『サバ缶、宇宙へ行く』最終話の最もドラマティックな瞬間 それぞれが誇るべきゴールへ

6月22日の放送で『サバ缶、宇宙へ行く』(フジテレビ系)は最終話を迎えた。宇宙へサバ缶を飛ばすことを願い、試行錯誤を重ねながら、次の代へ次の代へとバトンを託してきた若狭水産高校、あらため若狭小浜高校海洋科学科の生徒たち。ついに前回、“宇宙サバ缶”が宇宙日本食として認証され、あとはそれが実際に宇宙に向けて飛び立つこと、そして国際宇宙ステーションにいる宇宙飛行士が食すことを残すのみとなった。

これまでの15年の道のりをダイジェストのように映しながら、夢が結実する瞬間を見届けることに徹した今回のエピソード。あらためて考えてみれば、そもそもが実話であり、かつタイトルにもズバリ書かれているように、これといってネタバレらしいネタバレもなく、ひとつのわかりきった結果に向かっていく“過程”を断片的かつ淡々と見守ることこそが本作のありかた。その点では、考察のようなクリフハンガーを求める傾向が強い昨今の連続ドラマのトレンドのなかで、3カ月も視聴者の興味を持続させるのはなかなか困難であっただろう。

菅原(出口夏希)や寺尾(黒崎煌代)のように“地元”を背負って自分自身の将来との狭間に悩む1期生、微笑ましい三角関係の2期生、男子同士の友情の3期生、夢を“継承”していくことを体現する4期生、夢を受け取った者としての責任に真摯に向き合う5期生。それぞれの代で描かれるシンプルながらも一本の筋が通った青春群像も魅力的ではあったが、何よりも元々の実話があまりにもドラマティックであること。そして、そこに胡座をかくことなく、きちんと“過程”に敬意が向けられていた点は見逃せない。

例えば今回のエピソードで、5期生たちは宇宙サバ缶が積まれた補給船の発射を見届けに種子島まで出向くが、発射自体が延期となってしまうシーンが描かれた。ドラマとしては必要性のないようにみえる“空振り”だったわけだが、これは実際の出来事の再現。朝野(北村匠海)のセリフで多少の意味付けがされるとはいえ、過剰にドラマティックに演出するわけでもなく、生徒たちが歩んできた長い道のりのなかで起きた事象のひとつとして淡々とした流れのなかに必要なものとして組み込まれているのだ。

これはドラマ中盤のターニングポイントとしての役割を果たした学校の廃校問題も然り、2期生の時に一度サバ缶から横道に逸れて“宇宙キャラメル”作りが行われたのも然り。重きを置くべきところは、ドラマティックな結果なのではなく、多少地味であっても生徒たちが自主的かつ主体性をもって夢を繋いできたということ。まさしく藤倉(池端杏慈)が菅原からの受け売りで口にした「夢はな、持ったときからもう変わり始めとるんよ。自分が」という言葉通りのものである。それゆえ、歴代の生徒たち全員が一堂に会する実習室でのシーンこそ、このドラマにとっての最もドラマティックな瞬間なのである。

全員が同じ夢を繋ぐと同時に、そこにはいくつものゴールと呼べる瞬間があった。真正面から挑んだものの時間や技術の壁にぶつかり、それでも胸を張って迎えた卒業。後半で何度かあったサバ缶の完成も、認証を得ることも、宇宙に飛んで行った後に食べてもらうことも、「美味しい」と言ってもらえることも、すべてが誇るべきゴールの瞬間であり、ひとつの夢でもゴールは決してひとつではない。ラストで彼らは皆、それぞれに新たな夢を思い描く。彼らにはこの先も何度も何度もゴールの瞬間の喜びを味わうことになる。夢それ自体が、終わりなくどこまでも広がりつづける“宇宙”ということだ。
■配信情報
『サバ缶、宇宙へ行く』
TVer、FODにて配信中
出演:北村匠海、出口夏希、黒崎煌代、八嶋智人、三宅弘城、村川絵梨、佐戸井けん太、熊切あさ美、吉本実由、ソニン、迫田孝也、鈴木浩介、荒川良々、神木隆之介、井上芳雄(語り)ほか
原案:『さばの缶づめ、宇宙へいく』(小坂康之、林公代/イースト・プレス)
脚本:徳永友一
音楽:眞鍋昭大
主題歌:Vaundy「イデアが溢れて眠れない」(SDR/Sony Music Entertainment)
演出:鈴木雅之、西岡和宏、髙橋洋人
プロデュース:石井浩二
プロデューサー:野田悠介、中沢晋
制作協力:オフィスクレッシェンド
制作著作:フジテレビジョン
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/sabauchu
公式X(旧Twitter):https://x.com/sabauchu_fujitv
公式Instagram:https://www.instagram.com/sabauchu_fujitv/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@sabauchu_fujitv






















