貢献できるはずです。

 逆に番組中に何かのトラブルがあったときにも、「大変失礼いたしました!」と謝罪一辺倒になるのではなく、状況やトラブルの内容次第では、笑いに昇華して、うまく場を繋ぐ判断も必要です。慌てふためいて大事件であるかのような雰囲気を出すのではなく、現場でうまく処理して緩和する。それは運営側が求めていることでもあると思うので。

ーー各方面への配慮と対応力が凄まじいです。実況者に必要なものが「空気を読む力」というのが意外でした。この記事が公開されると、安易な気持ちでeスポーツ実況者を目指す人が減りそうです(笑)

友田:(笑)。実況に関する知識や技術は後からでも身につけられますが、空気を読む力を後から身につけるのは難しい気がします。その人に備わっている人間力ともいえるのかもしれません。

流行するデジタルカードゲームの魅力と課題 手軽に始められる一方で”ガチ勢”優遇の傾向強し?

近ごろ、デジタル・カードゲーム(以下、DCG)が大流行している。スマホでいつでもどこでも遊べるという手軽さや、多くのタイトルが基…

© Cygames, Inc.

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる