“夏休み映画”復権にふさわしい『クレヨンしんちゃん 奇々怪々!オラの妖怪バケ~ション』

夏休み映画復権にふさわしい『映画クレしん』

 7月31日公開の映画『クレヨンしんちゃん』シリーズ第30作『クレヨンしんちゃん 奇々怪々!オラの妖怪バケ~ション』は、夏休みや花火、妖怪といったモチーフが夏らしさを感じさせて、見終わった後の気分をスッキリとさせてくれる。野原一家の絆という過去にいくつもの傑作を送り出してきたテーマとも相まって、映画『クレヨンしんちゃん』シリーズを夏の風物詩として決定づけそうだ。

 奇妙なチラシに書かれていた宣伝文句に誘われ、出かけた先で大変な事態に巻き込まれる。そんな映画がこの夏、すでに空前の大盛り上がりを見せているところに、同じシチュエーションが登場する『クレヨンしんちゃん 奇々怪々!オラの妖怪バケ~ション』が来た。ネタかぶりで見てもらえないかも、などという不安もどこ吹く風。初週から過去最高だった『クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記』(2024年)を上回る動員を見せてヒットしている。

 第1作の『クレヨンしんちゃん アクション仮面VSハイグレ魔王』(1993年)から、実に30年以上にわたって支持を集めてきた『クレヨンしんちゃん』映画だ。観ればきっと楽しくて、おかしくて、何より心を温かくしてくれる物語を見せてくれるに違いないと信じて、足を運んでもらえたのだろう。

 実際、『クレヨンしんちゃん 奇々怪々!オラの妖怪バケ~ション』を観た人は、「花火を見に行きたいなあ」「妖怪と友達になりたいなあ」「家族ってやっぱり素晴らしいなあ」といった想いに満たされるはずだ。カツカレーや魚の煮付けを食べたいと強く思わせる映画もそれはそれで悪くはないが、子供が主に観るアニメ映画なら、やはりワクワクさせてハラハラさせて最後にホッとさせてほしい。今回の映画にはそれが存分にあった。よく作ってくれたと拍手したくなる人も多そうだ。

 古来、日本にはさまざまな妖怪たちがいた。人間たちとも日々交流していた。ところが、人間たちが自然を破壊し危害も加えてくるようになって、妖怪の長は人間界との間に結界を張って行き来できないようにした。そして60年が過ぎたある日、突然結界が開いて、「妖怪の国」から妖怪たちが人間の世界に行き始めた。

 そんな妖怪の中にいたまめ太という豆狸の妖怪が、飼い犬に囲まれ困っていたところを、通りがかった野原しんのすけが、結果的に助けることになった。しんちゃんは直後に、秋田県にあるおじいちゃんの家に父親のひろし、母親のみさえ、妹のひまわり、犬のシロといっしょに帰省する。まめ太はしんのすけになんとかして恩返しをしたいと、寝ていた野原一家の部屋に「おばけーしょん村」への招待を呼びかけるチラシを張りまくった。

 「チョコビ食べ放題」で「スイカもタダ」という誘い文句にのらないしんのすけではない。野原一家はそろってチラシの案内に従い「おばけーしょん村」を目指す。このあたり、宮﨑駿監督の『千と千尋の神隠し』で異世界に迷い込む千尋が思い出されるが、誰もいない不気味な場所で、料理をむさぼり食って豚にされるようなことにはならない。到着した村で、野原一家はチラシのような歓待を受ける。

 招待したのがまめ太だけあって、食べ物はぜんぶ木の葉っぱだったが、人間をだまそうとするような悪気はなく、みなで楽しい時間を過ごすことになった。そこに事件。「妖怪の国」には人間を入れてはいけないという掟があって、警備隊に見つかったひろしとみさえは「おしりだま」を抜かれ妖怪にされてしまう。

 子の刻までに「おしりだま」を取り返さないと、2人とも永久に妖怪になってしんのすけやひまわりのことも忘れてしまう。それはイヤだとしんのすけは動き出す。みさえを人間に戻して、一緒にカスカベに帰るんだと言い、妖怪たちと「おしりだま」が集められる場を目指して冒険の旅に出る。

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