恐竜オタクが観た『ジュラシック・ワールド/復活の大地』 ヴィラン恐竜へ抱いた違和感

『ジュラシック・ワールド』恐竜オタが解説

 また、本来ならティラノサウルスのように大きな頭の重さと尻尾でバランスを取る設計だったと思うのだが、頭の座りが悪く、なぜか頭蓋骨が小さい。頭よりも尻尾と前脚の方が重そうなバランスになっているため、下半身が下に沈んでいるのも実験事故的なビジュアルになっている要因だろう。D-Rexはおそらく、普段から慢性的な腰痛に悩まされているのではないだろうか。

 頭部にはパキケファロサウルスのものとも違うような、イルカ由来なのか、爬虫類の系譜には本来存在しないはずの柔らかそうな大きなコブが付いている。クライマックスでD-Rexは花火を持って囮になり森へ入ったダンカン(マハーシャラ・アリ)を捕まえることに失敗しているが、それはおそらくコブのせいで前方の視界が狭まっているせいだったのだろう。

 こうして見てみると、D-Rexは恐竜オタクが喜ぶような「最強な恐竜としての正当な進化」をしていないことがよく分かる。おそらく、複数の生物の良いところを無理矢理足し算した結果、あらゆるパーツが本来の機能を発揮できず、運動性能を落としている可能性が高い。人間の欲望任せで強い恐竜を作ろうと頑張って改造したにもかかわらず、生物学的に弱い恐竜が誕生してしまう感じが、D-Rexの存在の面白さであり、哀しいところでもある。

シリーズ初の“恐竜を歪ませた”作品に

 そもそも、恐竜の見せ方や在り方は監督によって異なり、初期の『ジュラシック・パーク』3部作では実在したとされる太古の生物の蘇りと人々の混乱がメインテーマだったのに対して、『ジュラシック・ワールド』3部作では人間による遺伝子操作の産物とエンタメ施設の商品としての恐竜が描かれていた。

 シリーズの中で人間の傲慢さと人為的生物の度合いがアップデートされて、より社会派な作風になっていく中で、『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』では巨大イナゴが出てくる新たなパニックを目の当たりにしたのも記憶に新しい。あのイナゴ騒動によって、恐竜映画に恐竜以外の生物を描き過ぎるアプローチは映画を混沌とした印象にする、ということが決定付けられたと感じる。

 だから、『ジュラシック・ワールド/復活の大地』ではシリーズの伝統的な作法は踏襲した上で、恐竜復活から32年後の恐竜のリアルに焦点が向けられた。しかし、それと同時に「もう恐竜だけでは飽きられるのではないか」という製作陣の危機感もうかがえる。だから、前半で原初的な恐竜がいる風景を描き、後半では恐竜という素材そのものを歪ませて怖がらせにきたのではないだろうか。

 『ジュラシック』シリーズはこれまで、社会問題や環境問題、生命倫理などの縮図を描いてきた。それも素晴らしいメインテーマだとは思うのだが、観客は基本的に『ジュラシック・ワールド』に出てきたエンタメ消費者側と同じ習性を持っていることがほとんどだ。だからこそ、恐竜オタクを代表して言いたい。「私たちは、カッコいい恐竜を見たい」。

■放送情報
『ジュラシック・ワールド/復活の大地』
日本テレビ系にて、7月31日(金)21:00〜23:34放送
※放送枠40分拡大
出演:スカーレット・ヨハンソン(松本若菜)、マハーシャラ・アリ(楠大典)、ジョナサン・ベイリー(岩田剛典)、ルパート・フレンド(小野大輔)、マヌエル・ガルシア=ルルフォ(三上哲)、エド・スクライン(玉木雅士)
監督:ギャレス・エドワーズ
脚本:デヴィッド・コープ
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、デニス・L・スチュワート
製作:フランク・マーシャル、パトリック・クローリー
キャラクター原案:マイケル・クライトン
©2025 Universal Studios and Amblin Entertainment, Inc. All Rights Reserved.

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる