俳優・濱田龍臣、憧れの『ウルトラマン』を演じて変わった“役者としての自分”と、ゲーマーとしての“素の自分”

濱田龍臣の“役者としての自分”と“素の自分”

 いまや、だれもがガジェットを使いこなす時代。スマートフォンを使って情報を取り入れ、SNSで発信するなど、新しいテクノロジーをいち早く生活に取り入れてきた世代のクリエイターたちは、どのような感覚でモノを選び、創造しているのだろうか。インタビュー連載「わたしたちのガジェット」では、さまざまな分野で活躍するクリエイターの、ガジェットやデバイス、ツールを活用した創作活動にフォーカスする。

 第二回は、俳優の濱田龍臣。子役からテレビドラマや映画で活躍する役者でありながら、自身が“最年少ウルトラマン”を演じた『ウルトラシリーズ』のファンであり、オフはゲームばかりするゲーマーの一面も持つ。

 憧れのウルトラマンを演じることで見えた役者像があるという濱田は、役者と素の自分をどのように切り替えているのか。愛用しているゲームを含めたガジェットへのこだわりとともに語ってもらった。(山本勇磨)

濱田龍臣にとっての『ウルトラマン』“勝手にウルトラマンと二人三脚している感じ”

――濱田さんは2017年放送の『ウルトラマンジード』では、“最年少ウルトラマン”として主人公・朝倉リクを演じましたが、今作『ウルトラマントリガー』も観られましたか?

濱田龍臣
濱田龍臣

濱田龍臣(以下、濱田):トリガーもシリーズ全話観ましたし、今年の「ウルトラヒーローズEXPO」にも出演させていただきました。

――大人になってから観るウルトラマンってすごく面白くて、実はすごく大人向けな特撮作品だなと思うのですが、濱田さんはどうでしたか?

濱田:そうですね、幅広い年齢層に向けたメッセージが込められた作品は、最近とくに増えてきているように思います。

――濱田さんは小さいころから『ウルトラシリーズ』を観ていると思いますが、そういった大人向けの面白さってどこで気付くのでしょう。

濱田:やっぱり作品を見返すタイミングですかね。子どものころは「怪獣を倒しているウルトラマンかっこいい!」と思って観ていたのが、思春期を経て知識がついた状態で改めて観るとそういう深いメッセージに気付きますよね。

 作品を見返すと、当時ウルトラマンを観ていた自分を思い出すじゃないですか。そうやって作品を通して、昔と今の自分を比べられるのがウルトラシリーズの好きなところですね。ウルトラマンは基本的に光であって、強くてかっこいいというのが変わってないからこそ分かる自分の変化はあるかもしれませんね。

――最近、ウルトラマンについて何か良かったトピックはありましたか?

濱田:『ウルトラマンZ』(2020年放送)がすごく素敵だったなと思いますね。Zは撮影時期がちょうどこのご時世になったタイミングだったんですが、そんな中でウルトラシリーズが新しい一歩を踏み出したと感じる作品でした。

 『ウルトラマンゼロ』という過去作品のウルトラマンが深く関わっているところ、青柳尊哉さんが演じられる「ヘビクラ隊長」は『ウルトラマンオーブ』(2016年放送)の敵役「ジャグラスジャグラー」として出演されていたなど、過去作品との繋げ方がすごく素敵でゼットは全25話の中ですごく爽快感がありましたね。

 爽快感ってウルトラシリーズにとってすごく大切で、作品を観ていて「ああ! ウルトラマンだ!」と思わせてくれるというか。Zって近年のウルトラマンで特にそれが強かったと思います。

 たとえば、防衛チーム「ストレイジ」に所属する主人公のハルキは、防衛チームのなかで分からないことがあってもとにかく「オッス」と受け流すキャラクターなんですが、「あっ、主人公が分かっていないから、別に自分も分からなくてもいいや」と思わせてくれる。そういうキャラクター作りもすごく爽快感があって新しかったですね。

濱田龍臣

――お話を聞いていて、プライベートでも俳優のお仕事でもウルトラシリーズが大きく影響していると感じるのですが、濱田さんにとってウルトラマンはどういう存在ですか?

濱田:幼稚園のころからウルトラマンになりたいなって思っていたし、子役のころも現場にソフビ(ソフトビニール製の人形)を持って行ったりして、当たり前のように身近にいた存在でした。

 仕事面では、17歳のときに主人公/ウルトラマンとして作品を提供する側になって、「じゃあどうしたらあのときの自分のように、子どもたちを笑顔にさせられるだろうか?」という考え方になったというか。本当に「朝倉リク(『ウルトラマンジード』の変身者/主人公)」と一緒に、役者として、人間として成長しよう!とすごく思いました。勝手にウルトラマンと二人三脚している感じですね。

素の自分と、演じる自分

濱田龍臣

――濱田さんは俳優であり、特撮ファンであり、ゲームファンとしてもよく紹介されていますね。時間があったら何をすることが多いですか?

濱田:時間があったらゲームをすることが多いですね。ちょっと前だとポケモンのダイパリメイク(『ポケットモンスター ブリリアントダイヤモンド・シャイニングパール』)をやっていて、どのポケモンを育成しようかなとか。『Apex Legends』をよくやっていたときは、どういう立ち回りがいいのかとか、『モンスターハンター』のときは素材があと何個必要なんだっけな、とか。

 ゲームはすごくストレス発散になったり、仕事がない日の大切なコミュニティツールであったりするんですよ。最近も一緒にゲームをする人が何人か居て、それはTwitterで出会った人だったり、Discordの中で知り合った人だったり。もはやゲームを楽しむために仕事を頑張っていると言っても過言ではないですね。

濱田龍臣のガジェット
Nintendo Switchではポケモンやモンスターハンターなどをプレイ。スマホでは『原神』をよく遊んでいるそう。

――かなり切り分けて考えているんですね。ゲームをするプライベートな自分と俳優業をしている自分は。

濱田:もう全然違いますね。

――たとえばPS4のゲーム『デス・ストランディング』は俳優がゲームのキャラクターを演じていますが、そういったお仕事はどうなんですか?

濱田:そういったお仕事であればいいかもしれませんね。「ゲームの登場人物」という役になれるわけで。

――やっぱり演じたいっていうのが一つの軸になっているんですね。

濱田:そうだと思います。素の自分に自信がないのかもしれないですね。例えばバラエティー番組とかこういう取材とかはいつも緊張しながらやっていますし。

――濱田さんにとって「演じる」ことは、素の濱田龍臣ではない者として仕事をする方法になっているんですね。

濱田龍臣

濱田:テレビドラマや映画って脚本や原作があるので、それを書いた方や監督の伝えたいことを実現するためのものだと思っています。

 だから、演じることで自分で自分を俯瞰して見ているんだと思います。俯瞰で見ている側の自分は、もう少し冷静に立ち振る舞っていれるというか。

――何かを演じているときの濱田龍臣と素の濱田龍臣がいて、そこは……。

濱田:たぶん交わらないと思うんですよ。素のほうはめちゃくちゃゲームも好きだし、ウルトラマンも観るけど、人前で話すのはそんなに得意じゃないなみたいな。

――なるほど。先ほどの話に戻りますが、ウルトラマンを演じていたときはその構図が歪(いびつ)ではなかったですか?

濱田:はい、そうなんですよ。そもそも演技をしながら自分を俯瞰して見られるようになったのも『ウルトラマンジード』で主人公を演じてからだと思います。

 僕が子役だったころは、カメラの前でセリフが言えることが価値とされていたこともあり、僕自身、お芝居というものが何なのか分かっていなかった部分が多少はありました。それが小学校高学年から中学校になるにつれてだんだん自分の仕事を理解して、高校生になって「僕はこの仕事をこれからも続けるのかな?」なんて思い始めるわけですが、そんなころにウルトラマンの役をいただいてから、演技で自分っぽさを出せるようになっていきましたね。

――それはごくごく自然にできたものなんですか?

濱田:あれはすごく自然だったなと思いますね。やっぱり、ウルトラ作品のなかで成長していく主人公を観て自分も育ってきたし、勝手にウルトラマンの主人公と自分は似ていると思い込めたから、考えすぎず演じることができましたね。

 ウルトラマンジードの役・朝倉リクだからこそ許された濱田龍臣らしさを肌で感じてから、他の役でも自分らしい演技を俯瞰して見れるようになりました。自分をある種の“役者”という道具として、舞台装置として、観客の心を動かすためにはこうするべきだよね、という冷静さが出てきたんじゃないかなと思います。

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