雨はゲーム体験をどう変える? 解像度を上げるための4つのアプローチ

雨はゲーム体験をどう変える?

おわりに:変わり続けるための雨

 ゲームにおける雨がいかに私たちのプレイ経験に影響を与えているかをさまざまな切り口からみてきたが、現在雨をもっともリアルに再現しているメディアはおそらく映画だ。場所はかぎられるが、4DXを導入した一部の映画館では雨の場面で実際に水が噴射される。

中川コロナワールドの4DX紹介動画

 アーケードならともかく、現時点では一般家庭でここまでの再現は難しい。しかしたとえば匂いにかんしては、すでにVRで試験的な実装が始まっている(※12)。温度を伝えるデバイス(※13)などと併用すれば、いずれ実際の雨にうたれるのと変わりない体験ができるようになるかもしれない。

 あるいは月や核シェルターに移住して雨のない世界が訪れるほうが先かもしれないが、いずれにしても当面はそれと共存する日々が続くだろう。ならばたまにはそのめぐみに感謝し、黒や赤の水滴におびえ、新しい自分に変身しつつも、その音がはたして幻聴ではないかと疑ってみる。そうやって感じる雨の解像度を上げていくのに、ゲームはちょうどいい。現実であろうとフィクションであろうと同じ雨に二度うたれることはできず、それは常に何かへと変わり続ける試み、生成変化の契機なのだ。

記事内でとりあげたゲームリスト(国内発売年順)

『SUPER DONKEY KONG』(任天堂/1994年発売)
『三國志5』(光栄/1995年発売)
『BIO HAZARD』(カプコン/1996年発売)
『FINAL FANTASY 7』(スクウェア/1997年発売)
『リアルサウンド~風のリグレット~』(ワープ/1997年発売)
『提督の決断4』(光栄/2001年発売)
『どうぶつの森』(任天堂/2001年発売)
『かまいたちの夜2 監獄島のわらべ唄』(チュンソフト/2002年発売)
『grand theft auto 3』(ロックスター・ゲームス/国内版は2003年発売)
『SIREN』(ソニー・コンピュータエンタテインメント/2003年発売)
『どうぶつの森e+』(任天堂/2003年発売)
『METAL GEAR SOLID 3 SNAKE EATER』(コナミ/2004年発売)
『絶体絶命都市 2 -凍てついた記憶たち-』(アイレム/2006年発売)
『HEAVY RAIN −心の軋むとき−』(ソニー・コンピュータエンターテインメント/2010年
発売)
『ポケットモンスターX・Y』(任天堂/2013年発売)
『rain』(ソニー・コンピュータエンタテインメント/2013年発売)
『Rain World』(Videocult/2017年発売)
『DEATH STRANDING』(コジマプロダクション/2019年発売)

〈Source〉
※1 松村栄子『僕はかぐや姫』(1993年/福武書店)、P88
※2 総務省統計局によると、昭和56年~平成22年の全国の平均年間降水量は7月がもっとも多く、ついで6月、9月と続く。ただし都道府県庁所在地のうち、関東地方や太平洋側を中心に17都道県は9月に月間最多降水量を記録している(総務省統計局、2010、降水量(平年値))。
※3 https://twitter.com/cha_bo39/status/1426883949133918213?s=21
※4 画像は以下のリンク先で確認可能。歌川広重『名所江戸百景 大はしあたけの夕立』(1857年)東京富士美術館
※5 こちらもリンク先で画像の確認が可能。Turner, Joseph Mallord William. Rain, Steam, and Speed - The Great Western Railway. The National Gallery(1844年)
※6 Barratt, Charlie. “The evolution of rain.” GamesRader+(2010年) 本稿の最後で今回とりあげたタイトルをリスト化しているが、そちらは1994〜2019年と、ちょうど10年ずれた四半世紀の歴史を辿っている。二つの記事はリニアにつながるわけではないものの、読みくらべることでゲーム内の雨の変遷がより立体的に理解できるだろう。
※7 https://mediaarts-db.bunka.go.jp/game
※8 officialマル秘ゲーム、2021「ボクと、雨と、ゲームと。」
※9 ただし移植版であるドリームキャスト版(1999年発売)では、イメージイラストが追加されている。
※10 ファミ通書籍編集部『リアルサウンド「風のリグレット」公式ガイドブック』(1997年/アスペクト)、P96
※11  同書、P76
※12  中村大輔「臨場感がケタ違い!匂いの出る次世代VRデバイスとは? 話題のVAQSO VRを作った開発者に会いに行ってみた」(2017年/EMIRA)
※13  村田朱梨「ドラゴンの炎でゲームコントローラーが熱く 「温度」「痛み」再現するデバイス」(2017年/ITmedia NEWS)

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