咲子の“バツ4”発覚でイメージが一変 『Tシャツが乾くまで』が突きつける“フィルター”の恐怖

『Tシャツが乾くまで』“フィルター”の恐怖

 怖い、怖すぎる。『Tシャツが乾くまで』(TBS系)第9話、これまで咲子(蒼井優)に抱いていたイメージが180度変わってしまった。これが、“フィルター”ってやつなのか。

 わたしはこれまで、咲子をどこか潔癖な人物だと思っていた。一途で純粋で、結婚したからには一生添い遂げないと……という価値観を持っているような。だから、“人間関係リセット症候群”を理由に失踪してしまう充(松山ケンイチ)のことも、なんとか受け入れようとしてきたのだと。

 しかし、第9話で咲子がバツ4であることが明らかになってから、すべてがひっくり返った。このコラムを書くにあたり、第1話からドラマを観返してみたのだが、同じ言動のはずなのに、彼女のバックボーンに“4度の離婚”があると知っただけで、意味がガラリと変わってしまう。

 たとえば、充の失踪癖をわりとあっさり(※これは、捉え方によるかもしれないが)受け入れようとしていたのも、1度目は「健気だなぁ……」とうるうるしていたのに、2度目は「いや、咲子も咲子でファンキーだから理解できるのかも」と思ってしまった。

 咲子は何も変わっていないはずなのに、こちらのフィルターが加わっただけで、こんなにも違う人物に見えてしまうのか。

 千鶴(臼田あさ美)との関係もそうだ。とくに、恋愛に関して潔癖そうに見える咲子と、あっけらかんと不倫をするタイプの千鶴が、なぜこんなにも仲が良いのか、正直なところ、ずっと謎だった。わたしが千鶴なら、咲子みたいなタイプ(まあ、これもフィルターなわけだけど)には、不倫の話なんてしない。でも、千鶴は咲子に何でもかんでも打ち明けていた。

 その理由は、わたしたちが知らなかった咲子の一面を千鶴は知っていたからだろう。4度の離婚を繰り返し、「飽き性で、新しいもの好きで、切り替えが早い」咲子を。もちろん、離婚と不倫を同列に語るつもりはない。しかし、恋愛や結婚はこうあるべきという“普通”からはみ出しているという意味で、千鶴は咲子に似たものを感じていたのかもしれない。

 咲子を見るフィルターが変わったのは、わたしたちだけではない。充も、咲子がバツ4であることを知ってから、明らかに彼女への接し方が変わった。充は、咲子と出会ってから、2度も失踪をしているはずなのに、今はその気配すらない。むしろ今度は、咲子が自分から離れていってしまうことを恐れているようにさえ見える。

 次第にわたしの目にも、充は“いつかいなくなってしまうかもしれない人”ではなく、“置いていかれるかもしれない人”として映るようになった。咲子の過去をひとつ明かしただけで、2人の関係性まで反転して見せるとは。脚本家・生方美久、あっぱれである。

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