Maison book girl、ワンマンの世界観はどう作られる? 空間演出ユニットhuezの『Solitude HOTEL』作り方解説(前編)

Maison book girl、ワンマンの世界観はどう作られる? 空間演出ユニットhuezの『Solitude HOTEL』作り方解説(前編)

 テクノロジーの進化に伴い発展するライブ演出。この潮流のなかで特異な存在感を示すのが、「フレームの変更」をコンセプトに掲げる空間演出ユニット・huez(ヒューズ)だ。ライブ演出における “光”の専門家が集まるユニットで、アーティストの物語に寄り添った演出を得意とする。

 本連載「3.5次元のライブ演出」ではhuezのメンバーを迎え、先端技術のその先にあるライブ体験の本質的なキー概念について、具体的な演出事例を交えながら語ってもらう。

 第3回となる今回は、ニューエイジ・ポップ・ユニット・Maison book girl(通称・ブクガ)のワンマンライブ「Solitude HOTEL」を取り上げ、同ライブの演出におけるhuezの役割について、ステージディレクター・演出家のとしくに氏、VJ・LJ・ステージエンジニアのYAVAO氏、レーザーデザインを中心に担当するYAMAGE氏に話を伺いながらその視座に迫っていく。

設定を理解して世界観を成立させる

ーー「Solitude HOTEL」におけるhuezのみなさんの役割と、ライブが生まれる流れについてお教え下さい。

としくに:前段として、ライブ演出におけるhuezの役割について話すと、例えばtofubeatsのワンマンでは照明・レーザー・映像・VJと、舞台装置を使った演出を全般に担当していて、昨年のCY8ERのワンマンのときはセットリストを含めた内容物にまでガッツリ干渉するレベルで演出を行っています。

 「Solitude HOTEL」の場合はtofubeatsの事例と近く、Maison book girl側の作りたいもの、ライブでやりたいことを僕らの技術でどうやって成立させるのか? という視点で演出を行っています。プロデューサーのサクライ(ケンタ)さんとメンバーのコショージ(メグミさん)に、うちのYAVAOも加わって、その3人で舞台演出についてのアイデアなんかを話し合うんですけど、僕はそこから一歩離れて「それが実現可能なのか」をジャッジするような立ち位置です。

YAVAO:僕はコショージさんとサクライさんが最初に持って来る「ストーリーと世界観」を見せてもらって、それに沿ったプランをお二人に提案して組んでいくような立ち位置です。考えられた世界観やストーリーを、具体的にどんなメディアを使ってどのようにステージ上に具体化するのかプランを提供するっていう。楽曲のセットリストを一緒に考えることもあります。当日のVJや映像のオペレーションも担当しています。

としくに:その後、3人の「あれをやってみたい」というアイデアに対して、それが実現出来るのかを僕がジャッジしたり、逆にアイデアが煮詰まっちゃうと、気づいたら最初に決めた設定から3人が外れてたりすることもあるんですよね。煮詰まりすぎてゲシュタルト崩壊しちゃったみたいな。そういうときに、客観的に見て「それ世界観的に合ってますか」というようなこともたまに言ったりする。3人の見ている世界観が全員ピッタリ合っているとも限らないので、そういうズレを見つけて落とし所を決めたりすることもあります。

 イメージとしては、ライブに楽曲のセットリストがあるのと同じように、huezの演出にもセットリストがあるというか。アーティストがセットリストを決め打ちで持ってきた場合には、僕らは僕らの使える機材や出来る演出でネタを集めてセットリストを考えるんです。たとえばこの曲では映像にフォーカスしよう、ここはレーザーを使おう、みたいな。huezの演出セットリストを組むときに、その内容物を決めてるのがヤバ(YAVAO)です。ブクガの場合は特にヤバが「世界観」に注意しながらネタを組んでいます。というのも、ブクガのワンマンライブは世界観が強固で、つまりその世界のルールというか、「設定」が細かいので、僕らはまずその設定を理解して、その中で「やってOKなこと」と「NGなこと」みたいな基準をある程度見つけていきました。

 あとはライブ当日、舞台で実際に手を動かす音響さん、照明さんや、舞台を仕切る舞台監督さんとのやり取りも僕がやります。ブクガのライブでは音と映像が完全に同期した素材なんかも使うので、音響さんとの細かいすり合わせが必要になるんですが、そういう裏方的なやり取りもそうですね。自分の作家性を出すというよりは、3人が作ろうとしている世界観を成立させることに尽力しています。

 あと、ウチで関わってるスタッフはYAMAGEですね。YAMAGEはかかわり方がちょっと違って、基本的にVJとかの演出はYAVAOがプランニングするんですけど、huezの武器というか、表現の一つとしてレーザーがあって、YAMAGEはレーザーの専門家なんです。

YAMAGE:曲と公演のテーマにもよるんですが、レーザーについては、YAVAOからもらったリクエストに応じて僕が製作しています。例えば「karma」のレーザー演出などは事前に作ったデータとその場で即興で作ったデータとか混ぜたりして作りました。

としくに:YAMAGEはレーザーで音を表現できるんです。「言選り」の演出なんかはそこが強く出ている部分ですね。加えてYAMAGEはもともと音楽自体が超好きな人なので、アーティストの文脈とか、ファンの気持ちとかを汲んだ演出を考えられるんですよね。僕やヤバはテクニカル的な視点で「この演出がハメやすい」とか考えてしまうところをYAMAGEはアーティストやファン目線に立って、「ここはあえて何もしないほうがいい」みたいな演出の取り方ができるので。

ーーhuezが初めて手がけたMaison book girlのワンマンライブが2017年12月28日に行われた「Solitude HOTEL 4F」ですよね。どのような経緯で演出を担当されたのでしょうか。

としくに:もともとはサクライさんと僕らに共通の知り合いがいて、その人が僕らを紹介してくれました。サクライさん側でも「4F」はかなり挑戦的で難解な脚本を使ったライブにしようと画策している中で、テクニカルの部分で手が回らないというような事情があり、僕らに声がかかりました。そのときは僕らも仕事をどんどん受けていく時期だったのでぜひ、ということで受けたんですが、「しょっぱなからすげー難解な曲が来たな」みたいな(笑)。

YAVAO:進捗もどういう感じで進めるか手探りだったから、プランシートをまとめて。世界観を解釈するところから毎回ライブの仕込みが始まるんですけど、4Fのときは何もかも初めてでしたし、サクライさんやコショージさんの中でもMaison book girlの世界観が明確に言語化されているわけじゃなかったので。

としくに:ストーリーを読み解くのが難解なのは全然いいんだけど、「こういうものを提示すれば分かる」っていう共通言語がないままスタートしてしまったので大変でした。huez側もブクガ側も「こういう言い回しならお互い伝わるぞ」みたいなことを作りながら掴んでいく作業の連続でした。実際ハコ入りした後でも、サクライさんは照明とか光にすごくこだわりを持っている人なんですが、メンバーが立ってゲネプロをやっている状態で、僕らの横でリクエストを出してくる。それを都度反映したり、実現できるかを相談していく……みたいな現場でした。

 そうした意思疎通の効率を上げるために、4F以降のワンマンではそれを踏まえて、照明とVJだけで舞台を照らしてサクライさんにシーンごとに確認してもらう、っていう方法をとっています。その横にコショージさんもいて、あ、私たちはこういう光の中に立ってるんだ、イメージと合ってるな、合ってないなっていう感覚も持ってもらって、その後メンバーを入れてゲネプロ、というような流れですね。効率もクオリティも上がるしイメージの共有も出来る。

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