死を意識することは今を大切に生きること 高橋メアリージュン×塩原慶之氏が“生き活支援”アプリ『JAANE』に込める願い

「もし今日が人生の最期だったら、誰に何を伝えますか?」
そんな問いを日常に添える“生き活支援”アプリ『JAANE -じゃあね-』が、2月12日にローンチされた。本サービスは事前に残したメッセージを、ユーザーの安否が確認できなくなった際に大切な人へ届けるもの。従来の「終活」とは異なり、“死を意識することで現在の生き方を見つめ直す”ことを目的としている。
取締役CPRO(最高広報責任者)に就任したのは、俳優の高橋メアリージュン。若くして大切な人を失った経験を持つ彼女は、本サービスの思想に共感し参画を決意したという。
本稿では、高橋が語る後悔と向き合う体験、そして代表・塩原慶之が掲げる「生き活」という考え方を聞いた。「ありがとう」「ごめんね」「愛してる」――。人が最期に残したい言葉は、なぜこれほどシンプルなのか。(小池直也)
「終活」ではなく「生き活」を支援する理由
――高橋さんが『JAANE』のCPROに就任した経緯について教えていただけますか?
高橋メアリージュン(以下、高橋):もともと代表の塩原さんが私の英語の先生なんですよ。『JAANE』がまだアイデアの種のような状態のときから、「こんな世界をつくりたいんだ」というお話を聞いている段階から、ささやかにでも応援したい、大切な人たちに勧めたいと思っていました。まさかこういう形でオファーをいただけるとは。本当に光栄です。
塩原慶之(以下、塩原):構想段階のときから「こんなサービスを考えている」と話していましたが、すでにその時点でかなり共感していただいていたんです。ただ『JAANE』は人の生死に触れるような繊細な領域を扱うサービスなので「人生の揺らぎ」や「弱さ」を語れるような方でないと広報という役割は務まりにくいと考えていました。
その点で高橋さんはご自身の健康面、大切な方を失われた経験、ご家族のことなど話を聞けば聞くほど深いんですよ。ですので、私の方からお願いしました。
高橋:嬉しかったです。迷わずにお受けするとお返事させていただきました。

――塩原さんは、高橋さんにCPROとして、どのような活動を期待されています?
塩原:理念の翻訳者、あるいは体現者になってもらえたらと思います。私たちのサービスは「終活」というより「生き活」。「亡くなった後の整理を考える」というよりも、「今日が最期だったら」と考え、その上で「今」の行動を選択することに焦点を当てています。
高橋さんは、農業やヨガなど色々なことを実践されていますが、まさにそれが「生き活」ですよね。これからも、「人生は何歳からでも、いくらでも拡張できる」、ということを生き方で示していただきたいです。
高橋:まず自分にできることとしては、SNSを中心にPR活動をしていきたいと思っています。アプリはテスト段階から触らせてもらって、バケツリスト(人生でやってみたいことを登録する機能)も登録しました。メッセージはこれから作るんですけど、想像するだけでもうるっときます。人生の卒業がいつくるかは誰にもわからないので、それを考える瞬間に生き方が変わるなと。大切な人たちから伝えていきます。
――このサービスを着想したきっかけについても聞きたいです。
塩原:大きなきっかけのひとつは、親御さんなど大切な人に言えなかったことがあるまま亡くなられて、後悔している方が周囲で増えてきたことでした。「本当は伝えたかったことがあったのに」と胸に残り続けている人を何度も目の当たりにして、強く考えるようになりました。そしてもうひとつは、数年前にプライベートでバンジージャンプに挑戦したことです(笑)。飛ぶ直前がすごく怖かったんですけど、そのときに「もしも今日が人生最期の日になるのなら、あの人にあの言葉を伝えておけば良かった」と強く感じたんですね。普段は後回しにしていた想いが、あの数秒間で一気に浮かび上がりました。
その帰り道に突然死の件数を調べたら日本で1日約200名、年間約8万人、世界で約400万人という数字が出てきました。交通事故死や病死なども含めたらると、さらにその数は増えます。しかもそれは、高齢者だけの話ではありません。年齢に関係なく、ある日突然、訪れる現実です。その事実を前にしたとき、胸の奥で静かに凍るような感覚がありました。「遺書は年を重ねてから書くものだ」と、どこかで思い込んでいた自分が崩れ落ちたのです。「もしも今日が人生最期の日だとしたら」という問いは、未来の話ではなく、「今この瞬間の話なのだ」と気付きました。そういった体験が、きっかけとなっています。

――高橋さんが『JAANE』に共感された背景について、もし差し支えなければ伺ってもよろしいですか。
高橋:実はちょうど東京に出てきた、高校1年生の年に、地元で初恋をした方が急に亡くなってしまったんです。「大好きだよ」と表現することもできなかったし、夢に夢中で優しくもできていなかったので……。とても後悔しました。それが本当に心残りで、それから大切な人には「愛してる」とか「ありがとう」とちゃんと伝えていきたいなと。
それでも難しかったり、忘れることも多いんですけど、痛みとともに学ばせてもらいました。だから塩原さんから『JAANE』の話を教えていただいたとき、生きることを大切にできる方が増えたらいいなと感じたんです。
――YouTubeチャンネル「高橋メアリージュンのあさひがのぼるよる」のなかでも、瞑想を通して内面と向かい合っているとか。
高橋:そうですね。例えば恋愛でも昔は彼氏と喧嘩すると、意地を張り「もういい!」と部屋を出たりしてたんですよ。でも後で心がざわついて。「このまま死んだら、どうしよう?」と。やっぱり後悔する気がして「ごめん、やり直していい?」と電話して彼のもとへ戻り、仲直りしたこともありました。
塩原:毎朝「自分が生きている」ということを意識できるのは大きいと思うんですよ。『JAANE』は、(僕の場合はアプリ登録時に設定した毎朝8時に「今日も元気ですか?」といった感じの確認が入り、それに一定期間応答しないでいると、代理人に安否確認の通知が送られ、最終的に代理人が僕の逝去報告を行うとメッセージが発動する仕組みです。ですから、代理人を誰にするかと考えること自体も大切な時間になると思ってます。

――世界では、死後メッセージサービスがいくつかあるそうですが、日本ではまだまだ聞いたことがありません。そもそも遺言ってどれくらいの日本人が書いているのでしょう?
塩原:ある調査によれば、全国で約3.5%とのことです。ほとんどが60歳以上と言われています。つまり、人生の大半を生き終えてから、ようやく「もしも」に向き合っている。でも、本当にそれでいいのかと思ったりします。日本で類似のサービスが少ないのは、「終活」と謳っているからではないでしょうか。日本だと死について話してはいけない空気がありますが、それは違うと思うんです。
世界を見渡すと戦争や災害など、何があるかわからない時代。だから、これから先は死を前向きに語ったり、スマホで遺書を書く時代が主流になるんじゃないかなと。そんなことを数年前に考えて、生き活支援アプリとして形にしました。2030年までには世界で2000万人のユーザーを見込んでいます。それは単なるユーザー数ではなく、2000万人分の「伝えられた人生」です。
――亡くなった人の言葉が残ることによって、受け取る側の死生観も変わると思います?
塩原:数年前に家系図を作ったんです。なんと塩原家の祖先は中臣鎌足だということが分かりました。1300年以上前に生きていた命が、途切れることなく受け継がれ、その先端に今の自分がいる。自分が壮大な時間の流れの一員だと理解できる経験でした。その流れを自分で止めてはいけないと思いました。例えば、いつかひ孫が私の残したメッセージを読むかもしれない。データが残ることは単なる保存ではなく、時間の流れを見える化することであり、過去と未来が一本に繋がることです。「自分は孤独ではない」と気づくことで、彼らの生き方にもいい影響があると思ってます。
高橋:メッセージが残ることによって、お別れが寂しいだけではなく「一緒に生きてきたんだな」と感じられますよね。寂しさはありますが、出会えて一緒に過ごせたこと、それが宝物だったなと。妹が甥っ子たちの動画をよく撮っているのですが、映像が残るのも素敵だと思いますね。自分たちが愛されてきた映像が。
“言葉にする”ことが自分や大切な人にもたらす効果

――メッセージ機能だけでなく、人生で叶えたいことや挑戦したいことを書き出して、達成期日を設定する「バケツリスト機能」も実装されていますね。
塩原:小池さんが生きている間にやってみたいことはあります?
――何でもいいんですか? 「ビリー・アイリッシュにインタビューする」とか……?
高橋:おおー! いいですね!
塩原:それはぜひ書いてください。期限も書いておくといいと思います。人の脳には「RAS(網様体賦活系)」という働き(=アンテナが立つと情報が集まる感覚)があるので、書き出すことで関連する情報を自然と集めやすくなるため、周囲から「こういう繋がりがある」と声がかかったり、思いがけないチャンスが舞い込んだりする可能性が高まりますよ。
高橋:私のバケツリストは3つです。1つ目は「シロナガスクジラに会いに行くこと」で、もう資料請求してます(笑)。2つ目は仕事ですが「海外映画に出て賞を取って、目の前で家族も観ているなか、英語でスピーチすること」。
そして3つ目は「フィリピンのきれいな離島のビーチで、空が夕日でオレンジ色、バンドの生演奏もあって、家族全員が笑顔で食事をしている」。これは『JAANE』を知る前から毎晩思い浮かべていて、考えると涙が出ちゃいます。
塩原:こうやって大人が偶然出会い、30分ほどで夢を語り合えるのは本当に素敵なことですよね。場の空気も一気に前向きなりますし。今後は、同じ夢や目標を持つ人同士が繋がれる仕組みも考えています。『JAANE』は170カ国でダウンロードできるので、理論上はビリー・アイリッシュと繋がる可能性だってありますよ(笑)。
高橋:昔から、やりたいことを叶った想定でノートに書く習慣があるんです。例えば『るろうに剣心』で演じた駒形由美役も、映画化を知らない頃から「駒形由美役が決まりました! ありがとうございます!」と書いていたら半年後に決まりました。
他にも「半年後にヒュー・ジャックマンに会えました! ありがとうございます!」と書いたら、本当に半年後にヒュー・ジャックマンが来日したタイミングで開かれた記者会見に潜入できたりとか。直接的な会話はしてませんけどね(笑)。


――それは言葉に力があるという「言霊」のような話ですね。
高橋:言霊はあると思いますよ。誰かに思いを伝えるだけで伝染していくというか、叶いやすくなる感覚。言ったことを自己認識することで、叶えたい自分になる、みたいな。
塩原:あと世界中で、約200人にインタビューをして気付いたことがあります。それは、国籍も、文化も、宗教も違うのに、最後に自分の大切な人に伝えたい言葉は、ほとんどの方が、同じ3つの言葉に行き着いたのです。「ありがとう」「ごめんね」「愛してる」この3つ以外を挙げた人は、ほとんどいませんでした。人は、結局は関係性の中で生きているのだと痛感しました。世界がどれだけ複雑になっても、最後に残るのは、とてもシンプルな言葉なのかもしれません。
高橋:確かに。人としての入り口ですよね。それなのに大人になればなるほど、恥ずかしいと思ってしまう……。私が母に「I love you」と言えるようになったのも30代くらいですし。
今は母親が東京に来たときなど、寝る前に「お母さん、おやすみ、I love you」と言ってます。そうしたら「お姉ちゃん何かあったん? 優しいんやけど」と妹に電話したみたいですけど(笑)、喜んでいたみたいです。それを聞いた私も嬉しくて。言葉にすることで母とさらに仲良くなりました。
――とはいえ、日本人だとあまり日常的には言いませんね。夏目漱石の有名な「月がきれいですね」のエピソードにあるように、日本にはもともと「愛」という言葉はありませんでした。使われるようになったのは明治以降だと言われます。
塩原:「恋」と「愛」、「慈愛」は違うと言われますよね。恋は、どこか自分の感情が中心にあるもの。愛は、特定の誰かを大切に想う気持ち。でも、慈愛はもっと広くて、見返りを求めず、好き嫌いを超えて、ただ相手の幸せを願う心です。例えば、電車でお年寄りにそっと席を譲るような、相手が誰かは関係なく、自然と優しさを分け合うような。知らない人に思いやりを持って接する世界になったら嬉しいです。『JAANE』が目指しているのは、そんな「慈愛」が少しずつ広がっていく世界なんです。そんな小さな優しがの連鎖をつくるインフラでありたいと考えています。
――では、最後にこの『JAANE』をどう使ってほしいですか。
塩原:『JAANE』は「生き活支援」のサービスです。SNSで常に誰かの目を気にし、「どう見られるか」に意識が向きがちな今の時代だからこそ、「もし今日が最期だったら?」と立ち止まって考えてみて欲しいのです。それは、暗い発想ではなく、自分らしさを取り戻すための問いです。
「一度「死」を擬似体験して、もう一度「生」に戻ってくる」そんな360度のバーチャル体験を提供できると思っています。死を意識することで、今この瞬間の価値が、くっきりと浮かび上がってきます。ですから、ちょっとくよくよしがちな方にこそ使っていただきたいです。視点が変わるだけで、悩みの重さは驚くほど変わります。もちろん今を元気に生きている方にとっても、人生をさらに楽しく面白く濃くするきっかけになると思います。
高橋:自分に嘘をついて生きると辛いので、一度きりの人生を楽しんでほしいです。後悔なく生きられる人が増えると、内側が平和になって外側も平和になると思うので、たくさんの方に使っていただいて、優しい世界になっていけばいいなと思います。

■“生き活支援”アプリ『JAANE -じゃあね-』

※機能は順次追加予定
利用料金:無料
ダウンロード方法: iOS アプリ版/App Store(iPhone)配信、Android アプリ版/GooglePlay 配信
対象機種: Android(Android OS ver.7 以降)
サービス開始日:2月12日
公式WEBサイト: https://jaane.net/




















