XRライブの鍵は「自由度の取捨選択」? 初音ミク、4s4kiなどのライブ演出事例から考える

XRライブの鍵は「自由度の取捨選択」?

としくに:でね、huezの中では僕がそういう、舞台監督とか演出を司るポジションに立つし、お互いに暗黙の了解もあるからいけるんですけど、多分外の人と一緒にやる場合、正直な話、相手の方はやってられないと思います(笑)。例えば、エンジニアが一週間かけて作ったアセットを、本番当日に演出の都合で何個か削ったり、とかしなきゃいけなくなったりするわけです。で、バーチャルのデータなので、消すのはある程度できちゃうんですよね。例えば4s4kiさんのライブで、客席側に置いてあるでっかい仏像みたいなのがあったんですけど、カメラワーク的にどうしても僕の中で邪魔だったんですよ。で、「ごめん、この仏像小さくしてもらっていい?」って言ったんです。リアルでは不可能ですよね。「美術さんが作ってくれたあれ、ちょっと邪魔だから小さくしてもらっていいですか」って。

 だから、リアルでは絶対にできないような解決方法でライブを成立させることができるともいえるんだけれど、同時にやっぱり、あまりにリアルとかけ離れたことをやるとライブ感がなくなってしまう。例えばライブ用に4s4kiさんが分身するっていうエフェクトを作ったんですが、これは本番前にカットしたんです。せっかく4s4kiさんが生でいるのに、分身するのは現実的にありえない。それをやった瞬間に突然データっぽく見えたんです。でも本人にグリッチかけるのはギリギリ平気だったんです。「グリッチはライブに組み込めそうだぞ、でも分身はダメだな」……っていうのを本番当日に見ながら調整している。これがおそらくXRライブの演出のしどころで、人によってさじ加減は変わると思います。

 だから、さっきの話に戻ると、外の人と大きなフェスをやる、というのは現状ではかなり大変です(笑)。

 もちろん、きちんと規模感を見て計画を立てれば近い将来できるとは思います。バーチャル空間でフェスをやる場合の、本当のフェスとの大きな違いとして、作ったバーチャル空間をセーブできるんです。

――仕込みの終わったステージを保存できるんですね。

としくに:そう。一度作ってしまえば、将来的にはコストを下げることができる。それに、単純にステージを作って保存できるのはもちろんなんだけれど、例えばアーティストのために作ったステージを保存しておいて、「あの空間でライブできます」みたいな売り方もできるかもしれない。

ayafuji:僕はVRChatをずっとやっているんですが、VRChatの中にはクラブカルチャーがあったり、アバターがグランドピアノに座ってピアノを弾いているんだけれど、中の人も実は手元で音楽を演奏していたり、というような事が起きている。VRChatって技術的にはUnityで動いているんですけど、僕らがXRライブで使っているのはUnreal Engine。VRChatには双方向の面白さがあるけれど、スペックや互換性にまつわる制約で、ライティングやパーティクル等のリソースに限界がある。対してXRライブには先程の制約がないので、PCのスペックをフルに使いながら人をクロマキーに入れて撮影して、バーチャル世界で描画できるので、ものすごく絵がきれいなんですね。今後はこの2つが合わさっていくんじゃないかな、っていう予想をしています。XRライブと、VRChatのようなSNSツール、それぞれの表現が歩み寄るような形で、人が自由に歩き回ったり、ライブを見たりできるようになる。空間のインタラクティビティ(双方向性)も上がっていくし、技術的にも洗練されていく。やがては双方向性と美麗さのグラデーションが生まれて、「どこで遊ぶか」を選べるようになっていくんじゃないかと。

ーーhuezさんはずっと「箱(会場)はハードウェアだ」とおっしゃっていましたが、まさにその「ハードウェア」の制限がなくなっていく、ということですね。

としくに:そうですね。作る側の目線で言えば、どこに視点をおいて戦うか、というのは今後考えなきゃいけなくなると思う。

ayafuji:ゲーム業界はインタラクティビティに強いので、それを強みに戦っていける。僕らが作っているXRライブはメタバース(アバターによる双方向コミュニケーションが可能な仮想世界の総称)によって発展していくでしょうし、メタバースを実現するためのテクノロジーも、美麗な絵をもっと追求していくと思います。

としくに:ゲームはこの30年くらいでぐっと自由度が上がって、今までは決められた狭いマップ上でしか動けなかったのに、今は「世界」があってそこで自由に行動できる。それによって面白くなった部分もあるけど、でも自由度って高ければ高いほどいいってわけでもないんですよね。

 エンタメにはいろんなレイヤーがあって、楽しみ方が全部違う。例えばVTuberって表情のパターンがあって、どの角度でも100%可愛い表情しか出ない。アーティスト側から見て、消してほしいっていう写真が基本的に無くなるんですよね。その良さはもちろんあるけれど、リアルのライブで人の表情が見えた方がうれしい人たちもいる、とか。

 お客さんは頭がいいので、場所を作ったらその中でいろんな遊び方を見つけてくれる。それはもうインターネットが始まったときからずっとそうですよね。ニコ生のコメント芸とかはまさにそれですし。むしろ作る側は、お客さんが「どんな自由度で楽しみたいのか」っていうのを考えて、ちゃんと狙って作ることが重要なのかなと思いますね。すごい自由なんだとしたらその自由が楽しめるような細かい仕掛けを置いておくべきだし、縛るんだったら縛ってる空間の中で没頭できるような要素がないといけないし。現実世界には暗黙の了解がたくさんあるけれど、バーチャル世界は無制限に縛れるし無制限に開放できちゃうので、そこの設定を見間違えると、たとえイベントを打ってもフェスをやってもつまらないものになってしまう。それって本当に「演出」の仕事だよなって。

 最近はゲームの知見も必要になってきたので、「人のライブ見て勉強しなきゃな」っていうのと同じ思想で「ゲームやんなきゃ」ってなりました。マインクラフトとフォートナイトやったりしましたもん。……ただ、まさか僕らで箱が作れるようになるとはね。ならないでほしかったですよ(笑)。広さも変えられるし、制限もなくなっちゃって。大変です(笑)。

■huez(ヒューズ)
2011年に東京で結成されたVisualise Artist/空間演出 ユニット。ステージや展示などの出力を制御し、ソフトウェアや機材の開発ま でを行う少数精鋭のチーム。レーザーやLEDなどの特殊照明、MVやガジェット、展示などでの空間演出を行う。近年では、バーチャル空間でのXRライブ演出なども行っている。メンバーはアート、演劇、照明、映像、 レーザー、プログラミングなど、様々なバックグラウンドをもつ。アーティストや オーガナイザーと同じ目線に立ち、その世界観や物語を重視する領域横断 的な演出を強みとする。渋都市株式会社所属。

■としくに
ステージディレクター・演出家。渋都市株式会社代表取締役市長。演劇領域での舞台監督や、メディアパフォーマンスの「インターネットおじさん」などの活動を経て、2016年に渋都市株式会社を設立し、代表取締役に就任。「笑い」と「ホラー」をテーマとして、既存の枠組みを越えた映像・空間演出のディレクションを手掛ける。

■ayafuji(アヤフジ)
1987年生, 2014年より家庭用コミュニケーションロボットやペットロ
ボットの開発に携わり、現在は空間演出ユニット・huezに所属。既存のデバイスのハックや大規模・多人数でのインタラクションを可能とするシステムなどを制作し、異なる人・物・事がコミュニケーションをする際のコンフリクトをテーマに作品を制作する。主な作品に「Infinite Scroll 」(HIGURE 17-15 cas, 世界制作のプロトタイプ, 2015)、「Sound and Vision - Moving Body -」(Tate Modern, Offprint London 2016) , 「#VISUALINERTIA」(Los Angels, Little big man Gallery, 2020)

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