『Shadowverse』のアナログTCG化は成功するか? 2つの観点から可能性を探る
2022年1月6日、ブシロードとCygamesは、『Shadowverse』のリアルカードゲーム化企画『Shadowverse EVOLVE(シャドウバース エボルヴ)』の概要を明らかにした。発表によると、同タイトルは企画・開発をCygamesが、製造・販売・運営をブシロードが行い、2022年4月より商品展開がスタートする予定だという。
国内では、デジタルTCGの王道として君臨する『Shadowverse』。5年目の新たな展開は、成功を収めるだろうか。ジャンル内の勢力図、市場の動向から『Shadowverse EVOLVE』成功の可能性を探る。
国内デジタルTCGの王道タイトル『Shadowverse』
『Shadowverse』は、Cygames開発・運営のデジタルTCG(トレーディングカードゲーム)だ。2016年、Android/iOS向けとしてローンチを迎えて以降、これまでにブラウザ版(DMM GAMES)、Steam版がリリースされている。おなじくCygames開発・運営の人気タイトル『進撃のバハムート』の世界観をベースとしており、ゲーム内には同作のイラストをモチーフにしたカードが多数登場する。競技性の高いジャンルに属するタイトルであることから、当初からeスポーツ化を念頭に置いて開発されており、先行体験会の会場には、東京・秋葉原にある同競技の専用施設『e-sports SQUARE』が選ばれた。そうした背景もあり、サービス開始直後から国内有数のeスポーツ大会・RAGEに正式種目として採用され、国内では現在に至るまで、主要な競技タイトルのひとつとして親しまれ続けている。直近の世界大会『SHADOWVERSE WORLD GRAND PRIX 2021』における優勝賞金は1億5,000万円。これは、国内における最高額だ(※)。2020年にはTVアニメ化・ゲーム化もされるなど、メディアミックスも加速。ローンチから5年以上を経て、国内のTCGシーンを牽引するまでに成長したタイトルが『Shadowverse』である。
※国内企業によるタイトルであることから、世界大会は例年、日本で開催されている。
前例のない“デジタルTCGのアナログ化”
このようにデジタルTCGとして一定の地位を確立するに至った『Shadowverse』。満を持してのアナログ化には、どの程度成功の可能性が秘められているのだろうか。
近年、アナログとデジタルの境界が曖昧となりつつあるTCGのジャンルだが、これまで多く見られた融合のケースでは、「アナログ→デジタル」という方向性が一般的だった。たとえば国内では、同ジャンル浸透の立役者とも言える『遊☆戯☆王オフィシャルカードゲーム』(1999年発売開始)や、近年同ジャンルの話題を独占する『ポケモンカードゲーム』(1996年発売開始)がそれぞれ、『遊戯王マスターデュエル』『Pokemon Trading Card Game Live』として、デジタル化への歩みを本格的に進めている。海外では、世界初のTCGとも言われる『Magic:The Gathering(マジック:ザ・ギャザリング)』(1993年発売開始)が、『Magic:The Gathering Arena』として、2019年9月にデジタル化を果たした。
一方、上記シリーズたちと比較すると、まだ歴史の浅いデジタルをルーツとするTCGからアナログへと融合した例は少ない。もちろんその背景には、「主に利便性の面で優れるデジタルから、体験重視のアナログに回帰する必要性がない」など、さまざまな理由があるだろうが、境界が曖昧となりつつあるTCGのジャンルにおいて、「デジタル→アナログ」のモデルケースがほぼ0に近いという状況は、特筆しておくべき点だろう。『Shadowverse』の開発にも影響を与えているであろう、デジタル発TCGの最初の成功例『Hearthstone(ハースストーン)』(2014年サービス開始)でさえ、アナログ化の噂は一切ない。こうした現状を踏まえると、『Shadowverse』のリアルカードゲーム化は、どちらに転ぶかわからない、先駆的な挑戦とも言えるのではないだろうか。