『風、薫る』甲斐翔真が最後まで貫いた“明るさ” “ボタン”がつないだ直美の未来

りん(見上愛)とシマケン(佐野晶哉)がお別れしたかと思ったら、直美(上坂樹里)と吾郎(甲斐翔真)もお別れ。ふたりの主人公に次々と試練が……。とりわけ、直美と吾郎の別れは、子どもも生まれたにもかかわらず、吾郎はその子を見ることもなかったことがあまりに悲しかった。だがNHK連続テレビ小説『風、薫る』第22週のサブタイトルは「明るい未来」(演出:橋本万葉、門脇陸、髙橋実香)。
直美と吾郎の子どもの名前は「明(あきら)」とつけられた。第108回、出征する前の吾郎が「明るいことはいいことだろ? 明るいときっと楽しくなる」と言う。

明るいボタンつけ、明るい軍曹さん、明るい看護婦、明るい赤ちゃん、明るいお漏らし、明るい夜泣き、明るい父親、明るい母親、明るい家、明るい未来。明と3人でどんな時も明るく暮らしていきたい。
直美と吾郎はこんなふうに何にでも「明るい」をつける言葉遊びをして、笑顔になる。これが、吾郎が亡くなったことを直美が知る第110回にも効いてくる。戦争が終わって、子どもも無事生まれ、出征した吾郎が帰ってくると思っていたら、広島で病死したと報告される。戦場で負傷し亡くなったのだが、原因は脚気。崖から落下したのも脚気が原因ということかもしれない。
戦争が終わって、自ら戦ったわけでもないのに、亡くなってしまった。直美は呆然とする。やりきれない。広島で彼を看取った多江(生田絵梨花)が訪ねてきて、吾郎の最期を伝える。ここでようやく、なぜ吾郎の軍服のボタンがつけてもつけてもとれてしまうのか、その秘密が明かされる。不器用な直美が一生懸命ボタンをつける姿が愛おしくて、ボタンをわざわざ引きちぎっていたのだ。
甲斐翔真はこのエピソードをこのように語っている。
「僕の好きなのは、軍服のボタンをわざと取るところです。直美さんがボタン付けをしている姿が愛おしくて、それが見たいがために何度もボタンを取る。最後まで取ったボタンを持っていて、それを直美に渡してほしいと多江さんに託す。吾郎の死後、直美のもとに遺品として戻ってきた軍服にボタンをつけるという、とても素敵な台本を書いていただけて嬉しかったです」(※)

多江が吾郎から託されたボタンを、直美は軍服に縫い付ける。そこに吾郎の幻が現れ、またボタンをとって、いたずらっ子のように笑う。思わず笑ってしまう直美。吾郎は「明るいことはいいことだろ? 明るいときっと楽しくなる」を亡くなってもなお、この思いを貫いたのだ。
吾郎がどんなときでも明るい気持ちでいようとするのは、少女漫画の金字塔『キャンディ・キャンディ』(講談社)の全編を貫くテーマにもなっていると考えられる名ぜりふ「おチビちゃん、きみは泣いた顔より、笑った顔のほうがかわいいよ」のようなことであろう。みなしごで不運なキャンディを運命の人がこう言って励まし、彼女に生きる力を与えたのだ。


















