安田顕の“演技への熱量”がほとばしる 林遣都との2人芝居『死の笛』の濃密な2時間

安田顕の熱量がほとばしる舞台『死の笛』

 身の毛もよだつ体験をした。目で、耳で、心で、ゾクッとしたこの濃密な2時間を忘れることはないだろう。

 安田顕が企画・プロデュースを手がける舞台『死の笛』が再演を果たした。2024年7月の初演から2年ぶり。安田顕と林遣都による2人芝居で、脚本の坂元裕二、演出の水田伸生というチームは変わらず。東京・IMM THEATERで行われる7月3日の初日を前に、7月2日にゲネプロ公演が開かれた。

 舞台は、戦時下の兵舎。娘の仇を討つために軍隊へ入ったカノオ(安田顕)、想い人に恋焦がれ仕事が捗らないウスダ(林遣都)という敵対する国同士のコックが厨房を分け合いながら生活を送っていくことで、友情を育み、時に兵刃を交え、様々な思いを巡らせていく。

 坂元裕二が脚本を務めた2022年放送のドラマ『初恋の悪魔』(日本テレビ系)での共演をきっかけに、安田が林の芝居に惚れ込み、制作が実現した『死の笛』。舞台の真ん中にあるのは、安田と林による芝居、そして迸る熱量と愛だ。全編はシリアスとコメディを行き来する4幕で構成されている。這いつくばってでも生きようとする、生々しいまるで“怨念”のような、または情念の炎に目を見張る一方で、男として素直に生きる、リビドーに純粋な姿には思わずクスッとしてしまう。遊び心溢れる2人のやり取りに、ゲネプロ公演でも笑いが起こっていたほどだ。そこが今後、舞台を重ねるごとにアドリブが期待できる余白部分になっていく予感がした。

 再演に伴い、坂元による細部にわたる改稿が施されている。ウスダの想い人の名前などがその一つかと思われる。本作の最大の特徴は、カノオとウスダの使う言語だ。「聞こえる、した」「仕事する、しろ」といったように、特殊な話し口調が用いられているのだ。筆者は今回が初めての観劇だったのだが、最初は慣れないセリフの調子に振り落とされそうになりながらも、徐々に言葉が馴染んでいく不思議な感覚を覚えた。同時に、この口調でセリフを覚えている安田と林に感服するばかりである。

 物語のキーアイテムである、死の笛。これを吹くことにより、ある恐ろしいことが起こる。遠くを見つめるカノオの表情はやがて恐怖へと歪んでいく。その演出を含め、視覚的な恐怖はピークへと達する。予想していなかった展開に身動きすらできなかったほどだ。また、笛の音も恐怖を増幅させている。まるで悲鳴のような、断末魔のような。不気味な音色が会場を出た後も脳裏にこだましていた。

 そして、“戦争”をテーマにした壮絶で切実な物語にも胸をえぐられる。安田は公式リリースの中で「現実が、再演の意味を与えてくれました。」とコメントしているが、否が応でも今もなお世界で起きている戦争と、かつての、今の日本に2人を重ねてしまう。「昨日の敵は今日の友」というが、その逆も然り。「苦しみが生きがいだ」と諦めに似た表情で話すカノオ=安田顕の芝居が忘れられない。演劇が観たくなる演劇だった。

■公演情報
舞台『死の笛』
出演:安田顕、林遣都
企画・プロデュース:安田顕
脚本:坂元裕二
演出:水田伸生

【東京公演】
日程:7月3日(金)~7月12日(日)
会場:IMM THEATER

【札幌公演】
日程:7月17日(金)~7月19日(日)
会場:札幌サンプラザ コンサートホール

【大阪公演】
日程:7月24日(金)~8月2日(日)
会場:COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール

チケット料金:全席指定11,000円(税込)

公演特設ページ:https://www.teamnacs.com/stage.php?ex=2026_03

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