咲子の“バツ4”発覚でイメージが一変 『Tシャツが乾くまで』が突きつける“フィルター”の恐怖

また、本作に対するイメージもどんどん変わっていく。第1話ラスト、樹生(中島歩)が「でも、(あなたの旦那さんは)僕の妻と不倫してますよね」と咲子に言い放ったときは、てっきりドロドロの不倫劇が始まるものだと思っていた。しかし、充の話を聞くかぎり、彼とあずさ(夏帆)は不倫関係にあったわけではない。ただ、何を言ってもよくて、嫌われてもいい関係が心地よかっただけ。月に1度、コインランドリーでの会話を楽しんでいただけ。
心の不倫があったのかは誰にも証明することはできないが、もしもあずさが充に好意を抱いていたとしたら、「さっちゃん、瀬尾さんのこと嫌いになるかも。不幸になるかも。いいんですか? 自分がさっちゃんの立場だったら、しんどすぎます。好きな旦那さんが、突然消えるって」と、咲子の気持ちをここまで案じるだろうか。あずさからは、いわゆる“恋敵”のような匂いを感じない。
こうして、不倫ものというフィルターが外れたかと思えば、今度は咲子が突然の失踪。宮内(リリー・フランキー)が、「わたしたちの知らない瀬尾咲子さんが、どこかにいるのかもしれませんね」なんて言い出すものだから、こちらの脳みそは一気にミステリーモードに。しかし、咲子がバツ4であることが明かされた瞬間、今度はコメディに早変わり。衝撃の事実を前にした充の、あのなんとも言えない顔。松山ケンイチのコメディテイストなリアクションも含めて、まるで別のドラマに切り替わったかのようだった。
けれど、咲子と充が背負っているものが変わったわけではない。新しい事実を知るたびに、勝手にフィルターをかけて、理解したつもりになっていたのは、わたしたちのほうなのだ。
現実でも、このようなことは起こりうる。誰かの一面を見ただけで、勝手に「こういう人なんだ」と決めつけたり、新たな一面を知った瞬間に、過去の言動まで「そういうことだったのか」と意味づけしてしまったり。結局、わたしたちは目の前にいる人を、そのまま見ているようで見ていないのかもしれない。
人を理解するって、そんなに簡単なことじゃない。第9話までを観終えて、いちばん怖くなったのは、フィルターひとつで、同じ人がまるで別人のように見えてしまうことだった。
■放送情報
金曜ドラマ『Tシャツが乾くまで』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
U-NEXTにて、各話放送直後より配信
Netflixにて配信中
出演:蒼井優、中島歩、高橋文哉、夏帆、松山ケンイチ、リリー・フランキー、臼田あさ美、齋藤飛鳥、庄司浩平、久保田薫、飛永翼ほか
脚本:生方美久
演出:土井裕泰、塚本連平、小牧桜
音楽:haruka nakamura
主題歌:スピッツ「見知らぬ糸」(Polydor Records)
プロデューサー:千葉行利、宮川晶
製作:ケイファクトリー、TBS
©TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/tshirt_ga_kawakumade_tbs
公式X(旧Twitter):@tshirts_tbs























