連載:音楽機材とテクノロジー(第五回)KREVA
KREVAはなぜ音楽機材について積極的に発信する? 「音楽ができた瞬間の喜びを分け与えたい」
「RCAピン独特のマジックもあるんじゃないか」
――「Tracklib」のように音源の世界でもどんどん新しいサービスが生まれているわけですけれど、プラグインの世界で起こってるイノベーションで興味あるのは?
KREVA:やっぱりAIですね。AIを駆使して、機械がその音にあった設定をしてくれる機能があるんですよ。たとえば録音したら「これはヴォーカルなんで、このEQで」みたいに設定してくれる。それはものすごく役立ってるし、積極的に使ってます。あとは勉強になる。「この音のこの部分はいらないんだ」って気付いたり。すごく助かってます。あとは、まだ使ってないけど、最近ではAIがメロディーを作ってくれるのもあるし、コード進行を提示してくれたりするのもある。そういうのはどんどん使ってみたいですね。そういうソフトを作ってる人たちも同じ気持ちの人が多い気がする。「こうやったらもっと簡単だな」って。どんどんいろんな便利なもの、面白いものが出てきてるし、それをシェアしたいですね。結局のところ、音楽ができた瞬間の何にも変えられない喜びをみんなに分け与えたいわけだから。
――スタジオのメインスピーカーは?
KREVA:musikelectronic geithainのRL901Kですね。2012年くらいに買ったのかな。これが来たら、もうOK。あとはいいでしょって。で、昔はFOSTEXを真ん中に置いてたんですけど、今はYAMAHAのNS-10Mを置いてます。NS-10Mのほうが、iPhoneとかMacbookで鳴らした感じに近いかなと。今って、やっぱりそうやって聴く人が多いじゃないですか。それでNS-10Mにしました。
――ヘッドホンはどれを使ってるんですか?
KREVA:AKG『Q701』クインシー・ジョーンズモデルが好きですね。つけ心地がとてもいい。ソニーのノイズキャンセリングヘッドホンのWH-1000XM2 も使ってます。あのヘッドホンで三浦大知の『球体』聴くと最高なんだよね。
――いろんな環境で音をチェックするわけですね。
KREVA:ただ、最近は、ミックスに関しては昔ほどはこだわりすぎてない気がする。前はCDの16Bit、44.1Khzっていうフィールドが決まってたけど、今はいろんな環境で聴かれるから。ミックスとかよりも元の音の方が大事かなと思って、わざとカセットテープからビートをサンプリングしてみたりもしてます。
――あえてそういうことをする、ということ?
KREVA:やっぱりレコードからサンプリングした音がみんな欲しいんですよ。それっぽい音にしてるのが多いんですけど、だいたい残念な感じ。レコードノイズを入れたりちょっとビット数を落としてそれっぽい音にしてる音源は沢山あるんですけど、たいてい良くないですね。あの音にはならない。結局、実際にレコードからサンプリングするしかない。
――何が違うんでしょうね。
KREVA:当時の頑張っていい音にしようとして結果的に出た粗さと、今の時代にわざと汚したモノとはやっぱり違うのかもしれない。あと、これは最近買ったんですけど、Roland SP 404も名器って言われてるんです。これで曲を作るやつがLAにも日本にも沢山います。これってRCAピンっていう赤と白のコードでつなぐんですよね。レコードもそう。ひょっとしたら、RCAピン独特のマジックもあるんじゃないかなと思う。独特の音の狭さというか。それをディスコミキサーに通したことで、出音が塊になる感じがいいのかもって思います。
――サブスクのシンセとかAIみたいな便利なものの追求と、カセットテープとかディスコミキサーみたいなアナログ感ある音の追求は、KREVAさんの中で両立しているものなんでしょうか。
KREVA:そうですね。どっちも楽しい。プラグインでこんなにドラムの音が変わるのかみたいなのもあるしね。AI搭載のEQプラグインの先駆けで言うとiZotopeのNeutronというのがあるんだけど、これも使う。このプリセットで同社のAlloy 2に入っている「ブレイクメーカー(break maker)」っていうのがあるんだけど、これはどんなドラムを通してもブレイクビーツみたいになる。オススメですね。たとえば俺の最新作だったら、「無煙狼煙」とかは、バンドのドラマー(白根佳尚)がスタジオで録った生ドラムをブレイクメーカーでブレイクビーツみたいにして、それをMPC4000の内蔵エフェクトをかけながらサンプリングして使っています。生ドラムは『成長の記録』を作っている時にビクターのスタジオで録らせてもらったので。それをサンプリングして使ったという。
――なるほど。信頼できるミュージシャンに弾いてもらったフレーズにプラグインのエフェクトを通して、さらにMPC4000でサンプリングしてる。
KREVA:そうやって自分流にしてるって感じですね。MPCでサンプリングしちゃったほうが早いし、結果オーライっていう。
――そういう延長線上で、たとえばアナログのカッティング技術が普及して、誰でもアナログレコードを出せるようになったら導入します?
KREVA:もちろん導入します。今もあるんですよ。ネットで1枚からプリントしてくれるサービスが。それを使えば、さっき言ったような、レコードからサンプリングしないと得られない音も作れるんじゃないかって。サンプリング用にカッティングするのはありですね。
――そうやって、いろんな手段でいい音を探し続けてる。
KREVA:俺が今からどれだけギターを練習したって布袋さんみたいに弾けるわけじゃないし、どれだけピアノを練習したってさかいゆうとかウチのバンドの柿崎さんみたいに弾けるわけじゃないからね。でも、上手いミュージシャンは、サンプルライブラリーからピアノのいいループをディグったりはしないと思うから(笑)。だったら俺は楽器練習したりするより、それを使うほうが楽しいかなって。
――考えたら、20年以上「このキックはいい音かどうか」ってチョイスし続けてるミュージシャンはなかなかいないと思います。
KREVA:ははははは。そうだよね。だいぶ偏愛的な感じだけど、楽しいですね。相変わらず。
(取材・文=柴那典/撮影=下屋敷和文/衣装協力 Iroquois(Iroquois HEADSHOP 03-3791-5033))
※記事初出時、一部ソフト名・プラグイン名に誤りがございました。訂正してお詫びいたします。
■ライブ情報
『15TH ANNIVERSARY YEAR KREVA CONCERT TOUR 2019-2020「敵がいない国」』
2月27日(木) 埼玉 三郷市文化会館 大ホール
2月29日(土) 東京 LINE CUBE SHIBUYA (渋谷公会堂)
3月14日(土) 愛知 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
3月27日(金) 広島 広島JMSアステールプラザ 大ホール
3月28日(土) 香川 サンポートホール高松・大ホール
4月04日(土) 鹿児島 鹿児島市民文化ホール 第二ホール
4月05日(日) 福岡 福岡市民会館
4月12日(日) 沖縄 沖縄市民会館
4月17日(金) 東京 江戸川区総合文化センター
4月18日(土) 栃木 宇都宮市文化会館
4月23日(木) 兵庫 加古川市民会館 大ホール
4月25日(土) 新潟 新潟りゅーとぴあ・劇場
5月06日(水・祝) 宮城 仙台電力ホール
5月09日(土) 青森 青森市民ホール
5月24日(日) 北海道 札幌市教育文化会館 大ホール
※アリーナ公演は後日発表
■作品情報
KREVA LIVE Blu-ray&DVD『NEW BEST ALBUM LIVE -成長の記録- at 日本武道館』
発売:2020年2月19日(水)
価格:Blu-ray ¥5,908 + 税
DVD ¥4,908 + 税
<収録内容>
1. 居場所 〜2019 Ver.〜
2. 王者の休日 〜2019 Ver.〜
3. アグレッシ部 〜2019 Ver.〜
4. ACE
5. パーティはIZUKO? 〜2019 Ver.〜
6. トランキライザー 〜2019 Ver.〜
7. 中盤戦
8. 基準 〜2019 Ver.〜
9. ストロングスタイル 〜2019 Ver.〜
10. 存在感 〜2019 Ver.〜
11. Under The Moon
12. I Wanna Know You 〜2019 Ver.〜
13. 成功 〜2019 Ver.〜
14. 希望の炎
15. KILA KILA 〜2019 Ver.〜
16. スタート 〜2019 Ver.〜
17. 瞬間speechless
18. かも 〜2019 Ver.〜
19. C’mon, Let’s go 〜2019 Ver.〜
20. イッサイガッサイ 〜2019 Ver.〜
21. 音色 〜2019 Ver.〜
22. Na Na Na 〜2019 Ver.〜
-Encore-
DJ (M☆A☆G☆I☆C ~ 愛してたの ~Sanzan feat. 増田有華 ~ あえてそこ (攻め込む) ~ Glory ~ 千% ~Keep It Up)
DJ (One feat. JQ from Nulbarich)
無煙狼煙
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