「eスポーツの文脈が加わり広めやすくなった」 「ぷよぷよ」35周年、セガeスポーツ担当者&プロデューサーが語る変化

「ぷよぷよ」35周年の変化

 1991年の誕生から35年。「ぷよぷよ」は、世代を超えて愛され続けるパズルゲームとして、今もなお進化を続けている。

 eスポーツという概念が生まれる以前から大会文化を育んできた「ぷよぷよ」は、今年9月に開催されるアジア最大のスポーツの祭典「第20回アジア競技大会2026愛知・名古屋」で正式種目にも採用された。

 親子で楽しめるアットホームな雰囲気、小学生から大人まで切磋琢磨する競技シーン、そして世界へと広がるコミュニティ。「ぷよぷよ」のeスポーツは、他のタイトルとは一線を画す独自の文化を築き上げてきた。

 35周年という節目の年に、株式会社セガ グローバルeスポーツ推進部の正廣康伸氏と「ぷよぷよ」シリーズ総合プロデューサーの細山田水紀氏に大会運営の裏側、eスポーツ化による変化について聞いた。(小川翔太)

“みんな仲良く”がキャッチコピー「アットホームな大会運営の秘訣」

「ぷよぷよ」シリーズ総合プロデューサー  細山田水紀氏

──「ぷよぷよ」の大会を何度か取材していますが、いつも雰囲気の良さを感じています。親子での参加や小さなお子様の姿も多いですが、運営にあたって工夫されていることがあれば教えてください。

細山田水紀(以下、細山田):大会運営に関しては、「みんな仲良く」をキャッチコピーに、なるべくアットホームで誰でもウェルカムな雰囲気作りを心がけています。

 「ぷよぷよ」はそもそも全年齢に向けて作られているので、老若男女に遊んでもらえるというのが大前提としてあります。1991年に誕生したゲームですが、当時からコミュニティを大事にしてきました。ゲームセンターから始まり、オンライン対戦へと移り変わる中で、古参プレイヤーもいれば、最近では小学生の若手プレイヤーがレベルアップしてきているという状況です。

 ファミリーで遊んでくれる方も多いですし、認知度もセガのIPの中でもトップクラスに高いです。「コミュニケーションアクションパズルゲーム」と呼んでいますが、安心安全で親子でも遊べるというところを重要視しています。

 ゲーム制作でもそこを重視していて、世界的に有名なテトリスとコラボしたり、スマホゲームや各種グッズでのIPコラボをしたりしていますが、基本的に暴力的な要素や大人向けの内容は避けて、いろんな人が遊べるように開発しています。

 許諾についても、多くの人に遊んでもらえるようになるべくハードルを下げるようにしています。eスポーツ推進部門にはたくさんのイベント開催申請が来ていますが、できる限り応えられるようにしています。また、国スポ文化プログラム「全国都道府県対抗eスポーツ選手権」でも小学生部門を開催し、年少者の参加も奨励しています。

セガグローバルeスポーツ推進部  正廣康伸氏

──正廣さんは、運営や現場で意識されていることはありますか。

正廣康伸(以下、正廣):運営面で言えば、特別なことをやっているというよりは、一般的なことを丁寧にやっています。「ぷよぷよ」自体が年齢制限のないタイトルなので、誰でも見て、遊んで、楽しめる雰囲気作りを意識しています。もちろん、試合運営は選手の実力が存分に出せるよう公正に進行するように心がけています。

 現場では、とにかく皆さんに話しかけるようにしています。観戦されているファン、保護者、選手のみなさんにも会場にいらっしゃったら普通に話しかけて、距離を近くすることで大会運営にも生かしています。

 細山田はプロデューサーとして開発側とユーザー様をつないでいますが、運営側も同じようにIPメーカーとしてお話をして、相手のことをよく知るし、こちらのことも知ってもらう。そういう関係性を大切にしています。

 それぞれの保護者の方同士も、大会に集まることで交流の場が生まれて、横のつながりができているんです。「ぷよぷよ」という共通の趣味を軸に、みなさんが集まって仲良くなる。そういう場所作りを心がけています。

ぷよぷよが「eスポーツ」になったことで変わったこと・変わらないこと

──今年2月で「ぷよぷよ」はちょうど35周年を迎えられましたが、eスポーツという概念が生まれて徐々に広がっていく中で、競技として何か変化した部分はありますか。eスポーツという言葉がない時代から存在していた「ぷよぷよ」だからこその歴史の流れをお伺いしたく。

細山田:やっていること自体は、実はそんなに大きく変わっていないんです。ただ、「eスポーツ」という文脈が加わったことで、いろいろなことが進めやすくなったという面はあります。

 一般的には、ゲームのプロモーションというのは新作タイトルの宣伝費に紐づいて実施するのが普通です。株式会社コンパイル時代(※1)の1991年から、セガがアーケードゲームを出した1990年代も含めて、「ぷよぷよ」は、新タイトルの発売に直接結びつく宣伝だけでなく、大会やコミュニティづくりなど、シリーズ全体を支える活動にも継続的に投資してきた歴史があります 。コミュニティを意識した大会作りをずっと続けてきました。

 わかりやすい例で言うと、敬老の日にシルバー大会として60歳以上の方が参加できる大会を開催していました。今となると、誰でも思いつくことかもしれませんが、当時としてはかなり画期的なことだったと思います。

 セガに移ってからは、タイトルの宣伝費に紐づいた形での活動になっていたので、販売期にはできるけれどそれ以外の時には何かにかこつけて行わない限り実施が難しいという状況でした。しかしeスポーツという文脈が生まれたことで、タイトルの宣伝に紐づかない形で普及活動ができるようになりました。

 ある意味未来への投資になりますが、その投資を続けてどんどん広げていけるようになったんです。もちろん売上面や広がりの面で会社に貢献しなければいけない部分はありますが、社会貢献的な立ち位置の意味合いも持てるようになりました。

──eスポーツという枠組みができたことで、コミュニティ活動の成果は目に見える形で表れているのでしょうか。

細山田:実証としてはまだ明確になっていない部分もありますが、大会活動が新しいファンを呼び込んでいますし、世代交代が進む中で、小学生プレイヤーがトッププレイヤーになるという人の流れもうまくできています。通常、IPは新しいゲームを出さないと次の世代がなくなってしまうところを、コミュニティ活動によって継続できているんです。

 VTuberさんやインフルエンサーさんにプレイしてもらうことも大きいのですが、それもゲームの使用許諾が取りやすいという「ぷよぷよ」の特徴があるからこそです。許諾のハードルが低く、フットワークも軽い。これはeスポーツ推進部門やマーケティング、PR担当等や開発等が連携しあっている成果です。

 小学生プレイヤーが多いので、親御さんに対しても「ゲームばっかりやっているのはよくない」というイメージを払拭するきっかけになっていると思います。

 また、eスポーツという名前が世の中に浸透したことで、「競技として『ぷよぷよ』をやっている」と言えるようになりました。昔だったら「ゲームでしょ?」と反応されていたはずです。

 もちろん今でもゲームには変わりないんですが、世間から持たれる印象は変わったのではないでしょうか。

──グローバルeスポーツ推進部に所属されている正廣さんから見る変化についてはいかがでしょうか。

正廣:一番変わったのは、eスポーツだからこそ競技ルールを公平・公正にしなければいけなくなった点ですね。

 ゲーム大会の時代は、例えば何かトラブルがあった際には、その場にいる主催者が適宜判断していました。しかし、スポーツという文脈に入ってくると、あらかじめ「今回の大会はこういうルールです」という設定が必要になります。厳格なルールに則ってやっているわけなので、透明性が求められるようになりました。

「日本発祥の競技だけど世界中にトッププレイヤーが生まれるのが理想」

──35周年を迎えて、今後考えていらっしゃる展開や、「ぷよぷよ」をどういった存在にしていきたいか、eスポーツ業界に対してどういった存在でありたいかをお聞かせください。

細山田:「35周年記念“だいれんさ!”プロジェクト」として、さまざまなコラボレーション企画を検討しています。現役の「ぷよぷよ」のファンの方だけでなく、昔遊んでくれていた方に対しても、35周年を盛り上げる企画を順番に用意していて、先日の生放送で発表したのですが、今「10連鎖目」くらいまで進んでいます。

 できれば35周年ということで35個やりたいんですが……今後の発表も含めてお楽しみということで(笑)。

 eスポーツに関しては、セガの公式大会やプロ大会も継続予定です。

 また、今年9月に開催される「第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)」で、eスポーツが正式メダル競技として採用され、「ぷよぷよ」も競技タイトルに選ばれました。「GigaCrysta ぷよぷよグランプリ ファイナル」の上位プレイヤーは、3月21日に「ASIA espors EXPO 2026」で行われる日本代表候補選手最終選考競技会に進出し、そこで日本代表候補選手となります。

 アジア競技大会はアジアのナンバーワンを決める大会なので、日本のプレイヤーに1位になってほしいという思いはもちろんあります。

 とはいえ、「ぷよぷよ」は台湾や韓国をはじめ、さまざまなアジア地域で販売していて、それぞれの国や地域にトッププレイヤーがいらっしゃいます。そういった方々と切磋琢磨し合い、より競技人口を増やしていきたいというのが私たちの希望です。

※1:「ぷよぷよ」を開発したコンピューターゲームの制作会社。広島県で作品開発や移植、コンシューマゲーム機への移植やゲーム開発を行なっていた。

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