『踊る大捜査線 THE MOVIE 2』は令和の社会不安を先取りしていた 排除された人々の匿名性

犯人は捜査本部に電話し、警察を挑発する。だが、電話をかけてくる犯人は次々と変化し、それぞれ言っていることがバラバラで、他の犯人が起こした事件のことも知らなかった。
やがて犯人の正体は会社をリストラされた者たちだと判明し、殺された人々はリストラされた犯人が勤めていた会社の役員だったことが判明する。
警察はリストラされた社員たちのリストの中から犯人を特定しようとするが、1年以内に退職した社員は2000人以上いて、簡単には特定できない。
犯人グループにはリーダーが存在せず、目的だけを共有してバラバラに動いていた。
また、お台場は常にどこかでビルや道路の建設がおこなわれている未完成の街で、地図がどんどん変わっていく。そのため、捜査は後手後手に回ってしまう。

『踊る』シリーズでは、刑事たちが本庁を本店、所轄を支店と呼んでおり、警察組織を会社のように描いたことが新しかった。
そのため、警察組織を通して日本の企業文化を描いた作品だとも言えるのだが、シリーズを通して観ると、日本社会における会社組織の変遷がよく理解できる。
老刑事の和久平八郎(いかりや長介)は、リストラされた犯人グループと沖田管理官が同じバブル世代の子どもで今頃になって親のツケを払わされていると指摘する。あの時代に梯子を外されて路頭に迷ったバブル世代は多く、その結果、社会の格差が広がったのかと、今観ると改めて思う。
警察組織の理不尽さを描いてきた『踊る』だが、同時に青島たちは組織に守られてきた。だが『踊る2』の時代になると、会社組織という名の日本社会から排除された人々が、社会に牙を剥き始めるようになっていた。
『踊る』シリーズは、青島たち刑事の側から物語を描くため、犯人の内面には深入りしない。そのため、当初から犯人の匿名性が高かったのだが、今作のリーダーが存在しない犯人グループは、むしろこの匿名性の高さにおいて時代を象徴する存在になったと言える。
そんな匿名性の高い犯人グループの身柄を、青島たち刑事がどうやって確保するのかが『踊る2』の見どころだが、令和の現在の視点で観ると、会社組織から疎外された『踊る2』の犯人たちのような人間が世の中に溢れていて、日本社会は確実にこちらの方向に進んでいると感じる。
もちろん犯罪に手を染める者はごく少数だが、近年は闇バイトのような事件もあるため、いつ自分が『踊る2』の犯人の側になってもおかしくないという不安を抱えて生きている人は少なくないのではないかと思う。
逆に、かつて日本の会社組織の比喩として描かれていた警察官僚と湾岸署の関係は、今となっては懐かしさすら感じる。
23年前の映画なので、警察組織の描き方には時代を感じるが、犯人側の描写には、現在と地続きの不安が描かれていたと言えよう。
■放送情報
『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』
フジテレビ系『土曜プレミアム』にて、8月22日(土)21:00〜23:55放送
出演:織田裕二、柳葉敏郎、深津絵里、水野美紀、ユースケ・サンタマリア、いかりや長介ほか
監督:本広克行
脚本:君塚良一
プロデューサー:亀山千広
製作:フジテレビジョン、アイ・エヌ・ピー
©2003フジテレビジョン アイ・エヌ・ピー





















