『Tシャツが乾くまで』“あずさ”夏帆は“都合の良い他者”だった? “名前のない関係”の可能性

『Tシャツが乾くまで』あずさの存在を分析

 バス転落事故で亡くなったあずさは、その後、夫の樹生の前にだけ現れる幽霊のような存在として登場していたのだが、最終話ではあずさが古本屋の店主・宮内幸次(リリー・フランキー)や、一度も面識のない咲子の前にも現れるようになる。

 おそらく、咲子の前に現れたあずさは、樹生から聞いた話を元に咲子がイメ―ジしたあずさなのだろう。それは樹生や宮内の前に現れたあずさもそうで、あくまで生きている人間の願望が実体化した存在だと感じた。その意味で、嫌なことを絶対に言わない「都合の良い他者」なのだが、おそらくこういう存在が私たちには必要なのだろう。そして、それは必ずしも生きている人間である必要はない。
 
 テレビドラマにおける幽霊の描き方には変遷があるのだが、いわゆるホラー映画に登場する怨念が実体化した存在とは違う、生きている人間を優しく見守る存在として描かれることが近年は多い。

 たとえば脚本家の坂元裕二は、2018年のドラマ『anone』(日本テレビ系)や、2025年の映画『片思い世界』で生きている人間を優しく見守る存在として幽霊を描いている。

 もっとも、あずさの場合は「見守る」を通り越して、直接話しかけてくるため、より一歩進んだ存在だとも言え、人々の生活に欠かせない存在となりつつある生成AIのような存在にも見える。

 家族や恋人とは異なる「名前のない関係」にたどり着いた『Tシャツが乾くまで』だが、それは人間と人間以外の存在との関係にも言えることではないかと、あずさの描き方を見て強く感じた。

■配信情報
金曜ドラマ『Tシャツが乾くまで』
U-NEXT、Netflix、TVerにて配信中
出演:蒼井優、中島歩、高橋文哉、齋藤飛鳥、庄司浩平、飛永翼、久保田薫、夏帆、臼田あさ美、リリー・フランキー、松山ケンイチ
脚本:生方美久
演出:土井裕泰、塚本連平、小牧桜
音楽:haruka nakamura
主題歌:スピッツ「見知らぬ糸」(Polydor Records)
プロデューサー:千葉行利、宮川晶
製作:ケイファクトリー、TBS
©TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/tshirt_ga_kawakumade_tbs
公式X(旧Twitter):@tshirts_tbs

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