『魔法少女まどか☆マギカ』の願いを読み直す 少女たちは“選べる”からこそ“選ばされている”

『まどマギ』キュゥべえの“契約条件”を再考

まどかは「与えられた条件」そのものを選び直す

 では、この構造に対して主人公であるまどかは何を選ぶのか。第11話から第12話にかけて、まどかは魔法少女たちが魔女になる仕組みを知る。そして、自分が叶えたい願いを決める。ここでまどかが選ぶのは、与えられた選択肢の中から自分にとって最も望ましいものを一つ選ぶことではない。「すべての魔法少女が魔女になる」という仕組みそのものを変えることだった。

 過去と未来の魔法少女が魔女になる前に救われる世界を願い、魔法少女と魔女を生み出してきた法則そのものに介入する。それまでの少女たちは、与えられた契約の条件の中で願いを選んできた。まどかはその条件自体を変えようとする。ここで「願い」の意味も変わる。最初の少女たちにとって願いとは、自分が何を望むのかを決めることだったが、まどかにとっては、自分たちを取り巻く世界をどうしたいのかを決めることにあった。まどかの選択は、「選ばされている」状況に対する一つの応答でもある。与えられた選択肢の中から答えを選ぶのではなく、その選択肢を生み出している条件そのものを変える。『まどマギ』の「願い」は、ここで初めて「何を手に入れたいのか」という問いを超えたのである。

21歳になった今、「選ぶ」という言葉を考える

 『まどマギ』を初めて観たのは15歳の頃だった。当時も、少女たちが自らの意思で願いを選び、その選択によって運命を変えていく物語として受け止めていた。ただ、「自分で選ぶ」という行為そのものについて、現在ほど意識的に考えていたわけではない。

 21歳になった今、進路や仕事、人間関係、将来について自分で判断する機会が増えた。選択肢が示されていれば、自分の意思で自由に選んでいるように感じる。しかし、そこにどのような選択肢が用意されているのか、それを判断するためにどのような情報を持っているのか、どのような条件のもとで決断するのかまで、自分自身で決めているわけではない。もちろん、現実の人生とキュゥべえとの契約を同じものとして捉えることはできない。現実には、願いを叶える代わりに魔法少女になるよう求められるわけでもない。それでも、『まどマギ』の契約を考えることで、「自分で選んだ」という事実と、その選択がどのような条件のもとで行われたのかという問題は切り分けて考えられる。自分で選択した結果であることと、その選択を取り巻く条件まで自分で決めたことは決して同じではない。

 「願い」とは、何かを手に入れるための言葉ではない。自分が何を望むのかを知り、そのために何を選ぶのかを考え、その選択の先にあるものまで引き受けるための言葉でもある。『廻天』を前にして改めて考えたいのは、「少女たちは何を願い、魔法少女になったのか」だけではなく、その願いをどんな条件のもとで選んだのか。そして、その選択の先で何を選び続けるのか。『まどマギ』の少女たちを見つめ直すことは、「自分で選ぶ」という言葉そのものを見つめ直すことでもある。

■公開情報
『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』
全国公開中
キャスト:悠木碧、斎藤千和、喜多村英梨、野中藍、水橋かおり、阿澄佳奈、若山詩音、黒沢ともよ、加藤英美里
原作:Magica Quartet
総監督:新房昭之
脚本:虚淵玄(ニトロプラス)
キャラクター原案:蒼樹うめ
監督:宮本幸裕
キャラクターデザイン/総作画監督:谷口淳一郎
総作画監督:山村洋貴
異空間設計:劇団イヌカレー(泥犬)
絵コンテ/ビジュアル・コンセプトデザイン:古川知宏
ビジュアル・コンセプトデザイン:川田和樹
色彩設計:日比野仁
美術:内藤健/草森秀一
美術設定:大原盛仁
撮影監督:会津孝幸
編集:松原理恵
音楽:梶浦由記
音響監督:鶴岡陽太
アニメーション制作:シャフト
配給:ANIMEC
主題歌:FictionJunction「彼方」
©Magica Quartet/Aniplex,Madoka Project
公式サイト:https://www.madoka-magica.com/wr/
公式X(旧Twitter):https://x.com/madoka_magica

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