『8番出口』の映画化はなぜ成功したのか 現代の閉塞感と“異変”に向き合う二宮和也の変化

『8番出口』の映画化はなぜ成功したのか

少年との出会いによって変化していく「迷う男」

 原作ゲームがプレイヤーの一人称視点で進むスタイルだったため、映画化にあたって注目を集めたのは「どんな主人公になるか」だった。二宮和也演じる「迷う男」は、映画の主人公として不気味な地下通路に迷い込んでいく。

 「迷う男」は、ただ地下通路で迷っているのではない。人生に迷っているのだ。無機質な地下通路は、変わり映えのしない彼の日常を表してもいるのだろう。しかしそこに、元恋人(小松菜奈)の妊娠という「異変」が入り込んでくる。人生の大きな「異変」に直面した彼は、8番出口を目指す過程で、普段なら気にも留めていなかった小さな「異変」に向き合うことを余儀なくされるのだ。

 二宮和也はこの「迷う男」の変化をグラデーションをつけて演じている。物語開始直後、彼が喘息持ちであることが示され、プレッシャーに弱く、精神的にも安定しているとは言い難い人物であることが示唆される。しかし無限ループのルールを理解し出口を目指すうちに、彼は少しずつ自信をつけていく。ところがその自信が砕かれたとき、彼の前に謎の「少年」(浅沼成)が現れる。ここで重要なのは、少年の登場を機に主人公が突然覚醒するわけではないということだ。守るべき弱い存在が現れたからといって、人間は急に強くなることはできない。「迷う男」は少年に対してどのように振る舞うべきか迷いながら、一緒に地下通路脱出を目指すことになる。その過程で彼はまた少しずつ変化し、“その他大勢の1人”だった「迷う男」が、“意思を持った主人公”として、少しずつその輪郭をはっきりとさせていく。こうしたグラデーションをつけた演技で、二宮は俳優としての実力を見せつけてくれる。

 また本作には、地下通路の無限ループの中の重要な存在として「歩く男」(河内大和)が登場する。彼は当初、単純に無限ループの仕掛けのうちの1つで、時折「異変」にもなる存在と思われていた。原作ゲームのプレイヤー間では、ただ「おじさん」と呼ばれる謎の存在だったが、映画ではそのバックストーリーが描かれたことも話題を呼んだ。彼もまた、かつて無限ループに迷い込み、少年と一緒に8番出口を目指していたのだ。しかし「迷う男」と「歩く男」の違いは、「少年」の行動の「異変」にどう対処したかだった。「歩く男」は「少年」の「異変」を見て見ぬふりしたが、「迷う男」はそれに気づいて対応した。ここでも“見て見ぬふり”が大きな罪として描かれている。ちなみに「歩く男」を演じた河内大和は、その極限まで抑揚を抑えた演技から、カンヌ国際映画祭などで「CGなのか?」と評判を呼んだ。

 地下通路というありふれた空間を恐怖の舞台に変えたゲーム『8番出口』は、より切実なメッセージを持って映画化された。95分という短い時間に、現代社会への静かな眼差しと小さくも確かな希望が詰め込まれている。

参考
※ https://exit8-movie.toho.co.jp/

■放送情報
『8番出口』
日本テレビ系にて、8月28日(金)21:00〜22:54放送
※本編ノーカット
出演:二宮和也、河内大和、浅沼成、花瀬琴音、小松菜奈
監督:川村元気
原作:KOTAKE CREATE『8番出口』
脚本:平瀬謙太朗、川村元気
脚本協力:二宮和也
音楽:Yasutaka Nakata(CAPSULE)、網守将平
©2025 映画「8番出口」製作委員会

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