『キングダム』万極がシリーズ屈指の敵となった理由 山田裕貴が体現した怨念と復讐心

公開されるやいなや、日本中のエンターテインメントファンの心を燃やしている映画『キングダム』シリーズ最新作。主人公・信(山﨑賢人)をはじめとしたお馴染みのキャラクターたちが2年ぶりにスクリーンにカムバックし、暴れ回り、灼熱の日本をさらにアツくさせている。俳優たちの技と個性がぶつかる共演は、ときに“競演”のようで、またあるときには“狂宴”のようでもある。
そんな『キングダム 魂の決戦』に登場する者たちの中で、とりわけ強烈な印象を残す者は誰か──。多くの観客が、この人物の名を挙げることだろう。そう、万極だ。演じているのは山田裕貴である。

本作は、秦国で生まれ育ち、戦災孤児となった主人公・信(山﨑賢人)が、“天下の大将軍”を目指して奮闘する物語を、豪快な筆致で紡いでいくもの。シリーズ第5弾となる今作では、秦以外のすべての国が手を組んだ“合従軍”と秦国との衝突が描かれる。タイトルが示すとおり、魂を揺るがす決戦だ。
山田が演じる万極は趙国の将軍で、かつて秦国が起こした大虐殺を生き抜いた存在。彼は特定の人物に対してではなく、秦国に生きる者たちすべてに対して、底知れぬ恨みを抱いている。初登場したのはシリーズ第3弾『キングダム 運命の炎』(2023年)でのこと。続く『キングダム 大将軍の帰還』(2024年)では大きな動きを見せることはなかったが、ここで満を持して最重要キャラクターのポジションに躍り出てきた。
これはもちろん、演じる山田が『キングダム』の世界の最前線に立つことをも意味している。スクリーンに映し出される彼のパフォーマンスを目にして、誰もが圧倒されたことだろう。若手からベテランまで、本作に集いしあらゆる世代の演技者たちの中、“MVP級”の存在感を示しているのが、俳優・山田裕貴なのである。
クセモノ揃いの“合従軍”にあっても、万極はもっとも異質なキャラクターだ。彼という人間を衝き動かすその原動力は、怨念と復讐心。誰もが戦果をあげて出世を望む戦場で、彼は秦国の民の殲滅だけを考えている。ほかの誰よりも悲しき武将なのだ。
演じる山田の声には強者らしき太さと重さはあるが、色はない。抑揚も欠けていて、単調だ。だから万極にはまるで生気が感じられない。まさに、戦場を彷徨う生ける屍である。
そのバックグラウンドからして、狂気的なキャラクターにも仕立てられそうなものだが、山田はそれをしていない。彼は何かを付け足すのではなく、むしろ徹底的に削ぎ落としているように思える。名だたる俳優陣が数々の力演によってアクの強いキャラクターたちを立ち上げているのに対して、山田は対照的だ。万極は基本的に静的な存在で、いつも冷たく乾いている。長い白髪からのぞく瞳も、つねに凍てついているようだ。
作品ごとに多彩な表情を見せてきた山田だが、多くのエンタメファンが彼のことを、“アツい人”だと捉えているのではないだろうか。






















