今の時代に『セルフブランディングメディア』が必要な理由とは? 関根康人×武藤千春が語り合う
『CHEERZ』や『mirroRliar』を手がけるフォッグ株式会社が「女性タレントのためのセルフブランディングメディア」として新たに始動させた『スクランブル』。
同メディアは、ライターとして登録している女性たちが、自分の「好き」を記事として発信して行くもので、E-girlsの一員として活動し、同グループ卒業後には自身でブランド「BLIXZY(ブライジー)」を立ち上げるなど活躍の場を広げる「武藤千春」や元「Seventeen」専属モデル「江夏詩織」、ハロプロOGの「夏焼雅」などが公式ライターとして参加している。
編集長の関根康人はスイーツ男子ブームの火付け役となったスイーツ専門サイト「スイーツ部」や、お酒の専門サイト「酒コミュ」など多数のテーマ特化型サイトの立ち上げを手掛けており、その時の経験から個人が持つ「好き」という想いの共感性と爆発力に注目し、この度『スクランブル』を立ち上げた。
今回のリアルサウンドテックでは編集長・関根康人とライターとして参加している武藤千春による対談を行い、今”セルフブランディングメディア”を立ち上げる意味や立ち上げの経緯、それそれが考える“セルフブランディング論”まで、多岐にわたる話が飛び出した。(編集部)
「見ている人の『自分ごと』にできるかどうかが重要」(武藤)
ーー今回立ち上がった「スクランブル」は、“セルフブランディングメディア”であると伺いました。なぜ、いまこのタイミングでそういった性質のメディアを立ち上げることになったのでしょうか。
関根康人(以下、関根):もともと、昨年の10月からNTT docomoさんと協業で『CHEERZ for スゴ得』というサービスを展開しておりました。それは基本的にアイドルさんやタレントさん、モデルさんが自分の好きなことをコラムとして発信する記事メディアです。いろんな方々に記事を書いていただいているなかで、もともとファンではないドコモユーザーにも支持されて、PVも伸びていったんですよ。
ーーそれは面白いですね。
関根:ジャンルもグルメやコスメ、お出かけ情報とバラバラだったんですけど、結果的に熱量のある文章がちゃんと読まれていたんです。そこで「自分の好きな情報をちゃんと発信する」ということの可能性を見出したのと同時に、『CHEERZ』のサービスを通じてアイドルの事務所さんとお話しする際に「個人でもお仕事がもらえるような武器が欲しい」という相談を受けることもあって、その2つが繋がって『スクランブル』の構想が浮かんだんです。
ーー意地悪な質問かもしれませんが、「好きなものを発信する」だけだと、個人のSNSでも十分可能な範囲ですよね。それをメディアとしてやろうと思った決め手は?
関根:SNSだと、やっぱり投稿が流れていってしまって、アーカイブにならないと思うんです。メディアが持っている強さの一つとして「アーカイブ性」があると考えていて。記事として溜まっていくことがひとつの武器になっていくので。たとえば、ビールについていつも書いている子がいたとして、それをTwitterで発信するのも良いんですが、メディアになって残っていくことで公式性が出て、「ビールに詳しいアイドル/モデル」という名刺代わりになっていくじゃないですか。とはいえメディアとしてカタい記事を書いてほしいわけではなく、ブログとコラムの中間くらいを狙っているんです。
ーーブログとコラムの中間、ですか。
関根:これもよく相談されるのですが「ブログに何を書いていいかわからなくて、更新が止まる」という。
ーーあるあるですね。ネタが尽きたり、モチベーションが上がらなかったり。
関根:ただ続けることを重視していたら何もない日記になってしまって、「だったらこれ、SNSでよくない?」と立ち戻ったりするみたいなんですよ。だから僕たちはそういうところからバックアップして、「日記」ではなく「情報」であり、自分の言葉やキャラクター性が出るものを描いてもらえれば、そこに鉱脈があるんじゃないかなと。
ーーなるほど。武藤さんにも伺いたいのですが、こうして個人が色々と発信できるようになった時代に、自己ブランディングの形はどういう変化をしてきていると思いますか?
武藤千春(以下、武藤):私はSNSで自分のこと、ブランドのことを発信しているのですが、自分の中では使い分けをすごく意識してます。Instagramは色んな人が見ていて楽しめるものを発信したり、Twitterはもう少し私に興味を持ってくれてる人が見てくださっているので、素の自分を出すようにしています。ブログはもっとコアなファンの方も多いので、さらに自分をさらけ出してたくさん言葉を綴る、という棲み分けですね。でも、結局それって全部「自分」が主軸で、自分ありきの発信なんです。なので『スクランブル』のようなメディアがあると、自分が主体ではなく紹介したいモノやコトを軸に、好きなことを発信しやすくなるのかなと思いました。
ーーそうすることでご自身のことも客観的に見られるし、見ている人も武藤さんという人を違う媒介を通して知ることができますもんね。オープンしたサイトを見てみると、武藤さんは五反田を紹介するという尖った切り口で面白いです。
武藤:なかなかSNSじゃ書けないですよね(笑)。私は10年ぐらい五反田に住んでいて、ボランティア活動や若者団体を仲間同士で作ったり、地域のお祭りに参加したり、ゴミ拾いをやったりしているんですが、それを自分のSNSで発信するのはどうなんだろう、と思っていたんです。今までの自分のカラーは崩したくないけど、地域の良い部分ももっと発信していきたいと思っていた中で今回のお話をいただいたので、五反田をテーマに記事を書くことにしたんです。
ーー今のお話が武藤さん個人のことだとして、周りの方を見ていて感じる変化などはありますか?
武藤:私の世代だと、Instagramが強い印象なのですが、最近いろんな人と話すと、SNS上だけじゃなくて、別の場所に強みが欲しいという話になることが多くて。もちろん、1つのツールに特化して、縦軸を伸ばしていくことも重要なんですけど、最近は横幅を広げたい人が増えて来たような気がします。
ーーそれはブランドのお仕事をしていても、同じように思いますか?
武藤:そうですね。雑誌に載せていただいたこともあるんですが、一番反響があったのは個人のSNS経由や、街で着ているのを見た時だったりして。そういう体験をしたことで、大きな広告として宣伝するよりは、もっと身近に感じられる写真やコーディネートなどを通じて、見ている人の「自分ごと」にできるかどうかが重要だなと感じました。
関根:その話はすごく面白いですね。今のメディアは、身近な感じも大事にしてもらえる要素の一つだと思うんですよ。きっちりとした記事も重要なんですけど、それよりは誰かの主観が入って“身近に感じられる”ほうが伸びる傾向がありますから。高級フレンチの記事よりコンビニの記事の方が読まれたり、そういった自分の手の届く、想像できるところには、共感が多く潜んでいるような気がします。