KREVAはなぜ音楽機材について積極的に発信する? 「音楽ができた瞬間の喜びを分け与えたい」

KREVAはなぜ音楽機材について積極的に発信する? 「音楽ができた瞬間の喜びを分け与えたい」

 音楽家の経歴やターニングポイントなどを使用機材や制作した楽曲とともに振り返る連載「音楽機材とテクノロジー」。第五回はKREVAに登場してもらった。

 TV出演の際に音楽機材の奥深さを熱く語ったり、自身のライブ『完全1人ツアー』では、機材を使った音作りの解説を合間に挟んだりと、機材とそれによって作られる楽曲の関連性を積極的に伝えてきた彼へのインタビュー。今回は、機材についての発信を行うようになった理由や、曲作りの方法、機材を使うにあたって大事にしていることなどについて、じっくりと語ってもらった。(編集部)

「偏った愛を真剣に語ってる人の話って面白い」

――KREVAさんはいつ頃からこのプライベートスタジオの環境で制作をしているんでしょう?

KREVA:2000年頃、KICK THE CAN CREWのときからここで録音しているので、20年近くになりますね。ヴォーカルブースの位置を変えたり、壁を張り替えてもらったり、改修工事はいろいろしてきたけれど、場所は変わってないです。このセットアップになったのは、2011年くらいだったと思います。

――この環境において、KREVAさんが日常の作業で触っている頻度が高いのは?

KREVA:やっぱりPro Toolsですね。スタジオに来ると、まずはPro Toolsを立ち上げます。最近はAbleton Liveの時も多いけど、まずはソフトを立ち上げて作り始める。で、必要な音があったらハードを用意する。機材で言うと、MACHINE(Native Instruments MASCHINE MK3)を使うことが多い。ただ、これだけで曲を作ろうというのは考えてなくて。NATIVE INSTRUMENTSのCEOのダニエル・ハーファーさんと対談させてもらった時にCEOも言ってたけど、MACHINEはプラグインとしての質が良くなって、使いやすくなってきている。だから最近はMACHINEをソフトの中で使うようになっている感じですね。 

――Pro ToolsのプラグインとしてMACHINEを使っている。

KREVA:そう。Pro Toolsの中にMACHINEを立ち上げることが多い。自分が欲しい音を呼び出すのにそうするのが一番速い感じかな。

――『完全1人ツアー』もそうでしたが、KREVAさんはミュージシャンの中でも機材をフィーチャーする意識がすごく強いですよね。なぜそういう発想が生まれたんでしょうか。

KREVA:きっかけはYouTubeで機材の使い方とかレビュー動画を観るようになったことで。ほんと、日常的によく見るんです。でも自分と同じような作り方を説明してるものがあまりなかったので、それをやってみたいなって気持ちが芽生えて。それをライブに転換した感じですね。もちろん動画で紹介してもよかったのかもしれないけど、それよりもっとエンターテイメントにしたほうがいいかなと思って。正直、機材のレビューとか使い方を紹介する動画って、ニッチな世界だから再生回数はそんなに多くないんです。

――その機材を使って制作する人だけが観る動画になってしまう。

KREVA:そうそう。こっちはガッツポーズ出るくらいのヤツもあるんだけど、やっぱり普通の人はその情報、要らないもんね(笑)。だから、そういう動画を作るよりはエンタテインメントとして人前でやってしまった方がいいかなと思ったんですよね。

――そういう機材解説系のYouTube動画って、日常的に観てるんですか?

KREVA:はい。もはや趣味みたいなところもありますね。「マイベストギターエフェクター」みたいな、自分に全然関係ないものも観たりする。ライムスターの宇多丸さんのラジオもそうなんだけど、偏った愛を真剣に語ってる人の話って面白いじゃないですか。それに近いものを感じますね。ひたすらギターエフェクターを紹介している人を観て「これ、集めたくなっちゃったんだろうなあ」って(笑)。

――KREVAさんの中に、そういう機材に対しての追求精神が芽生えたのはいつ頃ですか?

KREVA:19歳の頃かな。MPC3000を買ってお父さんが持ってたレコードをサンプリングしてトラック作ってみた時に「俺も音楽できるじゃん!」っていう気持ちになったんですよね。それが本当に衝撃だった。サンプリングできる秒数とか、今考えたら制限はむちゃくちゃありましたけど。理解者がいなくても、自分一人でトラックを作ってラップすればそれが曲って言えるんだと思って。びっくりしました。楽器のできない人が音楽作れちゃう面白さがあった。それが忘れられなくて、ずっとそれを追いかけてる感じです。今も指一本でコードが弾けるヤツとか曲のキーを勝手に検知してくれるヤツとか大好きですね。率先して使いたい。 

KREVAの愛機、黒にカスタムペイントされたAKAIのMPC3000

――当時はMPC3000だけだったわけですよね。そこから徐々に機材が増えていったんでしょうか。

KREVA:そうですね。MPC4000になって、24bitの96khzで録れるようになった時の衝撃は大きかったな。それまで16bitしか知らなかった世界からすると「何だこれ?」と思った。

――シンセはどういうものを使ってました?

KREVA:TRITONですね。KICK THE CAN CREWの最初の方から使ってた。MIDIを知らなかったから、TRITONでコードやフレーズを一つ一つ鳴らしてMPC3000にサンプリングしてたんですよ。最初はTRITONとレコードからサンプルした音ばっかりでやってたけど、MPC4000になってから、FANTOMとかNord Rack 3をよく使ってましたね。そういえば3000って、波形が見れないんですよ。耳で追い詰めるしかない。だからその人によって絶妙なノリの違いが出たというのもあると思う。

KORGのTRITON-Rack

――サンプラー主体の音楽制作でなくなったのは?

KREVA:それは遅かったです。ROLANDのハードディスクレコーダーを導入して多重録音を始めたのもKICK THE CAN CREWの終わりくらいだし、Pro Toolsを使い始めたのもソロデビューしてからなんで。そこからだいぶ考え方が変わってきたって感じですかね。これだったらもうちょっと自分でクリエイティブなことができるし、録った音も使えるなって。キャンバスが広がった感じがしました。

――今、KREVAさんが音楽制作をするにあたって軸になっている機材はどれでしょうか?

KREVA:それはやっぱりMACHINEですね。ドラムに関してはMACHINE。追加音源のExpansion PACKも大体持ってるし、買える時は買う。そこがスタートのことが多いですね。あとはサブスク制のソフトシンセはよく使います。

Native InstrumentsのMASCHINE MK3

――サブスク制のシンセというのは?

KREVA:普通だったら6万円とか7万円とか払ってシンセを買うんですけど、毎月1000円とか1200円とか払うとずっと使い続けられるサービスがあって。新しい音とかフレーズがどんどん増えていくんですよ。結構みんな使ってるんじゃないかな。ちなみに、一つ教えたいサイトがあるんです。「Tracklib」というサイトなんだけど。

――これはどういうサイトなんですか?

KREVA:ここにネタがめちゃめちゃ入ってるんです。昔のソウルミュージックもあるし、たとえばシックみたいな有名どころのパラデータも入ってる。で、これが全部クリアランス(許諾)がとれてるんです。ただ個人で音を使うだけだったら何ドル、リリースするなら何ドルみたいに条件と金額が決まってる。なかなか面白いシステムだと思いますね。こういうのは大好き。今のところこれを使った自分の曲はないですけど。

――サンプル音源の世界も、5年前、10年前とは違ってきているんですね。

KREVA:全然違いますね。でも、いわゆるちょっと前の主流だったロイヤリティフリーのドラムとかベースのフレーズ集もあって。これはもうみんな使わなくなってるから、逆にそういうのも買ったりする。レコード屋さんで言うところの「床に置いてあるダンボール箱」状態になっているので。ディグする精神はこっちのほうで火がついてる感じがありますね。

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる