「境遇を楽しむのは『ヤケクソにならない』ため」 空間演出ユニット・huezが振り返る2020年のライブ演出

「境遇を楽しむのは『ヤケクソにならない』ため」 空間演出ユニット・huezが振り返る2020年のライブ演出

 テクノロジーの進化に伴い発展するライブ演出。この潮流のなかで特異な存在感を示すのが、「フレームの変更」をコンセプトに掲げる空間演出ユニット・huez(ヒューズ)だ。ライブ演出における“ヴィジュアル”と “光”の専門家が集まるユニットで、アーティストの物語に寄り添った演出を得意とする。

 本連載「3.5次元のライブ演出」ではhuezのメンバーを迎え、先端技術のその先にあるライブ体験の本質的なキー概念について、具体的な演出事例を交えながら解き明かしていく。第5回となる今回は、huezが2020年に手掛けた数々の仕事を振り返りつつ、2021年の展望について語ってもらった。(白石倖介)

「演出」という区分がより明確化した年に

ーー前回(https://realsound.jp/tech/2020/06/post-568914.html)はでんぱ組.incの配信ライブについて伺いました。その後も多数の配信ライブに関わっているかと思いますが、huezにとって昨年はどのような年でしたか。

としくに:2020年前半(4月7日)に緊急事態宣言が発令されて、あの時期はアーティストもライブハウスも、業界全体が「どうやって配信ライブを成立させるのか」ということに悩んでいたタイミングで。幸いにもウチはコンセプトに「フレームの変更」を掲げているチームだったこともあり、結構声をかけていただきました。昨年後半は仕事の量も増え、規模も大きくなっていきましたね。

YAVAO:スタッフも増員しました。エンジニアが2人入り、TouchDesigner(※)に明るいスタッフが増えまして、今huezは9人かな。
※TouchDesigner:画像や映像の扱いが得意なプログラミングツール。huezのVJ・舞台演出において欠かせないソフトウェア。

――仕事も人員も拡大して、huezの名前も業界内で認知されてきたような状況だと思いますが、改めて昨年の代表的なお仕事を振り返っていければと思います。

としくに:まず外せないのは5月16日に開催された、でんぱ組.incの『THE FAMILY TOUR ONLINE』です。詳しい話は前回の記事を読んでいただければと思いますが、配信ライブでメンバーさんの姿以外の「見た目」をすべてウチで演出させてもらえた、というのはすごく貴重な経験でした。その後も6月は「神聖かまってちゃん×でんぱ組.inc」の2マン、7月には『THE FAMILY TOUR 2020 ONLINE 〜夏祭り編!!〜』の演出などを引き続き担当しています。

としくに:6月には『LOST DECADE – HOME EDITION supported by Budweiser』というのもありました。tofubeats、WILDPARTY、okadada、tomadなどが出るDJイベントで、僕らは配信スタッフを担当しました。ReeeznDというビデオディレクターの方がいらっしゃって、その方は以前CGで「バーチャルtomad」っていうtomadのバーチャルの姿を作った人なんですけど、今回のイベントではtomadはその姿でバーチャル出演して、会場にはおらず新潟から音を送ってくるという試みでした。さらにtomadが「CGに当たってるバーチャルの照明と実際の照明をリンクしたい」みたいなことを言い出して、huezの照明担当がReeeznDさんに信号を送って、リアルとバーチャルの照明を連携する 、みたいな作業をしました。バーチャルと実世界のリンクを作れた点で印象深いですね。

としくに:あと、変わり種でいうとDUSTCELLというユニットの有観客ライブで演出を担当しました。ボーカルのEMAとトラックメイカーのMisumiで構成された2人組ユニットなんですが、EMAさんが顔出しNGで、でも有観客で恵比寿リキッドルームなんで、見えちゃうじゃないですか。なので以前Maison book girlのライブでも使った透過LEDディスプレイを舞台の前面に置いて、EMAさんにはその後ろでアクトしてもらいました。LEDって発光するので、プロジェクションマッピングともまた違って、ビカビカに光る。常にメンバーの前に「映像」というレイヤーがあって、観客は2層のライブを観ていて、配信は配信でカメラワークとかを駆使して成立させていく。普通舞台上で「完全に顔が見えない」ってありえないんですけど、このライブではそれがアリで、シルエットが見えているくらいの演出感。このライブはほぼすべてYAVAOが仕込んでいたよね? 

YAVAO:そうですね。配信ライブの演出は最終的なアウトプットが映像に偏っているものですが、僕は映像のディレクションが苦手なので大変でした。今後の課題です。

としくに:配信はやっぱり映像のディレクションも大変だけど、ただでさえ面倒なところにウチはいろんなモノを混合してやるので、混ぜるさじ加減が今までのリアルライブとは全然違うんですよね。

 そういう微妙な塩梅の部分は結構僕が変わらずやらせてもらっているけど、メンバーの中でも得意分野が細分化していろんなチームを組めるようになっている、というのを去年は強く体感しましたし、昨年はhuezの中で「演出」っていう区分がより明確化した年だったと思います。

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