2021.08.13 12:00

小出恵介が4年ぶりの復帰にかけた思い　「役柄上“汚れ”であろうが気にならない」

文・取材＝田幸和歌子、写真＝服部健太郎

――小出さんご自身は2018年秋に渡米されましたが、なぜニューヨークを選んだのですか。

小出：アメリカに留学したいとはかねがね思っていましたが、ニューヨークは東京に似ていて街もコンパクトで、何かを学ぶには非常に良い街だと思っていたんです。ロサンゼルスは気候も良く、過ごしやすくて、ある意味ユルい印象があるのに比べ、ニューヨークは街のテンションも常に高く、ピッチが速く、僕に必要なものがあると感じたことが決め手でした。

――ニューヨークでは英語や演技の勉強をしながら、オーディションを受けていたそうですね。どんな学びや発見がありましたか。

小出：本格的に演技をしっかり学ぶということは、実は初めてだったんですよ。メソッドを含めて、演技というもののアカデミックな部分に初めて触れて、衝撃を受けて。発音の仕方からリズムのとり方、体の脱力の仕方、さらに感情の発露も6つくらいの流派があって、そういった根源的な表現法やルールを、分厚い本を読んで勉強するんです。さすがに「実際の現場ではそんな理屈は通用しねえよ」とか、トゥーマッチだと感じる部分もあるんですが、その一方でその通りだと感じること、初めて知ることも多く、自分が経験を重ねて学んできたことと違う道筋が示された思いでした。

――これまでを振り返ると、感覚的につかんだものも多かったのでしょうか。

小出：日本の芸能界では、多くは感覚的にやるしかないんですよ。仕事先行で、現場で監督に言われたことをピックアップして、自分の血肉にしていく。現場でつかんでいくしかない。こうして学んでみて、自分にたくさんクセがあったこともわかりましたし。

――クセというと？

小出：経験を重ねてくると、技術的な部分に頼っていく側面があると思うんです。でも、アメリカでは「クセがあると役が入ってこない」とすごく嫌がられ、削ぎ落すように言われるんです。演技のフォームのようなもので、自分では気づかないうちにしみついてしまっていたものを知る作業にもなりました。特に、経験を重ねて30代になり、中堅ベテラン俳優みたいに言われるようになると、うまく演じなきゃいけない、うまく思われなきゃいけないみたいな、新たなベクトルの縛りがある気がするんですね。でも、アメリカに行ったことによって、オーガニックな部分で役や相手と向き合うことが一番大事であり、真実なんじゃないかという結論に至ることができた気がします。

――休業期間に日本のドラマや映画なども配信でご覧になったそうですね。日本の芸能界を外からご覧になって、どんなことを感じましたか。

小出：僕が一緒に舞台などで共演して切磋琢磨してきた人たちが、この数年で一気に台頭してきたことが、刺激になりました。「このタイミングで出てくるんだ！」と感じましたし、30代の中盤から後半にかけては、俳優さんたちがまた一個ふるいにかけられる時期なんだなと強く思いましたね。

――30代中盤から後半に一気に台頭してきた方々に感じる共通点はありますか。

小出：しっかりと足場を固めて演技を磨き、地道に耐えてきた人たちが出てくる感じがしますよね。演技に真面目にコツコツ向き合っていたタイプというか。

――YouTubeチャンネルもスタートしましたが、どんな発信をしていきたいですか。

小出：YouTubeは今、一つの大きなエンタメになっていますが、なぜそんなに盛り上がっているのかが、中に入って、自分もやってみたらわかるのではないかと思ったんです。それに、僕は今後再びアメリカに行くので、アメリカでの生活もシェアしたいなと思っています。

――4年前と今とでは、心境も、渡米の目的も大きく異なりますね。

小出：今回は4年前とは違い、学ぶ期間は終えたと思っているので、より具体的に俳優活動に密接したことをしたい、積極的に仕事をしに行く思いで行ってきます。

■ABEMAオリジナルシリーズ新作ドラマ『酒癖50』　放送概要
放送チャンネル：ABEMA SPECIAL
放送URL： https://abema.tv/video/title/90-1537