古川琴音、30歳を前にして生まれた“心の余裕” 「外の世界ってこんなに面白いんだ」

余裕がなかった20代を経て変化した“軸”

ーー参考にされた作品はありますか? また、普段から運転はされるのでしょうか?
古川:一番最初に観直したのは映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』です。タクシーという閉ざされた空間の夜の空気感や、孤独と自由が同居した気分をインストールするのに良い刺激になりました。運転に関しては免許は持っていたのですが、見事なペーパードライバーだったので(笑)、出演が決まってからマネージャーさんに後部座席に乗ってもらい、「どうバックミラーを見るタイミングがいいんだろう」など、何度も練習を重ねました。
ーー限られた空間での会話劇は、1話15分とは思えないほどの濃密さでした。
古川:移動ができないという物理的な制限があるからこそ、「言葉のやり取り」の濃度が限界まで高まるんです。お互いのセリフの響きを1音も聞き逃さないよう、演者同士がものすごい緊張感と集中力を持ってぶつかり合っていて。まるで濃密なふたり芝居の舞台に立っているかのような、独特の興奮がありました。
ーー象子と同じく、古川さん自身も現在29歳で「30歳」という節目を控えていますね。
古川:ものすごく意識しています。20代の頃は周りの環境が目まぐるしく変化し、それに反応するだけで精一杯でした。どこかで自分の心に余裕がなくて、傷つかないように頑丈な殻で守っていたような気がします。でもここ最近、その殻が少しずつ解けてきて、外の世界ってこんなに面白いんだと素直に受け入れられるようになってきました。今は30代になる未来をすごく楽しみに、明るい気持ちで迎える準備ができています。

ーー役者としての決意も深まったのですね。ご自身の中で、作品選びの基準などはありますか?
古川:迷いがなくなり、「自分が何を表現できる役者になっていくか」を前向きに考えるようになりました。作品を決めるときは、「自分が演じるキャラクターを心から好きになれるか、憧れ続けられるか」を一番大切にしています。たとえ悪役やダメな人間でも、どこか一つでも愛おしいもろさや純粋さがあるか。その憧れの気持ちが、役をもっと深く知りたいというお芝居の一番の原動力になっています。
ーー『ミッドナイトタクシー』も古川さんの代表作になると感じます。本当に「夜に観る」ドラマとしてピッタリの作品です。
古川:この作品は、1話15分という短い時間の中に人間の愛おしさが詰まったドラマです。「1日の終わりに疲れた心でテレビをつけた人にとって、ささやかな癒やしや救いになれば」と願いを込めて撮りました。心にしこりが残ってしまったような夜に、象子が「私もそうだよ」とバックミラー越しにそっと背中をさすってくれるような温かい作品です。安心してこの物語に浸り、象子のカウントダウンを一緒に見届けていただけたらうれしいです。
■放送情報
夜ドラ『ミッドナイトタクシー』
NHK総合にて、毎週月曜から木曜22:45~23:00放送(全32話)
※NHK ONE(新NHKプラス)で同時・見逃し配信予定
出演:古川琴音、中村蒼、伊藤万理華、小林桃子、和久井映見、竹中直人ほか
作:兵藤るり
音楽:Kan Sano
演出:本田隆一、宝来忠昭、平林克理
プロデューサー:松本太一(WOWOW)、若林雄介(パイプライン)
制作統括:加茂義隆(WOWOW)、樋口俊一(NHK)
写真提供=NHK
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